2026.06.06
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学校の水泳は,これからどうなるの?  ー 運動中のリスクマネジメント ー(15)

子どもにとって魅力的な授業には、「ワクワク」や「ドキドキ」が欠かせない。
一方で、学校教育では安全への配慮も必要になる。
先日、かつて勤務した小学校の校区にある温水プールで、その両立について考えさせられる場面に出会った。

静岡大学大学院教育学研究科特任教授 大村 高弘

温水プールで見た「渡り」の指導

まずはジャグジーに浸かり、目を閉じてリラックスしていると、
「あっ、大村先生ですよね!」
目を開けると対面に教え子の笑顔。思いがけない再会だった。

大プールでは、スイミングスクールが2コースを使って指導中。

「はあい、どうぞぉ」

コーチの声掛けで1・2年生の子らが壁を蹴ってスタート。次々とキックで進む子たちは5人。「バシャ、バシャ、バシャ」と、コーチの元気な声が響く。
一方、別の4人は壁の近くでクロールのプル練習。子どもの背後にコーチが近づき一緒に手を回す。自分のフォームを移し替える感じだ。
二つの集団へ交互にかかわる指導は、複式学級の授業で「渡り」と呼ばれる。職人芸を思わせる言葉だ。きっとこのコーチも、渡りの指導計画を立てているのだろう。

終わりの時間が近づくと、プール底に置かれた補助台取り除かれる。先生はそこにフラフープを持って立つ。

「はあい、どうぞぉ」

足から元気よく飛び込んでいく子どもたち。水深があるからこそできる体験だ。子どもたちはワクワクだろう。

自分は隣のコースでひと泳ぎ。戻ってきて子どもたちに目をやると……。なんとコーチが手に持つフラフープに、子どもたちは順に頭から突っ込んでいた。サーカスのライオンの輪くぐりのよう。プールサイドで待つ子らは、はらはら・ドキドキだろう。

逆飛び込みから考えるリスクの低減

指導終了後、片付けをするコーチに隣のコースから話しかけた。

「すごいですね、逆飛び込みって、今は学校でやらないですよね」
「そう。でも、思い切りやらせてあげたいんです。ここでは」

入水角度が急になりすぎたら、プールの底で頭を打つ可能性はある。

かつて逆飛び込みは体育の授業中でも指導された。しかし、飛び込みの際に水底へ頭部を打ち付ける事故が起きていることから、2008年告示の学習指導要領では「水中からのスタートを指導する」とされた。
このスクールでは、十分な水深の確保がされ、段階的な指導の積み重ねがある。指導者が個々の力量を熟知しており、リスクは大きく低減されている。
「逆飛び込みの復活を!」ではないし、スクールを勧めているのでもない。ただ体育の授業では、跳び箱も鉄棒も走り高跳びも、また持久走にもリスクはついて回る。

登山の世界では、リスクと利益は裏腹のものと捉える。
登らないという選択は、リスクの「回避」になる。登りながらもリスクの「低減」を求めるのだ。筋力トレーニングやバランス感覚の向上は滑落の頻度を低減する。ヘルメットは滑落の頻度を下げないが、怪我の損害は低減される。

授業の魅力と安全をどう両立するか

ジャグジーで会った教え子のあの頃の授業は、「ワクワク・はらはら・ドキドキを」の思いで突っ走っていた。
大きなけががなかったのは、子どもの自律性や判断力に恵まれたおかげだが、リスク低減と深い教材解釈の両者があれば、もっと魅力的な授業ができただろう。

大村 高弘(おおむら たかひろ)

静岡大学大学院教育学研究科特任教授


これまで公立小・附属小・地教委に勤務し、現在は教職大学院の実務家教員をしています。
学校を離れてみると、改めて探究したいことがふくらんできます。また学生・院生とかかわる中で、教職の魅力・やり甲斐を見つめ直せてもいます。
『教育つれづれ日誌』を読んでくださる皆さんと一緒に、子どもを中心に位置づけたよい実践はどうつくられるか、考えていきたいと思います。

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