2023.10.30
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学校の水泳は,これからどうなるの?(1)

秋が深まりを増す時期に,季節はずれなテーマですね。
でも、この夏の報道では、心痛む水難事故やプールをめぐる問題が幾度も取り上げられました。
「学校の水泳のあり方は,大きく変化していくのではないか?」と感じる今、水泳の教育的意義をじっくり考えてみたいと思います。

静岡大学教育学部特任教授・附属浜松小学校長 大村 高弘

学校のプールはどうなるの?

この夏,たびたび耳にしたのが,学校外のプールへ出かけて実施された水泳授業。
バスで学年集団を引率し,民間の経営するプールでインストラクターの支援を受ける授業です。

私の居住地域では,数年前からこの取組をする学校が見られるようになり、都市部では多くの自治体が検討しているとのこと。背景には,老朽化した学校プールの改修見送りがあるようです。
莫大な予算を要するプール改修は,自治体にとって大きな課題。建設された時期が重なっていると、同時期に数校が対象となる場合もあるでしょう。また,夏のプール使用がなくなれば水道・消毒薬等もいらず,予算削減につながるのは大きなメリット。

そんな中で7月,プールを建設する大手業者(実績は国内トップ)が「プール事業からの撤退を決定」との報道がありました。学校のプール新設の減少とレジャー施設での需要低迷などを予想しての経営判断かと思われます。

この状況は,学校や教師にとってどうなの?

自分は体育主任を11年経験しました。真夏,ポンプ室に入って塩素の投入をし,浄化槽の操作をしていると汗が噴き出します。期間中「水はにごっていないか?」「もしも藻が出ちゃったら……」などと心配。
そんなある日、オーバーフローのための注水を止め忘れ帰宅してしまいました。翌朝出勤し職員室に入ると正面に教頭先生が仁王立ち。「何をやっている!」と,厳しいお叱りが。
ちなみにこの年の冬は光熱水費削減のため職員室の灯油を節約。職員の皆さんに辛い思いを強いることに。ということで、プール管理に費やした時間・エネルギーは、今思うとかなりのものでした。
「学校のため」と貢献感は味わっていました。が,働き方改革の視点から見れば教師でなくともできる業務。管理がなくなれば子どもの指導や教材研究に力を注げるでしょう。

子どもにとってどうなの?

でも当時,自分の中に大きな負担や無意味さはありませんでした。6月のプール開きの予告をすると,子どもたちからワクワクが伝わってきます。「まだ水は冷たいかな?」「当日晴れてくれるだろうか?」などと自分のテンションも高まりました。
子どもにとって水泳の授業は特別な時間でしょう。水をかけ合い,潜り,石拾いをし,浮き……という体験が,どんなにスリルある楽しいものか。
陸上では味わえない浮遊感や,「泳げない」でいた状態から「泳げた」ときのうれしさ。大プールの縦25mを泳ぎ切った時の達成感。

学級活動のお楽しみ会、異年齢でのクラブ活動の時間など体育授業外でもプールは有効に活用されています。また放課後には水泳の部活動練習も。市の大会に参加し味わった感動が、生涯の思い出に残る子もいます。かつての夏休みのプール開放は、子どもたちに自由な水遊びが保証される魅力的な時間でした。
プールをもっていることで豊かな教育が提供できることは間違いない,でも……。

学校がほんとうに大切にすべきものは?

「いや,プールは手放すべきだ」との考え方もあります。
「インストラクターの指導は高い専門性に支えられている。技能の上達につながるのだから任せた方がよい」
「サッカー,ダンス,スイミングスクール……。スポーツクラブが増える中,水泳は学校で扱わなくともよいのでは?」
「日本の学校はあらゆるものを抱えすぎ。だから教師が疲弊する」
教師のなり手不足が問題となる中「学校が果たすべき役割は何なのか?」が問われ、カリキュラム全体の見直しが求められています。

・未来に求められる資質・能力は、水泳の授業においてどう育つのか?
・学校教育において水泳を扱う意義は何か?

など、現場に身を置く者の立場から考えてみたいと思います。

大村 高弘(おおむら たかひろ)

静岡大学教育学部特任教授・附属浜松小学校長


実習で子どもに感動し教職への夢をふくらめる学生たち。新たな授業への挑戦を日々続ける教師たち。こうした人たちと共に、教職のやりがい・授業の醍醐味・学校の価値などを考えています。

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