教室を「スムーズ」に保つということーー保護者のカードで気づいた、この一年の役割
アメリカ・モンタナ州ボーズマンで、モンテッソーリ保育士として日々の教室に立ちながら、地元の州立大学院で学びを続けています。
今回は、今年度最後の日である卒園式を終えての振り返りです。
ボーズマン・モンテッソーリ保育士 城所 麻紀子
入場から始まった、驚きの連続
6月25日は卒園式でした。
例年、卒園式の入場から着席までの流れはスムーズにいきません。
保護者が見ている緊張もあってか、列がぐちゃぐちゃになったり、なかなか席に座れなかったりするのが毎年の風景でした。
ところが今年は、あまり練習をしていなかったにもかかわらず、入場も着席も驚くほどスムーズに進みました。「本番、大丈夫かな」と内心思っていた私は、拍子抜けしつつ、子どもたちの落ち着いた様子に感心してしまいました。
歌声に見えた、日常の力
5曲歌いました。みんな張り切って最後まで歌っている姿に、また驚かされました。
例年なかなか声が出ないのですが、今年の子どもたちは、本番に強いメンバーだったようです。見守るというより、頼もしいなあと、終始笑顔で眺めていられました。
歌のあとには、一人ひとり名前が呼ばれ、賞状を受け取る時間です。子どもたちは先生のところに1人で向かい、賞状を受け取り、4人の先生(現主任、新しい主任、元主任、そして私)とハグをします。そのあと私からバラの花を一輪受け取り、保護者のもとへ向かう、という段取りでした。
過去の卒園式では、歌の途中で保護者のところへ走っていってしまう子もちらほらいたりと自由な雰囲気でしたが、今回は全員がこの流れに沿って進行し、式全体が順調に進みました。
参加できなかった昨年度と、身体のコンディション
昨年度の同じ時期を振り返ると、私は休職中でした。卒園式には参加したいと強く思っていたのですが、がん治療後の膝の痛みが引かず、最終的には参加を断念しました。
子どもたちや保護者に会いたい気持ちと、自分の身体がついてこないもどかしさ。そのギャップを受け入れるのは、想像以上に難しい経験でした。
それがほんの一年前のことだとは、今日の自分には信じがたいほどです。
今年は、クラス運営から卒園式まで、一日を通して現場に立ち続けることができました。身体が少しずつ回復し、こうして子どもたちのそばに戻ってこられたこと。当たり前のように見えるその一歩が、私にとってはとても大きな一歩でした。
それなのに、今季の波乱万丈とストレスの中で、いつのまにかそのことを忘れかけていました。
卒園式というこの節目の日に、教室に戻る機会を与えてくれた職場と、回復を支えてくれたすべての人への感謝が込み上げてきました。
保護者のカードから気づいた「見えにくい仕事」
卒園式の後、以前から在籍している保護者から、お礼のカードをいただきました。そこには、「今年度、戻ってきてくれてとてもうれしいです! あなたのおかげで、すべてがとてもスムーズにいきました!」と書かれていました。
その言葉を読んだとき、「ああ、それが私が今年やっていたことだったんだ」と、はっと自分の一年の輪郭が見えた気がしました。
この一年は、子どもたち一人ひとりとの細かな会話よりも、教室という場をどう回すか、大人たちの関係をどう整えるかに意識を向けていた時間の方が長かったように思います。
笑い話に変わりつつある、波乱の一年
そのせいか、「この子とこんなことを話した」という鮮やかな思い出が残っていないことが、寂しくもあります。
けれど、このカードを読んで、自分がやっていたことを保護者が見ていてくれたのだと知り、驚きとともに、じわりとほっとしました。
誰かが安心して子どもを預けられる場を保つという、目に見えにくい仕事も、たしかにここでは必要とされていたのだと実感しました。
先生の入れ替わりやトラブル続きで、穏やかな一年とはいえない日々でしたが、無事に卒園式を終えた今、少しずつ笑い話に変わりつつあるようにも感じています。
このカードの言葉は、この一年の小さな勲章になりました。
太陽のような主任の旅立ちと、これからのチームづくり
昨年から教室の立て直しに力を貸してくれていた事務局(のちに主任)だった先生は、今日が最終日でした。
寂しさもありますが、その先生と、新たに合同主任となる2人の先生たち、そして異動してきた事務局職員と、教室のこれからについて前向きに話し合えるようになりました。
やっと、安心して任せ合える先生たちとのチームになりつつあると感じられるところまで来たことが、何よりの喜びです。
ほうきを片づけながら、新しい一年へ
卒園式が終わり、午後1時から大掃除をしながら、教室を少しずつリセットしていきました。明日は一日掃除デー、そのあとには1週間の夏休みが待っています。
バラの花を手に保護者のもとへ向かっていった子どもたちの後ろ姿を思い出しながら、次の季節のために、自分の心の中ももう一度整え直してみようと思いました。
心機一転、気分を少し上向きにして、新しい一年を迎えたい……そう願いながら、ほうきを片づけました。

城所 麻紀子(きどころ まきこ)
ボーズマン・モンテッソーリ保育士、元サンディエゴ日本人向け補習校講師、モンタナ州立大学院家族消費者科学科 修士課程
2020年からアメリカのモンタナ州の人口5万人の町で、モンテッソーリ保育園の保育士をしています。
アメリカといっても、白人約90%、アジア人約2%(最近増えました!)という環境です。
あまり日本人の方に知られていない、アメリカの田舎での教育や生活の様子などを共有できたらいいなあと思っています。
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