2026.05.16
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運動会(表現)を「踊る」だけにしない指導の実践例

ゴールデンウィークが終わり、運動会が春開催の学校は、そろそろ準備が始まる頃でしょうか。
運動会は、種目の内容を決めて練習を行ったり、本番に向けて係活動を進めたりします。年間行事の中でもビッグイベントです。児童の結束力を高める行事にもなりますし、同僚性を高めることも期待されます。ここでは、児童が主体的に学習する運動会の実践例を紹介していきます。

岡山県矢掛町立小田小学校 教諭 角田 直也

運動会で表現をするのはどうして?

運動会は、教育課程の中では特別活動の学校行事(健康安全・体育的行事)に該当します。
運動会をすることが目的になってしまいがちですが、学習指導要領では、運動会を通して「(前略)規律ある集団行動の体得、運動に親しむ態度の育成、責任感や連帯感の涵養、体力の向上などに資する」ことが目標になっています。
また、「運動会などについては、実施に至るまでの指導の過程を大切にするとともに、体育科の学習内容と関連を図るなど時間の配当にも留意することが 大切である」と内容に示されています。したがって、徒競走などの種目については体育科の授業と関連性をもたせて、計画・実施を行います。

一方で、保護者の期待値が最も高い表現(ダンス)は、学習指導要領にはどう位置づけられているのでしょうか。
体育科の表現の領域(高学年)では、「①感じたことを即興的に表現したり、集団で工夫すること」「②フォークダンスや日本の伝統的な踊りに関すること」を学習することになっています。このようなことから、運動会でよく見かける定型ダンスは、学習指導要領から少し離れてしまっていることが現状です。それでは、どのように学習指導要領と関連付けて、運動会の練習を行っていけばよいのでしょうか。

運動会の前になると、教員の気合が入り、念入りに準備をしている姿をよく見かけます。教員の願いと期待が児童と一致していれば、運動会を通して経験を重ね、学級経営や通常授業の効果を高めることができます。
しかし、そうでない場合は、教員から教えられる振り付けを一生懸命模倣する作業になってしまいます。こうなってしまえば、表現運動とはより遠ざかってしまいます。

①学校教育目標やテーマと関連させた表現運動の設定

  

テーマ設定のイメージ図(筆者作成)

そこで、児童の主体性を高め、実りの多い教育活動にするための視点をいくつか提案したいと思います。

全ての教育活動は、学校教育目標を基準に計画・実施することで一貫性が生まれます。学校教育目標のどの部分を達成するための表現運動なのか意識して、表現運動のテーマを確実に設定します。
今後、児童の主体的な活動を進めていく中で、多くの話し合い活動が行われます。話し合いが平行線になった場合などは、指針となるテーマがあることで話し合いが円滑になります。目指すべき姿を掲げたテーマを作成しましょう。

②児童の主体性を高めるために選択できる環境を用意する

できることならば、振り付けまで児童が考えて、児童同士で試行錯誤しながら活動をしたいところです。しかし、特に春開催の場合は他の行事との兼ね合いで、十分に時間が確保できません。
そのため、どこまで児童で考えて、どこから教員にバトンタッチするのか、児童と話し合いの上で決めることをおすすめします。

例:【負担少】テーマ決め→内容→構成→使用音楽→振り付け決め【負担大】

③自分の言葉で説明し集団の力を高めるアウトプットの場

児童が自ら決めたことであれば、練習に向かう姿勢が変わります。友達に伝える細かい振付けやダンスに込める思いも、自分の言葉で説明することができます。また、自分たちで創り上げるダンスだからこそ、得ることができる集団の力もあります。
一方で、話し合いの中で意見が通らないことが原因でフラストレーションがたまったり、頑張りすぎて疲れたりする児童もいます。教員は、個々や全体に対してフィードバックを行い話し合いの伴走をしたり、児童のやりたい気持ちと負担感のバランスを保ったりするようにしましょう。

運動会で表現をするときに大切にしたい視点

  

運動会で行う表現の留意点(筆者作成)

最後になりますが、運動会のプログラムにある「表現」についてです。体育科の授業における「表現運動」との関係性について考えていきましょう。
表現運動は、抽象的な音楽や雰囲気を、個々でイメージを捉え、具体的な動きに変化させていきます。もちろん「魚になりきって体を動かす」「風のような音だから走り回る」という活動を運動会に取り入れることも考えられます。しかし、運動会本番で即興的に行うのは、授業者としても不安が大きいでしょう。

練習段階では即興的に行うことも考えられますが、練習で積み上げた動きや、精選された動きを本番で披露すると捉えても良いかもしれません。また、「表現のテーマをイメージして、動きで表現する」と捉えれば、表現運動として扱えるのではないでしょうか。
例えば、「高め合う」を表現するために友達と協働的なダンスを考えてみたり、「楽しい」を表現するために手拍子を取り入れてみたりするなどが考えられます。テーマから振り付けを考えて、運動会で披露するために定型ダンスとして全体に共通理解を図り、集団で協力してテーマを表現できるようにしましょう。

教員が主導して運動会の練習を進めるのではなく、児童が主体的に運動会に参加し、楽しく表現運動を行うことができるよう応援しています。

角田 直也(かくだ なおや)

岡山県矢掛町立小田小学校 教諭


特別(聴覚)支援学校、青年海外協力隊(マラウイ)、公立小学校に勤務。
近年は、総合的な学習の時間に行う地域をフィールドにした活動を軸として、教科横断的なカリキュラム編成を実践・検証し、地域学習と教科学習の双方の深化について研究しています。
また、先輩教員のノウハウと新しい"観"の教育を融合しつつ、若手教員と共に学ぶ新しい研修方法を実践しています。

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