2025.12.03
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小学校体育「走り幅跳び」授業実践 ~助走と踏切で跳ぶ力を伸ばす~(2)

前回に引き続き4年生と実施した「走り幅跳び」の学習の具体的な様子を紹介します。

明石市立鳥羽小学校 教諭 友弘 敬之

はじめに

(図1)単元シート

筆者作成 

前回記述した通り、6つの場を設けて本単元を実施しました(図1)。
段ボール、ゴムひも、レースの3種類に、それぞれ「遠く」と「高く」をかけ合わせた6つのコースです。体育館で行うこともあり、できる限り多くのマットを用意して着地の際の衝撃をやわらげ、着地時の足の着き方をしっかりと指導したうえで学習に取り組みました。

場は、学習が始まるまでの時間に担任と数名の体育係で設定しました。もちろん体育科の学習では「場の準備」も大切な学習の一部としています。
しかし、今回は3クラスが続けての学習時間でしたので、どのクラスも同じ時間の運動量を確保するため、あらかじめ準備しておくことにしました。

学習の実際

1時間目

単元導入の1時間目。体育館へと集まってきた子どもたちは口々に「うわっ!何これ~!先生跳んでみていい!?」「こんなん余裕で跳び越えられるし!やってみるで!?」と、さっそく跳びたい気持ちでいっぱいでした。
しかし、まずはぐっと我慢を促し、スキルウォームアップを行いました。体育館の前方半面を使って折り返しリレーをし、その中で両足着地の動きやリズミカルに跳躍する動きなどを取り入れて体を温めました。

その後、「今日から新しい学習です。どんな学習かわかるかな!?」と問いかけると、「見りゃわかる!飛び越えるやつやろ!?」「幅跳びする違うかな!?」と、反応してくれました。そこで、それぞれのコースを1回ずつ跳んでから、再度集合するように指示を出しました。

集合後、「どのコースが気に入ったかな!?」と問いかけ、それぞれのコースの特徴を共有しました。特に「ゴムひもコース」のゴムひもはかなり低く設定しておいたので「低すぎて簡単すぎました」という意見が多く、「もっと高いコースに変更して!」という思いが膨らんでいる様子でした。
残り15分程度になってきたあたりで、ある子が「先生片足で跳んでもいいの?」とたずねてきました。
私は「なんで?」と問い返しました。すると、「両足だったら勢いが落ちて跳びにくいから」と教えてくれました。そこで、短い時間ミーティングを行い、両足ジャンプと片足ジャンプを比較してみるように指示しました。すると、「片足のほうが全然跳びやすい」「両足だとこけそうになる」と、片足で踏み切ることの良さが共有されました。

2時間目

片足で力強く踏み切る子

 

2時間目も、前時と同様にスキルウォームアップを行ってから、幅跳びの学習に入りました。今回の学習では、前回の振り返りを共有するところから始めました。
すると、ある子が「走り始める位置を後ろのほうの線にしたら全部のコースクリアできた!」と発言をしました。
そこで、「走り始めの位置によって跳べるコースが変わるの?」と問い返しました。その言葉には多くの子が反応して「全然違う!」「だって勢いがつくもん!」と、走り始める位置に着目し始めました。
「では、赤線、青線、緑線と3か所のスタート位置があるから、どこが一番跳びやすいか確かめておいで!」と促しました(スタート位置は、あらかじめ体育館のバスケットコートの線の色ごとに3か所設けていました)。子どもたちは、それぞれ気に入ったコースで、いろいろなスタート位置を試しながら幅跳びをおこなっていました。

再度集合して、中間ミーティングをすると「やっぱり助走が長いほうが跳びやすくなる」と発言した子がいたので、「それどういうこと!?」と問い返しました。
すると別の子が、「スタートから跳ぶまでの距離あるやん。あそこでどれだけ勢いがつけられるかで、跳べる距離が変わるってこと!」と言い直してくれました。
「ほかのみんなは意味わかる?」と全体へ投げかけると、多くの子がうなずいており助走の大切さに着目できている様子でした。
しかし、ある子が「でも、遠すぎると跳ぶときにつかれて逆に跳べない…」と発言しました。
「じゃあ、自分に合った助走の長さがあるっていうこと!?」と質問すると、「そうそう!私は青線くらいがちょうどいい」とつながってきました。
「では、自分に合ったスタート位置を探してみましょう!」と促し、残り時間を過ごしました。助走を意識する中で、少しずつ力強い踏切が増えてきました。

3時間目

コースの難易度も少しずつ高くなり始めた3時間目。要するに、段ボールの位置を遠ざけ、ゴムの高さを上げ、レースの距離を伸ばしました。
すると、子どもたちから「前は跳べてたのに難しくなってきた…」という発言が目立ち始めました。
そこで、上手に跳べている数名に見本として跳んでもらい、私が跳ぶ様子と比較しました。
「何が違うのかな?」と問いかけると、「音が全然違う!」「先生は跳ぶときパッって感じやけど、みんなはドンッって感じ!」と、踏切の強さに着目した声があがりました。
そこで、自分の踏み切るときの音を確認するように促しました。中間ミーティングでは「勢いよくいい音で踏み切ると高いゴムひもも超えることができた!」「ドンッていう音を意識すると遠くまで行ける!」と、力強く跳ぶことの良さが共有されていきました。残り時間いっぱい挑戦し、本単元は終了しました。

単元テスト

(図2)単元テスト 

筆者作成 

本単元の終わりに、学習を言語化するための単元テストを実施しました(図2)。
体育の学習はどうしても思考面が表出しづらいことが多いです。ですので、単元ごとに記述式のテストを作成するようにしています。
記述の中で子どもたちは
「はじめは簡単に跳び越えられると思っていたけれど、レベルが上がると高く跳ばないといけないので難しかったです。でも、助走をつけたり踏切で勢いよく飛んだりと力強く跳べるようになると簡単になってきました」
など、気づいたことをもとに学習での学びを整理する様子が多くみられました。

おわりに

今回は「走り幅跳び」を体育館で実施しました。
場のデザインや学習環境として懸念する一面もありました。
しかし、多くの運動量が確保でき、さまざまなコースにチャレンジする中で楽しみながら技能が向上できたのではないかと思います。
体をふわっと浮かす浮遊感は走り幅跳びの醍醐味です。
ぜひ、安全面に考慮しながら、皆様の体育館でも挑戦していただければと思います。

友弘 敬之(ともひろ たかゆき)

明石市立鳥羽小学校 教諭


「単元学習」をテーマに学び続けてきました。その中で、「学習デザイン」「実の場」「問い」と、興味を広げてきました。今は「そもそも学びってなんだろう?」という問いと向き合っています。それは、子どもの学びだけではなく、教師としての、また大人としての学びも含みます。この学びの場を通して、私の問いを解決していきたいです。

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