2026.01.15
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愉しい授業を創る 「体育の授業で笑顔を生み出す工夫編」

大学での「初等教科教育法(体育)」の授業では、現在、体育科の模擬授業を行い、よりよい授業を創っていく道筋を学生と共に学んでいます。
「笑顔」を生み出していく愉しい授業について、模擬授業をもとに考えてみました。

浜松学院大学地域共創学部地域子ども教育学科 教授 川島 隆

体育科の模擬授業のことです

年が明けると、すぐに後期授業が再開されます。
「初等教科教育法(体育)」の授業も、残すところあと3回。
その日は、第6回の模擬授業でした。
内容は、第2学年の表現遊びの単元における第2次を扱った授業です。
学生は、本授業でテキストとして活用している『小学校体育(運動領域)指導の手引【低学年】 ~楽しく身に付く体育の授業~』を参考にしながら、指導案を作成しています。
今回、担当した3名の学生は、あらかじめ書いてあった指導案を練り直したり、事前の準備や打合せを重ねたりして、熱心に取り組んでいました。
どんな授業が見られるのか、楽しみでした。

体育の授業は「心と体をほぐす運動」から始める

 

心と体をほぐす運動

授業は、「心と体をほぐす運動」から始まりました。
円を作って座るように指示があり、
「先生のまねをして、動いてね」
そんな言葉掛けが子ども役の学生たちに向けてされます。
そして、軽快な音楽がスタートしました。
運動の始まりです。
音楽に合わせて、体を軽く揺らしながら、手拍子をします。
頭上で手拍子、右脇で手拍子、左脇で手拍子と、手を叩く位置を変えていきます。
続いて、今度は、両手で軽く両膝を叩きます。
両肩を、頭を、床を、リズムに合わせながら、叩く場所を変えていきます。
学生たちは、教師役の学生の動きを見ながら、同じ動きをしていきます。
学生たちには、自然な笑みが生まれ始めます。
そして、立ち上がります。
手をつなぎ、時計と反対回りに、軽いステップで駆け出しました。
これまでの授業では、手をつなぐことを躊躇していた学生もしっかりと手をつなぎ、皆と動きを合わせています。
途中で、逆に回ったり、ステップを止めて、つないだ手をそのままに、両腕をウェーブのように動かしたりしていきます。
動きが変わると、すぐには対応できずにいる学生もいますが、間違いや失敗は全く気になりません。
笑い声が起きたりもしました。

「心と体をほぐす運動」が授業の雰囲気を変えた理由

ほんの2分にも満たない運動でした。
しかし、場の雰囲気も大変柔らかなものになりました。
私は、手元の指導案に、思わず花丸をつけて、この運動に、どんな意味があるかを考えました。
まず、「ほぐす」「一体感」と走り書きました。
私が目の前の学生たちの姿を見て、感じ取った言葉でした。
そして、十分な協議の時間のない中でしたが、私が言葉にした「一体感」は、何によって生まれたのかをあらためて考えました。

学生による授業の振り返り(協議)の場で

授業の振り返りは、まず個人での「振り返り」から行われます。
ワークシートに、次の4つの観点からの記述をしていきます。

(1) 目標は、身に付けたい力が子どもの姿として明確になっていたか(内容的条件)
(2) 導入では、子どもの興味関心を高め、問いを生み出したり、意欲を高めたりする工夫があったか(内容的条件)
(3) 学習集団を効率よく動かし、勢いのある授業となっていたか
【学習規律・マネジメント(学習時間・運動時間の確保)】(基礎的条件)
(4) ①楽しい体育の条件、②体育科の見方・考え方、③運動の特性の3つの視点から見ると、どのような授業であったか。

その後、グループごとにワークシートの記述をもとに話し合い、そこで出された考えをホワイトボードにまとめていきます。
模擬授業は、次なる授業改善を目指していますから、授業の「よさ」と「課題」の双方を出し合うように声掛けをしています。
続いて、グループごとに出し合った意見を交流します。

学生は「心と体をほぐす運動」をどう捉えたか

この授業で、特に「心と体をほぐす運動」について、どんな意見が聴かれたかというと。

○ みんなで活動して、「笑顔」が多かった。
○ 先生役が「笑顔」でやっていて、児童役にも自然とたくさんの「笑顔」が出て、楽しかった。
○ 音楽で声が消され、伝わりにくいところがあった。
○ 音楽によって、明るい雰囲気になった。
○ 授業に勢いがあり、集団を効率よく動かしていた。
○  準備運動も遊び感覚で、小学2年生だったら、十分に楽しみつつ行えるものだったと感じた。 等

私からは、この運動について、以下のような話をしました。
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「心と体をほぐす運動」では、「音楽」と「手をつなぐ」ということが、その役割を果たしていたと思います。
特に、「手をつなぐ」ことは、友達との「つながり」を生み、円を作っている皆の「一体感」を生み出していたように感じました。
そして、音楽に合わせることは、心と体をほぐすことにもつながっていました。
皆の「笑顔」が、何より、よい運動であったことを示していました。
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むすびに 

今回の模擬授業で生まれた、学生の「笑顔」は、単に面白おかしいから生まれたものではありません。
「運動を楽しむ」という行為の中から、自然に生まれたもので、見ていてとても心地よいものでした。
このような「笑顔」が、愉しい授業を創っていくための「基礎的な条件」になっていくのだということをあらためて考えました。

また、「手をつなぐこと」には、心理的に「一体感」も生み出しますし、「安心感」も生み出すことになるでしょう。
もし、今回の動きを、距離をとって、4列横隊など整列して行ったら、全く違ったものになったでしょう。

また、身体的にも「動きを同期させる」という意味もあると考えられます。
手をつなぐことで、隣の友達の動きが直接に伝わってきますから、リズムやスピードが共有されます。それは、バランスをとる、安定した動きにもつながるでしょう。
「笑顔」と「手をつなぐ」。何気ないことですが、子どもの心にも体にも影響する、そして、「愉しさ」にもつながっていく、重要な意味があることを学ぶ機会となりました。
共に学ぶ学生の皆さんにも感謝したいと思います。

川島 隆(かわしま たかし)

浜松学院大学地域共創学部地域子ども教育学科 教授


2020年度まで静岡県内公立小学校に勤務し、2021年度から大学教員として、幼稚園教諭・保育士、小学校・特別支援学校教員を目指す学生の指導・支援にあたっています。幼小接続の在り方や成長実感を伴う教師の力量形成を中心に、教育現場に貢献できる研究と教育に微力ながら力を尽くしていきたいと考えております。

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