教師の五感を磨く~子どもと教師の成長に欠かせないもの「本物体験」①(13)
「教師の五感を磨く」、今回も「触覚」、ふれることです。「直接ふれること」「本物にふれること」どちらも人を成長させてくれます。ここでは、日常生活や教師の本物体験を、ちょっぴり語ってみたいと思います。
浜松学院大学 現代コミュニケーション学部 子どもコミュニケーション学科 教授 前浜松学院大学短期大部 幼児教育科 特任講師 川島 隆
本物に触れてみなくちゃ分からない
同じ大きさ、同じ厚みの鉄の板と木の板があります。
手のひらで触ってみます。
どちらが冷たく感じるでしょうか?
そんな実験があります。
NHK教育「カガクノミカタ」という番組の1シーンです。
皆さん、どちらが冷たいと感じると思います?
番組では、街角で大人から子どもまでいろんな人に実際に触ってもらいます。
「どちらが冷たいと思いますか」
全ての人が「鉄の方が冷たい」
そう回答しました。
やはり、「鉄の板」の方が冷たく感じるようです。
では、実際は、どうなのでしょう。
鉄の板の方が、冷たいのでしょうか?
そこで、温度計で表面の温度を測ってみます。
結果は、……。
木の板と鉄の板では、ほぼ温度が変わりません。
数値で見るものの温度と人の触ってみた「感覚」。
そこには、明らかな違いがあるようです。
いずれにせよ、直接に触れてみなくちゃ分からないことってあるのです。
世の中には、そんなことが沢山あるのだ。
前号を綴った後、あらためて考えたのでした。
本物にふれる「本物体験」こそ大事 一流のラーメン屋さんへ
さて、直接ふれる「直接体験」とともに大事なのは、本物にふれる「本物体験」だと思います。
例えば、皆さんが休日にラーメンを食べに行くことになったとします。
普通のラーメン屋さん。
そこそこ美味しいラーメン屋さん。
誰が食べても超一流の美味しいラーメン屋さん。
どんなお店を選びますか?
美味しいラーメン屋さんは、「混んでそうだから行かない」という人も中にはいるでしょうけど、どうせ行くなら美味しいラーメン食べてみたいですよね。
一流のラーメンどうだろうって興味・関心ぐ~んと高くなりませんか。
同じお金を出して食べるなら、一流の本物のラーメンですよ。
スープよし、麺よし、具材よし。どれも文句なしっていう絶品のラーメンです。
(ラーメン好きな私だから言えることでしょうか)
別にラーメンじゃなくってもいいんです。
様々な出会いがあるのなら、音楽だって、スポーツだって、何だってよりよいものと出会ってみたいと思うのではないでしょうか。
これは、教師の仕事で考えるのなら。
よい授業、よりよい授業を見てみたい、出会ってみたい。
そして、自分もそういうよい授業ができるようになりたい、子どもと一緒に創ってみたい。
そんなふうに考えるのが、プロの教師じゃないかなって勝手に考えています。
如何でしょうか。
一流の授業を創りたい 本物の講師と出会いたい
教師の責務は、良質の授業を子どもと共に創ることです。
小学校勤務当時(今も変わらずですが)、私は、少しばかりいいね、じゃなくって、どうせ創るなら一流の授業を目指したい、プロとしての仕事をしたい、そんなふうに考えていました。
私は、幸いにも10年間ほど研究主任をやらせていただきました。
まさに学校の授業づくりに携わる分掌、やりがいのある仕事でした。
ある学校に赴任した際、校長先生から
「川島さん、研究主任をお願いしますね。自由にやってください」
そう言われて、その日から、どんな校内研修をしようかとウキウキが止まりませんでした。
そして、どうせやるなら、本物の研究をしたい!そう思ったのです。
そして、本物の研究には、本物の、一流の講師をお招きして研究を進めたいと考え、校長先生にお願いをしました。
「講師を呼びたいんです。一流の講師を」
校長先生は、すんなり快諾してくれると、すぐに私が求める講師の先生に依頼のお手紙を書いてくれました。
そうして、私たちは、一流の本物の講師の方と出会い、本物体験をすることができました。講師の方から、授業で最も大切にしなくてはならないこと、「聴くこと」「見ること」を深く、深く胸に刻み、学んだのでした。
授業。本物を求めること、求め続けること。
教師として心に留めておきたいことの一つです。
川島 隆(かわしま たかし)
浜松学院大学 現代コミュニケーション学部 子どもコミュニケーション学科 教授
前浜松学院大学短期大部 幼児教育科 特任講師
2020年度まで静岡県内公立小学校に勤務し、2021年度から大学教員として、幼稚園教諭・保育士、小学校・特別支援学校教員を目指す学生の指導・支援にあたっています。幼小接続の在り方や成長実感を伴う教師の力量形成を中心に、教育現場に貢献できる研究と教育に微力ながら力を尽くしていきたいと考えております。
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