2022.03.29
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教師の五感を磨く 見る目を磨きたい~『虫の目』『鳥の目』『魚の目』3つの目で授業を見る・創る~後編~(8)

授業を見る目、子どもを見る目を磨いていくには、どうしたらよいでしょうか。
『虫の目』『鳥の目』『魚の目』
この3つの目が、その糸口になるのではないかと思います。多様な見る目を持つこと、大切にしていきたいですね。

浜松学院大学 現代コミュニケーション学部子どもコミュニケーション学科准教授 川島 隆

社会科の授業から考えた問題点

前回、「水産業のさかんな地域」の第1次(導入)の授業の様子を紹介しました。授業者としては、うまくいったかと思いきや、子どもの反応が鈍く授業のどこに問題があったかを考えさせられるのでした。
今回は、授業者として考えた問題点をもとに、「見る」ことについて考えていきたいと思います。
まず、授業後、一人になった教室で、考えたこと。
(職員室だと同僚の声が交錯する中で、深く内省できなくなります。子どもの息づかいも感じられなくなります。だから、授業を振り返るのは、教室が一番だと思います。)

○やはり発問に問題があったのだろうか。「分かったこと」というより「疑問」とか「?」、あるいは「調べてみたいこと」といった言葉を発問に入れて投げ掛ければよかったのか。
○「意見が出ないな」と感じたところで、ペアやグループ内での話し合いを取り入れたり、自由交流の時間をもったりして、発言しやすい雰囲気をつくればよかったのか。
○一人学びの時間が長すぎたのか?間延びしてしまい、意欲が低下してしまったのかも知れない。時間の目安を子どもの様子を見ながら切るべきだったのか。
○本時で用いた、イカ、イカ釣りの拡大写真、イカ釣りの個人用の写真。そして、学習内容とかかわる「八戸」を知るための地図帳といった資料。この4つの資料あるいはその提供の仕方に問題があったのか。

問題点を挙げていくと、まだまだ出てきそうでした。
肝心なのは、そこからどのように授業改善していくかということです。

「みる」という言葉の意味

「虫の目」「鳥の目」「魚の目」

さて、私たちは、様々な視点で日ごろ物事を見つめています。
その見方の一つに「虫の目」「鳥の目」「魚の目」の3つの目があります。これら3つの目は、企業経営や人材育成、経済や社会等でも、重要な見方と考えられています。もちろん、教育現場でも生かせる見方だと思います。

はじめに、「虫の目」とは、物事の詳細を細やかに分析する視点、ミクロの視点のことを指します。虫の持つ「複眼」から、実際に存在する物事を構成する要素に焦点を当て、丁寧に分析することも意味しています。
授業でいうならば、一人の子どもを間近で寄り添いながらつぶさに観察・分析すること、あるいは一人の子どもを様々な視点から見取っていくことと言ってよいでしょうか。

次に、「鳥の目」とは、物事を全体からとらえる視点のことを言います。どんなに大きなものであっても、大空を飛ぶ鳥のように、空の高いところから見れば物事は小さく見え、近くでは目に入らなかった周辺のこと、その位置関係や全体像が見えてきます。つまり、鳥の目とは、目先の小さなことに囚われず、世界全体を見渡すマクロの視点あるいは、俯瞰する見方と言えます。
授業でいうならば、直接に子どもに対応しながらも、その授業の有り様を俯瞰してみる見方、客観的な見方といえるでしょうか。

最後に、「魚の目」とは、物事を「流れ」で見ること、動的なものを見る視点であるといえます。「流れ」とは、過去から現在、現在から未来といった時の経過を表しています。魚が泳ぐ海川は、絶えず変化していて、この流れには、物事の変化、因果関係や過程、トレンド等の視点も含まれています。
授業でいうならば、子どもの思考の流れ、今進行しつつある授業の展開、子どもの発言のつながり等を見ることと言ってもよいでしょうか。

3つの目で授業を見る

では、この3つの目を使って、先ほどの社会科の授業を見てみると、どんなことが言えるでしょうか。

例えば、「魚の目」。
トレンドの視点から見ると、「イカ」という教材と「イカ釣りの拡大写真」は、子どもの思考の流れの中で、うまくつながっていっただろうか。子どもの視点は、授業者の働き掛けによって、箱の中のイカから黒板の写真へと移らざるを得なかったのですが、その移動が果たしてスムーズであったかどうか。授業デザインそのものの問題点と言えるかも知れません。

また、「鳥の目」。
俯瞰する見方をすると、この授業の、教室の雰囲気を含めた全体像をとらえたとき、授業者として、子どもの発言の停滞を感じ取り、手立てを取る必要があったのではないか。それは、先に挙げた「子ども同士の交流」もあるだろうし、参観会ということを生かすならば、保護者にも参加してもらう、一緒に考えてもらう「学習参加」ということもできたかもしれない。授業の目の前の子どものみに注視してしまうのではなく、俯瞰する見方が、その場でできれば、その場に合った対応が出来たかも知れません。

もちろん、「虫の目」。
一人一人の子どもを見取ることも忘れてはなりません。

3つの目をうまく生かして、授業デザインをし、授業を創っていけば、もっと子どもが学ぶ喜びを感じられる授業ができるのではないかと思いました。

保護者、子どもは、どう感じていたか

授業の翌日、保護者や子どもから、本読みカードや日記をとおしてこんなメッセージをいただきました。

子どもA
○今日の参観会で、また手を挙げられなかったので、残念でした。みんなが見てて、ちょっと緊張してしまいました。先生が、ハッポウスチロールを持ってきたとき、「何だ、くさいぞ~。」と思いました。見たら、イカで、とてもくさかったです。疑問に思ったことは、なぜ八戸でイカがたくさん取れるかということです。疑問に思ったことがいくつかでてきたので、調べていきたいと思います。今日の授業で思ったことは、観察力で疑問・分かったことが浮かんでくるということです。発表ができなかったのは、残念だったけど、授業ではみんなの意見がちゃんと聞けたと思うし、しっかりできたと思うのでよかったと思います。

子どもB
○今日の参観会では、社会の授業でした。社会の授業では、イカのことをやりました。イカはどこからきたかなどいろいろなことを勉強しました。疑問などで、イカは、なぜ夜につかまえるのか、イカは何でつかまえるのかなどいろいろ疑問がありました。今日の参観会の社会の授業は、楽しかったです。

保護者C
○参観会の社会科の授業、とてもよかったです。一枚の写真からでも、いろいろ発見できますね。私は、1、2点思いついただけですが、子どものノートには12個も書いてありました。ちゃんと箇条書きで。私は、すぐに長文になってしまうので、感心しきりです。「一戸」「二戸」「三戸」など「○戸」の地名をいっぱい探すところもすごいな~。と、親バカです。

保護者D
○参観会おじゃましました。とても楽しい授業でしたね。私の父も漁師で、八戸にもなじみがあるので、私も楽しみにしながら観させてもらいました。

教師の思いと子ども、保護者の思い、当然のことながらズレはあるようでしたが、こうした思いをきちんと受け止めたいと思いました。「3つの目」を意識しながら。

「3つの目」、教育課程や学級経営を見ることにもイカせそうですね。 

結びに

「教師の五感を磨く」をテーマに書き綴ってきましたが、「聴く」「見る」までで、今期の区切りを迎えました。それだけ教師の「聴く」「見る」は、大切だということだと思うのですが、なんと計画性のないことでしょう。でも、それも「つれづれ」のこととお許しいただければ幸いです。それでは、また。

川島 隆(かわしま たかし)

浜松学院大学 現代コミュニケーション学部子どもコミュニケーション学科准教授
前浜松学院大学短期大部 幼児教育科 特任講師


2020年度まで静岡県内公立小学校に勤務し、2021年度は、短期大学幼児教育科に身を置き、幼稚園教諭・保育士を目指す学生の指導・支援にあたりながら、幼小接続の在り方や成長実感を伴う教師の力量形成を中心に研究に取り組んできました。2022年度は、四年制大学に場をうつし、小学校教員養成に携わりながら、引き続き教育現場に貢献できる研究と教育に微力ながら力を尽くしていきたいと考えております。

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