2021.11.10
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「教師の五感を磨く~聴くことの意味」 つぶやきに耳を傾けて(1)

子どもたちが何気なく発するつぶやき。読み聞かせでも、授業でも、子どもたちの小さな小さなつぶやきが深い学びにつながっていく可能性を秘めているのです。
子ども理解を深める機会、教師の見え方を豊かにするきっかけになると思うのです。
つぶやきに耳を傾けていきませんか。

浜松学院大学 現代コミュニケーション学部子どもコミュニケーション学科准教授 川島 隆

絵本の読み聞かせで聴こえた子どもたちのつぶやき

読み聞かせボランティアというものをやっています。先日、読書週間の始まりということで、子供が通っている小学校のボランティアとして2日間、2年生と5年生の教室に入りました。前の週からどんな本がよいのだろうと準備をし始め、前日に5冊ほどに絞りました。
当日の朝。少し緊張しながら教室に入ると、子どもたちと挨拶を交わします。そして、5冊の本を紹介し、「どの本がいい?」と、子どもたちに聞いて、読んでみたいという声が多かった本から読んでいきました。5年生では『おちゃのじかんにきたとら』という本から、2年生では『そしたら そしたら』から読みました。
大型モニターに開いたページが映し出されるように手元で調節しながら、ゆっくりと読み始めます。始めは、本の文字を追いながら、少したってからは、ページをめくるタイミングで子どもたちの様子をうかがいながら、読み進めます。子どもたちは、じっと黙って聞いているかと思えばそうではありません。
私の語りに沿うように、いろんなつぶやきを発します。
思わずその一つ一つに答えたくなるのですが、淡々と読み進めていきます。でも、私の耳は、そんな子どもたちの一つ一つのつぶやきを拾って行こうと必死でした。「あー、そんな感じ方もあるんだな」「そんなこと考えもしなかったよ」などと思いつつ、つぶやきを聞いていくと、それぞれ異なる子どもの聞き方というものが、物語の受け止め方というものが、よくよく伝わってくるのでした。
子どもたちは、読み進める話を聴き、私は、子どもたちのつぶやきを聴き、あっという間に終わりの時間になりました。子どもの「つぶやき」っていいですね。

授業中に出会う「つぶやき」

さて、学校では、ほかにもいろんな場面で、この「つぶやき」が聴かれますよね。教師のつぶやきもあれば、子どものつぶやきも。授業の一場面から紹介します。
それは、とある小学校の6年α組。理科の授業研究でした。この授業のめあては、「魚の解剖をして、魚のからだの仕組みを観察しよう」です。
導入では、調べ学習をもとにして、人のからだの器官をまとめました。すると、「どうして肺は、右と左があるの?」というAさんのつぶやきが聴かれました。このつぶやきは、まさにつぶやきなので、隣の友達に聞こえる程度のものでした。授業者である先生には、もちろん伝わるような声ではありません。
解剖についての示範や説明を終えると、グループ毎にいわしの解剖が始まります。解剖は、子どもたちにとって初めての活動でしたが、落ち着いてじっくりと学ぶ空気が流れていました。解剖が進んでいくと、いろんなつぶやきが聴かれます。

「心臓って小さい」
「順につながっているんじゃないか」
「腸は、長いぞ」
「みんな一つにつながっているみたい」

子どもたちのつぶやきは、実に面白いと思いました。特に面白いと思ったのは、「腸は長い」というつぶやき。私が授業者だったら、「どのくらいの長さだろう?」と言って、長さに着目させるかも知れません。それが、人のからだとつなげて考えたときのよい材料となるからです。でも、私が授業者だったら、その声が拾えたかどうかは分かりません。
その後、先生が、「分かったこと、気付いたことは、何でもいいから書いて」と指示しました。
が、子どもたちは書く活動に積極的に向かおうとはしていないように感じられました。それは、目の前に魅力的な教材があったからなのかも知れません。だから、それは必然であったのかも知れません。
書き終えたワークシートを見ていきました。すると、ごく一般的な内容の記述が見られ、先ほどの「つぶやき」を、書いている子どもはあまり見られませんでした。それが、なぜかは分かりません。
授業では、書いている内容に深まりのある場合も、もちろんあります。しかし、この授業では、目の前の魅力的な教材を前にした子どもから、すっと浮かんで出てくることば、つぶやきの中にこそ、光るもの、学びを深めることにつながるものがあるように感じました。

耳を澄ませて聴いてみましょう

授業研究では、子どもの学びにあまり介入しないように留意しながらも、子どもにそっと寄り添いながら、子どもの「つぶやき」を拾い、子どもの事実を見取っていきたいと思います。そこには、きっと子どもたちの学びにつながる・深める「つぶやき」があると思うのです。そして、協議の場では、互いの見取りを積極的に交流させていきませんか。そのことで、子ども理解を深め、子どもの見えを豊かにすることができると思うのです。
まずは、耳を澄ませて聴いてみましょう。子どもたちのつぶやきを。小さな、小さな、つぶやきを。きっと面白いですよ。 

川島 隆(かわしま たかし)

浜松学院大学 現代コミュニケーション学部子どもコミュニケーション学科准教授
前浜松学院大学短期大部 幼児教育科 特任講師


2020年度まで静岡県内公立小学校に勤務し、2021年度は、短期大学幼児教育科に身を置き、幼稚園教諭・保育士を目指す学生の指導・支援にあたりながら、幼小接続の在り方や成長実感を伴う教師の力量形成を中心に研究に取り組んできました。2022年度は、四年制大学に場をうつし、小学校教員養成に携わりながら、引き続き教育現場に貢献できる研究と教育に微力ながら力を尽くしていきたいと考えております。

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