道徳が学級経営を救う
授業力を上げるから学級経営がうまくなる。
学級経営がうまくなるから授業力が上がる。
どちらもよく聞く話ですよね。
みなさんはどちら派ですか?
岡山県赤磐市立桜が丘小学校 指導教諭 古市 剛大
この歳になって教習所に通うことになりました。
バイクの免許を取ることに。
教習所には,大学生らしき若い人がたくさんいます。なんだかとても恥ずかしかったです。
一緒に教習を受けた方は,地元の大学生。
話をしていると,卒業後実業団に入ろうかと悩むほどのすごい陸上選手だったようです。
「バイクに乗らず,走った方が速いんじゃない?」とは言えませんでした。
以前はこんな声もありました
「道徳はやってもやらなくても同じ」
「学級でのトラブルの話合いを道徳の時間にする」
「日々の生活指導が道徳みたいなものだから,わざわざ授業しなくても」
教科化される前,たしかに言われていたこともあります。
授業で扱う内容が増え,時間の余裕がなくなっているのは分かります。
テストのようなもので測ることもしませんし,できません。
授業を行ったとしても,すぐに結果となって表れてくれません。
ただ,
『道徳が学級経営を救う』
これははっきりと言えます。(正しくタイトル通りです)
学級経営を救う【道徳の掲示物】
毎時間の道徳の授業が終わった後,学習した教材の挿絵や,子どもたちが気付いた価値などを教室の壁に掲示しているクラス,見たことないですか?
あれってすごく効果的だなと,私自身も経験者として感じています。
何に効果的なのか。
1つ目の効果は「子どもを褒める材料になる」
教室の中でのふとした光景。例えば,床に落ちている友達の鉛筆を拾って机にそっと置いてあげている子。
「すごいね」「優しいね」
もいいですが,
「あなたがしたことって,道徳で学んだ『拾ってもらった相手がどう思うか』を想像して相手が喜んでくれる行動をしたんだよ。すごいね」
まあ,こんなに堅苦しくは話さないでしょうが…
掲示物を見ると,かなり前にした内容も残っているので,すぐに思い出して子どもたちに伝えることができます。
そんなこと意識せずに行動する子もいるでしょう。
その子の何気ない行動に,先生が価値を付けてあげるのです。
自分の行動に価値があると理解した子は,次からどうするでしょう?
同じような場面で同じように行動するはずです。同じ価値観をもって,違う行動へと広がっていくかもしれません。
そんな子たちがたくさんいる学級って,すごく安定感がありますよね。
2つ目の効果は「率先垂範の参考書」
道徳の掲示物って,多くが教室の背面にありますよね。
一番,目にする機会が多いのは誰でしょうか?
先生です。
先生自身が道徳で子どもたちと学んだ価値を,行動にうつして子どもに示すのです。
他の教科の授業をする時でも,給食指導でも朝の会の時でも,子どもたちの方を向けば,その向こうに掲示されているので忘れることはありません。
以前,子どもたちが班でポスターをつくっている時のことです。
学級用のカラーペンを班に2セットほど渡し,友達と協力しながら仕上げていく様子を見ていました。
そろそろ終わりの時間がくることを伝えると,子どもたちはカラーペンをケースにしまって私のところへ返しに来たのです。
ですが,ケースの中身を見ると,同じケースの中に赤が2本入っていたり,違う種類のペンを同じケースに入れていたり。
そこで,子どもたちが振り返りを書いている間に,ケースの中身を元通りにしていました。
すると,
「先生が直してる!この前,道徳でやった『次に使う人のことを考える』っていうのをしてる!」
こんな声が聞こえてきたのです。
そこから振り返りを書き終わった子たちが手伝いにきてくれました。
今気付くのなら,もっと早くに自分たちでやってよ,とは言いませんでした(笑)
先生の姿や行動って,子どもたちはよく見ています。
道徳の掲示物を参考書にして,子どもたちに真似されたい行動をしていきましょう。
学級経営を救う【どの子も主役に】
道徳は,自分の生活経験を基に考えていきます。
つまり,誰にでも何かしらの経験がある,もしくは経験するであろうことなのです。
他の教科に比べて,自分の考えがもちやすいと私は思っています。
計算に時間がかかる子も,運動が苦手な子も,しょっちゅうケンカしてしまう子も,どんな子でもです。
「クラスのAさんは,どんな気持ちがあったから今の発言をしたんだと思う?」
「Bさんの発言とCさんの発言って同じ?ちょっと違う?」
「さっきの2人の考えを聞いて,Dさんはどっちに近い考えかな?」
子どもたち一人一人にスポットライトを当てましょう。
自分の話をみんなが聞いてくれる,それだけですごい満足感を味わえます。
先生が意図的にスポットの向きをどんどん変えることで,どの子も学級での存在を認められている気持ちになれます。
もちろん話すのが苦手な子もいるでしょう。
次の時間に振り返りの内容を紹介したり,机間指導の際にノートに書かれている内容を,名前を伏せてみんなに紹介したりする方法もあります。
多様な社会,多様な子どもたちだからこそ
学級経営=難しい,大変。
こう考えてしまう気持ち,すごくよく分かります。
学級経営と授業は両輪です。
どちらかだけでは走りません。
その片方の車輪を道徳にしてみてはいかがですか?
この車体には特別な免許は,いりませんので。
古市 剛大(ふるいち たけひろ)
岡山県赤磐市立桜が丘小学校 指導教諭
「道徳の教科化」をきっかけに,道徳のおもしろさと難しさを感じながら,研究と実践を重ねてきました。子供の「知りたい」「話したい」を大事にした授業とは?道徳科における個別最適×協働とは?日々の授業から,そして指導教諭だからこそ見える・感じることを綴っていきたいと思います。
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