2024.06.24
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「振り返り」に値する中味(授業)が大事 魔の6月を乗り切る編(8)

「子どもにとって中味のある授業」を創ることを誓った年度当初も、2か月余を過ぎると、少しトーンダウンすることがあります。
6月を迎えて出てくる様々な子どもの問題対応に疲れてきたり、緊張の糸が弱―くなったりして。
すでに6月も後半戦を迎えますが、この「魔の6月」と呼ばれる時期を、どう乗り切ったらよいかを考えてみたいと思います。

浜松学院大学 現代コミュニケーション学部 子どもコミュニケーション学科 教授  前浜松学院大学短期大部 幼児教育科 特任講師 川島 隆

そもそも「魔の6月」って何だ?

6月という月。

どんな月かというと、「梅雨」ですね。
今でこそ、教室にエアコンが設置され、心地よく過ごせるようにはなりましたが、それでも、梅雨独特の環境が生まれ、体がもちにくくなるのは変わりません。
それに雨続きでは、子どもは外で遊べません。
発散できない子どもには当然ストレスが溜まっていきます。
よって、子どもの問題行動が起きやすい状況も生まれてくるというわけです。
教師だって、4月のスタートを高い緊張感をもって乗り越え、5月病に打ち勝ってきて、ちょうど疲れが出てくる時期なんですよね。
そこへ、子どもの問題行動対応が増えてくると、自然に授業の質も危うくなってくる。
学びの主人公である子ども自体も、なかなかよい状態にはなっていないのだから、それなりのエネルギーをかけないといけないですよね。

「魔の6月」というのは、本当にあるのか?

こうしたことは、経験的な見解であって、客観的なデータは、どうなのか。

上越教育大学教授 赤坂 真二氏の紹介するデータによれば、子どもを対象とした「いじめアンケート」の回答で高い割合を示すのは、6月、11月になるのだそうです。
また、具体的な行為は、クラス内で起こっているとのことです。
学級の状態が荒れているのか、崩壊に近いのかといった詳細までを示すデータではないようですが、いじめに関するデータが、魔の6月を物語っていると言えます。

また、子どもの交通事故が一年の中で最も多いのが6月であるというデータもあるそうです。
学校外で起こっていることですが、これも要注意のデータであることに変わりはありません。

教師は、どう対応すればよいか?

いじめまで起こらずとも、不安定な状態にある子どもがいるのであれば、それをそのままにしておいては、いけません。
でも、いくら目の前に問題があっても、教師自身のエネルギーが湧いてこないときもあります。

そんなときは、どうすればよいか。

「教師自身がリフレッシュして、エネルギーを蓄えること」

一つは、
「教師自身がリフレッシュして、エネルギーを蓄えること」です。
教師だって、人間です。
疲れているときは、休むしかありません。
思い切って、仕事をしない日をつくることです。
仕事のことを考えない日をつくることです。
「年休をつかって、リフレッシュの時間をもつこと」
を勧めている人もいるくらいです。
それくらいの思い切った、割り切ったリフレッシュも今の時代は、必要なのかなと思います。
普段から持ち帰り仕事をしている方は、特にそれくらいのアクションが必要ではないかと思います。

「初心にかえること」

次に、私がしてきたのは、「初心にかえること」です。
私は、教育実習のときのことを当時の「実習記録」を開きながら振り返ることがあります。
当時指導してくださった先生はこんな言葉を、実習記録の最後に書いてくれました。

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とても十分な指導がしてやれたとは思いませんが、時間も体も気持ちも、私としては一生懸命やらせてもらいました。
そして、自分にとっても大変勉強になりました。
子どもについても考えたことがいろいろありました。
「進みゆく者のみ、教えることができる」
この言葉は、真実と思います。
教師は、優れて人間的な営みです。
自らを見つめ、自らを大きくし、素晴らしい先生になってください。
共に頑張りましょう
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今も私を支えてくれる言葉です。

「進みゆく者のみ、教えることができる」
今、ここで、立ち止まっていてはいけない。
そう思わせてくれるのです。

そして、その当時の子どもたちが寄せてくれた言葉です。

〇 4週間、どうもありがとうございました!試験、がんばってください。立っぱな先生になれるよう、がんばってください。
〇 いい先生になってください。5はんのプレゼントの中に「おまもり」が入っています。試験の時に、持って行ってください。絶対に先生になれる「おまもり」です。
〇 4週間、とても楽しかったです。お別れ会では、みんな泣いていました(私も泣いてしまった)。いい先生になれるようにがんばってください。

この言葉たちが、私の背中を押してくれるのです。
子どもたちが励ましてくれるのです。
この子どもたちの支えがあって、先生であり続けてきたのかもしれません。
子どもたちがいて、教師ができるのです。
人それぞれ、「初心」は異なるのかもしれません。
私は、なぜ教師を志したのか。
どうして、教師であり続けてきたのか。
スタート地点に立ち戻ることは、自分を取り戻すことになるのではないかと思います。

「今できることをやればいい」

三つめは、「今できることをやればいい」ということです。
先生は、まじめな人、きちんとやらなければ…という思いが強い人が多いように思います。
私も、「ここまでやらなければいけない」と考えてしまいがちでした。
でも、そこまでしなくてもいいことって結構あるようです。
だから、苦しい時には、
「今できることを、無理せずにやればいいんじゃないの」
できないことをしようとすれば、それは無理なことをしていることで、いつかその無理が、子どもに影響していくことにもなりかねません。
少しギアチェンジして、ゆっくり無理せず、できることを重ねていく。
そういうことも子どもと共有してみてもよいかもしれません。

子どもにゆるみや問題とされる行動が出てくるとルールや規律を持ち出して、
「これは、こうしなければ……」
という指導もしたくなるのですが、ちょっと違ったアプローチが効果がある場合もあるんじゃないかと思います。

むすびに 

今、こうして、原稿を書いている私も、実は、厳しい状況にあって。
心身ともにギリギリ状態にあります。
でも、そんなときこそ、と思って自分で考えたことです。
そして、実践してみました。
これでもだめなら、周りにHelpだ!と思っています。

皆さんは、どのように乗り切っていきますか?

川島 隆(かわしま たかし)

浜松学院大学 現代コミュニケーション学部 子どもコミュニケーション学科 教授
前浜松学院大学短期大部 幼児教育科 特任講師


2020年度まで静岡県内公立小学校に勤務し、2021年度から大学教員として、幼稚園教諭・保育士、小学校・特別支援学校教員を目指す学生の指導・支援にあたっています。幼小接続の在り方や成長実感を伴う教師の力量形成を中心に、教育現場に貢献できる研究と教育に微力ながら力を尽くしていきたいと考えております。

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