2021.10.07
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国語科における文学作品の新たなカリキュラム設計「国語科の授業における問題点」(第1回)

連載1回目は、「国語科の授業における問題点」について紹介します。
皆さんの授業は、こういった問題に陥ってはいないでしょうか?

明石市立錦が丘小学校 教諭 川上 健治

魅力的な学習課題を提示すること

初めまして。今期も連載させていただくことになりました、明石市立錦が丘小学校の川上健治です。この日誌では、主に「国語科教育」のことについて触れていきたいと思っています。関心のあるテーマは「魅力的な学習課題」です。それは、単元全体もそうですし、1時間単位の授業においてもそうです。SNSやゲーム機器が発達して、子どもの周りにはそういった機器が当たり前のように身近にある昨今、なかなかアナログで面白さを見出していくことは困難になりつつあります。それは、学校教育でもそうです。「YouTubeを見ていたほうが面白いのに、何でいちいち文学作品を読まないといけないの?」といった具合でしょうか。

そうした時代にあるので、やはり、「学習課題」が魅力的でないと、子どもたちも学ぶ意欲が湧きません。当たり前ですよね。何もせずとも、興味をひくものが周りにはたくさんあるのですから。教師は、そういったものに負けないような魅力的な学習課題を提示し、子どもたちを授業に惹きつけなければなりません。授業以外にも膨大な仕事量を日々抱えて教師にとっては、それは至難の業です。この日誌は、そんな先生方の一助になればと思っています。

それでは、今期の1回目なので、まずは、今現在、国語教育が抱えている問題点を2点指摘しようと思います。

新学習指導要領と内実の差

現代には、OECD(経済協力開発機構)によって実施されるPISA(Programme for International Student Assessment」)の調査やIEA(国際教育到達度評価学会)によって進められているTIMSS等の国際的な大規模調査が存在している。また、国内に目を移せば、文部科学省による「全国学力・学習状況調査」や都道府県の教育委員会による「地方学力テスト」等があり、盛んに学力調査が行われている。
石田智敬氏は、これらの学力調査には、近年ある傾向性や質的な変化がみられるとしている(『学力テストと授業づくりの関係をどのように構想するか』)。例えば、PISAは、「知識の有無ではなく、もっている知識を活用し、実際の問題に対応できる力」を対象とし、また、国内の全国学力・学習状況調査においても、「単に知識の有無を問うのではなく、『思考力・判断力・表現力』を問うような問題も出題される」ようになっている。今後実施される大学入学共通テストでも、同様の傾向を見出すことができるとしている。つまり、国内外問わず、この時代に応じた学力を求めようとしていることが分かる。

それでは、学校現場では、その時代に対応した教育を施すことができているのかを考察していく。国語科においては、従来、「話すこと・聞くこと」「書くこと」「読むこと」及び〔伝統的な言語文化と国語の特質に関する事項〕という、3領域1事項に分けられていたものが、平成29年版学習指導要領では〔知識及び技能〕と〔思考力・判断力・表現力等〕という大きく2つの領域に変更された。詳しくみてみると、例えば「読むこと」に関して比較すると平成20年版学習指導要領では、「解釈」の後に「自分の考えの形成」となっていたが、平成29年版学習指導要領では、「考えの形成」の前に「精査・解釈」が入ってきている。
そして、この「精査・解釈」には、例えば第3学年及び第4学年では、「登場人物の気持ちの変化や性格、情景について、場面の移り変わりと結び付けて具体的に想像すること」という指導事項があり、続けて「場面の移り変わりと結び付けて具体的に想像するとは、(中略=論者)複数の場面の叙述を結び付けながら、気持ちの変化を見いだして想像していく必要がある」(『【国語編】小学校学習指導要領(平成29年告示)解説』)という国語科の「読むこと」に関する固有の知識・技能を明示している。また、言語活動例としては、「物語の感想を述べ合う・伝え合う」というところで新旧の学習指導要領で大差はない。

ここまでみてきたように、平成29年版学習指導要領では、国語科固有の知識・技能が明示され、言語活動例も従来のものから引き継ぎ指導事項と分けて記述されている。しかし、内実は、示されている言語活動例が、指導過程で獲得した知識・技能をじゅうぶんに活用でき、なおかつ、学年全体を包括するようなものになっているかどうかは不明瞭である。また、「感想を伝え合う」や「新聞づくりをする」等の言語活動が、児童にとって「なぜその活動をしなければならないのか」「これから生活をしていく上で自分にとって何の利益があるのか」を切実に考えられるものにはなっていないのが現状である。

学習意欲につながる学習課題が必要

こういった言語活動を行うことで、児童の国語科に対する「学習意欲」の向上は望みにくい。
ここでいう「学習意欲」について鹿毛雅治氏(2013)は、「学ぼうとする心理現象である」(『学習意欲の理論』鹿毛雅治,金子書房)と定義し、櫻井茂男氏(2020)は、「自発的に学ぼうとする意欲のこと」(『学びの「エンゲージメント」 主体的に学習に取り組む態度の評価と育て方』櫻井茂男,図書文化社)と定義している。つまり、児童自身がその学習に対して有意味であると理解し、学習へ能動的に向かうということである。また櫻井は続けて、自ら学ぶ意欲には「①開発的な学習意欲、②達成への学習意欲、③向社会的な学習意欲、④自己実現への学習意欲」の4つが下位に位置づく学習意欲として存在していると述べている。

前述したように、児童にとって学習課題が「なぜその活動をしなければならないのか」「これから生活をしていく上で自分にとって何の利益があるのか」を切実に考えられるものになっていなければ、櫻井氏が述べている「①開発的な学習意欲」や「②達成への学習意欲」「④自己実現への学習意欲」を感じられない。そうなれば、児童の文学に対しての学習意欲の向上は望めない。
現に、2012年のPISA調査や平成31年度全国学力・学習状況調査の結果では、学力は向上傾向にあるものの、「国語は好きですか」という質問に約3割以上の児童が否定的な回答をするなど学習意欲に関しては低位にとどまっており、いまなお解決すべき課題として現存している。

まとめ

国語科の授業における問題点(図は筆者作成)

以上、述べてきたように、問題の所在としては、

①言語活動=単元を貫く学習課題が自分事として捉えられ、児童が有意味であると感じられるようなオーセンティックな学びになっていないこと
②「なぜこの文学作品を読むのか」と児童が学ぶ意義を感じられずに学習意欲の向上が望めないこと

の2点にあると言える。

次回以降は、この問題点について、先人たちがどう克服しようとしてきたのか、そして、今後どう克服しようとできるのかを紹介していこうと思います。今期もよろしくお願いします。

川上 健治(かわかみ けんじ)

明石市立錦が丘小学校 教諭
クラスの全員が楽しく学び合い「分かる・できる」ことを目指して日々授業を考えています。また、様々な土台となる学級経営も大切にしています。

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