2022.02.22
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国語科における文学作品の新たなカリキュラム設計~「逆向き設計」論に基づく「ゆうすげ村の小さな旅館」の実践提案2~(第8回)

今回は前回の流れから引き続き、実践報告をしたいと思います。
主に「初発の感想」と「パフォーマンス課題」について取り上げています。

明石市立錦が丘小学校 教諭 川上 健治

『ゆうすげ村の小さな旅館』

今回は、具体的実践として「逆向き設計」論に着目しながら考えた「ゆうすげ村の小さな旅館」について紹介します。前回に引き続き第2弾ですが、今回は実際に授業を行った実践報告をしたいと思います。

前回の指導案を見て分かる通り、今回の「本質的な問い」を「人間と自然、動物との良好な関係性とは?(文学的認識力)そのことについて、作者の散りばめられた仕掛けをどう関連づけて想像的思考力を働かせられて読みとれるか。(想像的思考力)」という2点に設定した。
そして、この「本質的な問い」を考えさせるための課題である「パフォーマンス課題」は「あなたは、プロの少年作家です。最近、読む絵本がなくなって退屈している先生の子ども(6歳)から『面白い物語を作ってください』という依頼がありました。そこで、今まで学習した物語の構成(導入―展開―山場―終結)と作者のテーマ、本単元で学習した『仕掛け』の3つの知識を使って、物語を創作してください。」と設定した。

第一次「初発の感想」

実際の指導過程は、第一次に「初発の感想」を書かせた。この「初発の感想」には留意する点がある。鈴木(1986)は、「感想を書くことによって浅薄な感動の固定化をもたらす危険性をはらむ。ほんとうの感動は言葉にならない場合もあり、それを無理に書かせると、ありきたりの感想、感動の現れない硬直した感想を書くことになりやすい。これが感想を書くことの一番の問題点であろう」[i]と述べている。
石丸(2014)も、「現在の指導の実態としては、教師が範読をし、子供たちが受動的にそれを聞き、その後、おきまりのように初発の感想を書いてというのんびりとした展開になることが多い。少なくとも必死に考える第1次第1時が行われているのを目にすることはほとんどない」[ii]とし、続けて「通読段階での最も一般的な方法である初発の感想について は、(中略)今も非常に多くの授業で行われている。自由記述だったり設問記述だったりと多少のバリエーションはあるが、子供たちが能動的に活動するものにはなっていないのが現状である」[iii]と述べている。
私自身もこの両者の指摘にあるおきまりのように初発の感想を書かせていた経緯があった。


初発の感想を基に第二次に活かす

従って、今回は、「何のために書かせるか」という教師側の目的意識に焦点を当て、取り組んだ。それは、即ち、初発の感想を基に第二次に活かしていくということだ。これは、指導案を作成している段階から毎時の中心課題を考えてはいたが、それを子どもの感想に寄せていったというイメージである。
例えば、第7時の中心課題を「連想するものは『うさぎ』でなければならなかったのか?」と考えていた。しかし、子どもの初発の感想から「なんで耳のよく聞こえる魔法だったのだろう?」という意見が多く出た。
そこで、授業でも、「こういう感想が多かったんだけれど、どう思う?」というように課題を変えていった。ここで注意しなければならないのは、子どもの感想を基に課題を変える場合、それによって教師側のねらいも達成できるものであるかどうかである。
今回は、作者の「自然や動物をも大切にしたいという想い」を読みとらせたいがための中心課題であった。これが、子どもの感想で課題をつくってもたどり着くところは同じであると判断した。

このように、同じ目的地にたどり着くのであれば、教師側が勝手に作った中心課題よりも、子どもたち側から出てきた課題のほうが取り組む意欲が湧くのは当然である。
大槻(1992)は、「『学び手の興味・関心・必要に根ざす』といっても、それははじめから子どもたちの中にあるのではない」[iv]という立場を取りつつ、「『学び手の興味・関心・必要に根ざす』ということは、学習者にとってその学習が必然のものであるように仕向けるということでもある。そのような『場』を設定することが、この場合の指導なのである」[v]と述べている。
この指摘は、児童の「興味・関心」を出発点という視点だけでみていると「楽しいが学びなし」「活動あって学びなし」の状態に陥ってしまう為、指導者側からの学力向上という視点からも指導過程を考えなければならないことを示唆している。
岡屋(1992)は、このことについて「単元学習は、子どもの問題意識と教師の教えたいことの接点に成立する」[vi]と表現している。これらの見解からも、児童の初発の感想を何でも取り上げるのではなく、教師側の意図と重なるものを精査していく必要性を示唆していると考えられる。

第三次、実際に「パフォーマンス課題」に取り組む

また、第三次では、実際に「パフォーマンス課題」に取り組んでもらった。「先生の子ども(6歳)に」という目的意識をより具体的にもたせることが今回の「パフォーマンス課題」のみそである。前回の日誌に「児童は、先生の子どもが実際に動画に出てきて、自分たちに『面白いお話を創って』と呼びかけられた段階で、架空の人物や関りの薄い本学校の1年生等よりも、より前向きな気持ちになると考えられる」と書いた。
実際にこれを試してみると、子どもの授業後のアンケートからは、「絶対書こうと思った」や「自分が面白くてもだめだから」などの記述が散見されたり、また、実際の物語創作の原稿で、例えば、読み方を横に書いていたり、丁寧な字で書いていたり、場面分けを分かりやすい言葉で書いていたり、授業中に「先生の子どもどんな生き物が好きなの?」と質問してくる児童がいたりというところに如実に表れていた。
このことからも、「パフォーマンス課題」を提示する際も、ただ単に提示するだけではなく、より子どもが具体的に目的のイメージが湧くような提示の仕方が重要になってくる。

以上、今回は、「初発の感想」と「パフォーマンス課題」の大きく2点について書いてきました。これで、簡単ですが実践報告を終わります。また次回からは違う話題を考えていきたいと思います。

[ii] 石丸憲一「文学の授業における、いわゆる三読法を見直す:通読段階での読みの指導を中心に」創価大学教育学部・教職大学院『教育学論集』、第65巻、2014年、p.23

[iii] 同上書、p.24

[iv] 大槻和夫「国語の学力と単元学習」日本国語教育学会『ことばの学び手を育てる 国語単元学習の新展開 Ⅰ理論編』東洋館出版社、1992年、p.46

[v] 同上。

[vi] 岡屋昭雄「三 国語教室の現場では、『国語単元学習によってことばの力は育つか』という素朴な疑問を聞くことがあります。この声に対する先生のお考えは」日本国語教育学会『ことばの学び手を育てる 国語単元学習の新展開 Ⅲ 小学校中学年編』東洋館出版社、1992年、p.272

川上 健治(かわかみ けんじ)

明石市立錦が丘小学校 教諭
クラスの全員が楽しく学び合い「分かる・できる」ことを目指して日々授業を考えています。また、様々な土台となる学級経営も大切にしています。

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