2026.10.11
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探究を探究する―「やってみないとわからない」4回目の試作品づくり(vol15)

前回は、5年生総合的な学習の時間「究極のひよカフェ」の実践として、1時間の授業における子どもの姿を中心に実践を紹介しました。
今回は、4回目の試作品づくりに向けた子どもたちの姿をご紹介します。
「究極のひよカフェ」に向けて、活動がどのように進展していくのか、子どもたちの変容の過程を追いながら考えていきたいと思います。

兵庫教育大学附属小学校 箱根 正斉

黒大豆を育てていたAさん「黒大豆を使いたい」

「先生、黒大豆を使いたいんやけど」

Aさんから担任に相談がありました。しかしこのときには、すでにメニューも決まり、3回目の試作品づくりも終えた後でした。担任はその思いをクラス全体に共有しました。

「えっ?このタイミングで?料理はもう決まってるよ」
「もっと早く言ってよ」
と、他の子どもたちからは困惑や反対の声が挙がりました。そこで担任も自分の思いを子どもたちに伝えます。

「究極に向けて、自分たちでつくったものをカフェに出したいという流れで進めてきたけれど、どうだろう?」

すると、BさんとCさんが言葉を返してくれました。

「Aさんの気持ちは理解できるし、自分たちでつくったものを出したいという思いは全然おかしくない。むしろ正しいと思うよ」
「何をつくろうって考えてるの?」

話し合う中で、何ができるかをみんなで考えました。

そしてCさんから、
「プリンはどうかな?」
とアイデアが出ました。

AさんやDさんは話し合いながらプリンをつくってみたい仲間を募集し、最終的に「いちごソーダ」グループの仲間と一緒に取り組むことになりました。

「自分たちの育てた黒大豆を使いたい」
この思いを担任として大切にしたいと考えました。一人ひとりがやりたいことをやり切れるだけの経験を実現させること。これがきっかけとなって、いちごソーダチームの活動も変わってくるかもしれない。
そう願いを込めながら、担任はこの挑戦を支えることを決めたのでした。

4回目の試作品づくり

ひよこのクレパン(クレープ+パンケーキ)、大根とブロッコリーのスープ、いちごソーダ、そして新たに加わった「黒大豆のきなこ豆乳プリン」の4種類のメニューが決まり、本番前最後となる4回目の試作品づくりを行うことにしました。

ひよこのクレパン

ひよこのクレパンチームでは、主に以下の4つの新しい工夫を取り入れて調理に臨みました。

  • 米粉と豆腐の量を増やす。
  • チョコペンを市販のものではなく、板チョコから自分たちでつくる。
  • 豆乳クリームをつくって甘みを加える。
  • 厚みの出る型に入れて焼く。

まず豆乳ホイップをつくろうと試みましたが、混ぜ合わせるのが想像以上に大変で、なかなかクリーム状になりませんでした。
途中で他のグループの子も助っ人に入って混ぜてくれましたが、豆乳ホイップにはならず、甘さも出せませんでした。

また、パンケーキの生地は米粉を多く入れたためパサパサ感が出てしまい、おいしいとは言えずうまくいきませんでした。
一方で、クレープとパンケーキの食感の違いについては「おいしく感じる」と捉えた子もいたようで、一定の成果があったようです。

さらにチョコレートについては、乳成分の入っていないアレルギー対応のものを使用しました。これをチョコペンに加工しようと試みたものの、すぐに冷えて固まってしまい、扱い方にとても苦労していました。
さまざまなグループの子が協力し合ったことで、次への改善点が明確になった時間となりました。

大根とブロッコリーのスープ

大根とブロッコリーのスープチームでは、次の2点を新しく試していました。

• 大根を薄くいちょう切りにする。

• 味付けについて、3種類(①ベーコン・バター②ベーコン・バター・醤油③ベーコン・バター・醤油・粉チーズ)を比べて食べる。

ここではDさんが活躍します。大根のいちょう切りを交替しながら進めていましたが、他の子はなかなかうまく切れません。
そんな中、Dさんは手先をうまく丸めて、手際よく包丁を使って見せました。また、味見も手慣れており、遠慮しがちな子どもが多い中で「おいしい」「おいしくない」をはっきりと言える存在でした。

「究極」を目指すうえで、この子の素直な感想や意見は欠かせないものとなっていました。

味付けに関しては、全体的にかなり薄味に仕上がりました。コンソメの素を少ししか入れておらず、味がほとんどしなかったのです。
薄味だったため、あとからコンソメの素を足したり、醤油をかけたりして食べる姿が見られました。本番までにどのように味を仕上げてくるのか、今後の改善に注目したいところです。

いちごソーダ

いちごソーダチームでは、次の2点に新しく取り組んでいました。

  • シロップをつくる。
  • シロップと炭酸水の割合を工夫する。

Eさんは前回と違い、今回は加熱する前にいちごを切ってシロップにしようと考えました。さらに、果汁をとった後に残ったいちごにも砂糖をまぶし、食べられるように果肉の再利用を考えていました。

しかもEさんは、その果汁をとった後のいちごを、黒大豆のきなこ豆乳プリンの上に乗せて使おうとひらめいたのです。その場で思いつき、形にしていく創造的な力には素晴らしいものがあると感じました。

またFさんは、友達が調理している間に洗い物をほとんど一人で終わらせていました。自分にできることを考えて自ら進んで取り組む姿も、実に素晴らしいものでした。

対象(材)への向き合い方は、直接調理することだけでなく、後片付けをすること、よりおいしい工夫を凝らすことなど、子どもによって多様です。
自分ができることを見つけ出し、対象と関わっていく――その子なりの向き合い方や活動の仕方を見出し、成長を促していくことの大切さを改めて実感しました。

黒大豆のきなこ豆乳プリン

 

黒大豆のきなこ豆乳プリンをつくる子どもたち

黒大豆のきなこ豆乳プリンチームでは、まずレシピを見ながらフライパンで焦げないように黒大豆を炒め、ミキサーにかけてきなこを作りました。ここまでに45分もの時間を費やしました。

ここからプリンづくりに入ると担任が思っていたところ、Eさんがネット検索を見ながらこう言いました。

「ネットで調べたら、固まるまで6時間かかるって書いてある。無理や……」
そう言って諦めかけていたのです。

そこで担任は、
「やってみないとわからないんじゃない?少しだけ作ってみたら?」
と声をかけました。

FさんとJさんは悩みながらも、諦めずに少量だけつくってみることにしました。豆乳を電子レンジで温め、砂糖とゼラチンを入れて混ぜ、冷蔵庫へ入れます。
すると、なんとわずか30分でプリンが固まったのです!ネットには「6時間」とありましたが、見事に成功しました。この様子を見て、EさんもJさんも驚きと歓喜の声を上げました。

とにかくプリンが無事に完成し、テンションが急上昇したチームの子どもたち。きなこに砂糖を混ぜてプリンの上からかけ、さっそく試食しました。

「めっちゃうまいーーーー!」

Jさんから歓声が上がります。さらに、

「さっきのいちごの砂糖和えを上に乗せてもいいかも!」

と、さらにアレンジを試そうとする姿も見られました。

「やってみないとわからない」――Eさんは普段からインターネットで調べものをするのが得意で、ネットの情報から知識を得て学ぶことが多い子です。

実際、この豆乳プリンの簡単レシピも自ら動画を見つけてチームに共有してくれていました。情報をうのみにして動けなくなったというよりは、時間が限られていたため、もともとのいちごソーダに注力しようと判断した部分もあったのでしょう。

今回、実際に試してみたFさんやJさん、そしてその成果を目にしたEさんにとって、「実際に試してみないとわからない」ということを実体験を通して理解できた、価値ある学びとなりました。

その子の思いがふくらむために

今回は、4回目の試作品づくりに取り組む子どもたちの姿を紹介しました。
子どもたちの思いが膨らんでいく関わりとなるよう、教師として「やってみないとわからないよ」と背中を押す声かけを行いました。その結果、プリンが完成し、子どもたちの中に大きな達成感が生まれた活動となりました。

教師の関わり方に絶対の答えはありません。その子とともに「究極」を目指し、ともに活動し、歩んでいくことこそが何より大切なのだと感じています。

次回も、「究極のひよカフェ」に向けて追究を深める子どもたちの姿をご紹介していきます。

箱根 正斉(はこね まさなり)

兵庫教育大学附属小学校


個がくらしを見つめ、その個が育つことを考えて実践に取り組んでいます。個が立ち、協働し、探究する。個がくらしをつくり、個が生きる。
生活科・総合的な学習の時間を中心として、その個が自分の思いを膨らませながら、自らの願いを実現し、自己実現を更新していく。
そんな個の育ちを目指して実践しています。

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