探究を探究する―総合的な学習の時間における探究の実践、5年生「究極のひよカフェ」の夏休みの学び―(vol.7)
前回、5年生総合的な学習の時間「究極のひよカフェ」の実践について、一人ひとりの行動からその個らしさを捉えました。
今回は、2学期における学びの姿について、その個の思いがふくらみ、切実な問題を解決する中で探究する過程を描きます。
今回は、スイカづくりに取り組んだAさんの様子を中心に紹介します。
※文中に出てくる「個」という表現は、そこにいる子どものことを指します。その場にいるのは、その子だけなので、個という表現を使っています。
兵庫教育大学附属小学校 箱根 正斉
スイカを育てるAさんの取り組み
スイカがやっと実った

朝の会「スイカが無事実った」
Aさんは、スイカを育てることにしました。苗を植え替える際には、畝をつくりました。畝づくりでは、水はけがよくなるように考え、畝に高低差をつけて工夫して排水できるようにしました。そして、ネットを張って空中につるして、スイカの実を育てようと考えました。
そして、Aさんは、朝の会で以下のように自分の思いを語っていました。
「すいかが無事実った。大きく育ってくれるといいなあ。最低でも30cmはいきたいな」
「無事」という言葉から、大事に育てていたという気持ちも伝わってきます。このように、活動への思いはどんどんふくらんでいきました。
さらに、別の子もスイカを人工授粉させてスイカの実ができるように一緒に取り組んでいました。そのことも朝の会で報告します。
こうしてスイカを育てる子どもたちは、スイカがいくつかできるように毎日のように畑に通い、水やりや追肥、人工授粉に取り組んでいました。
そのように関わる中で、うまく育たなかったスイカの実が茶色くなっていることにも気づき、朝の会で伝えていました。朝の会で共有することで、スイカを育てる子だけでなく、クラスの仲間との対話を通して原因を考え、どのように育てたらいいか考えながら進めていました。
せっかく実ったスイカがちぎれてしまった

ちぎれたスイカの実
活動に取り組む中で、事件が起こります。人工授粉をし、少しずつ大きくなってきたスイカの実が途中でちぎれてしまったのです。それを見た子どもたちは、とてもショックを受けていました。
Aさんは、
「胸がはりさけそう」
と自分の思いを語っていました。
自分一人が育ててきたスイカというよりも、仲間と一緒に頑張ってきた思いがあってそのような言葉がでたのでしょうか。Aさんの中にある思いが見えないながらも、感じていることを知りたいと思いました。
その後も水やりを欠かさず、粘り強く取り組む姿がありました。
夏休み中も水やりを続けるAさん
Aさんは仲間にも呼びかけましたが、夏休み中ということもあり、なかなか人が集まりません。それでも、あきらめず一人でも活動に取り組みました。
Aさんは、
「2学期に収穫したスイカを使って、みんなで試作品をつくりたい」
と考えていました。
そのため、「収穫時期が早すぎると、傷んでしまってスイカが食べられない。2学期始業式の日を考えて、8月終わりのぎりぎりまで収穫時期を遅らせよう」と考えました。
仲間と楽しい活動を実現したい。その思いを実現させるためにスイカの育て方を調べ、収穫時期について考え、行動していました。スイカの収穫時期について、インターネットで調べた情報をもとに、つるや葉っぱの状態から収穫時期を考えて見事収穫することができたのでした。
その個の育ち
Aさんはこの活動から何を学んだのでしょうか。この個の育ちについて、考えてみたいと思います。
Aさんは、スイカを育てる活動に、粘り強く取り組んでいました。スイカの実がちぎれてしまっても、活動を止めることはありませんでした。また夏休みには、暑さを考えてみんなに活動を呼びかけ、自分も一生懸命作業していました。スイカを育てる活動を通して、自らの行為・行動を問い直し、日々考えていたように思います。
Aさんは1つの実が枯れてもスイカそのものは生きているのだと考えていたのではないでしょうか。スイカの生命について、できる実もあればできない実もあることに気付いたように思われます。また、一人でもやりきれる、探究するこの個の育ちも見ることができました。
また、「仲間といっしょにスイカを食べたい」「楽しいことをしたい」という思いから、スイカのつるや葉の変化を観察し、収穫する時期まで考えて活動することにつながっていました。
Aさんをつき動かすものは何か。仲間とともによりよいくらしを創りたい。そんな思いを感じました。そうした自分の願いが太くなってくると、探究する学びがより加速していくのだと思います。
どんなことにも挑戦したいAさん。その個らしさが周りの仲間に作用し、学びがより加速していくこととなっていくのです。
次回は、このAさんを中心に、育てて収穫したスイカをどうするか考えて活動していったのかを紹介したいと思います。

箱根 正斉(はこね まさなり)
兵庫教育大学附属小学校
個がくらしを見つめ、その個が育つことを考えて実践に取り組んでいます。個が立ち、協働し、探究する。個がくらしをつくり、個が生きる。
生活科・総合的な学習の時間を中心として、その個が自分の思いを膨らませながら、自らの願いを実現し、自己実現を更新していく。
そんな個の育ちを目指して実践しています。
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