2026.05.09
  • x
  • facebook
  • はてなブックマーク
  • 印刷

探究を探究する―子どもの「やりたい」から始まる総合的な学習の時間の実践記録―(vol.10)

前回は、5年生総合的な学習の時間「究極のひよカフェ」の実践について書きました。試作品づくりを振り返り、冬に植物を育てて活動に取り組む子どもたちの学びの姿を伝えています。
今回は、スイカチームで活動する子どもたちの姿を紹介したいと思います。

兵庫教育大学附属小学校 箱根 正斉

5年生「究極のひよカフェ」 10月

 「究極のひよカフェをしたい」という思いを実現しようと日々活動する子どもたちです。今回は、試作品づくりを終えて振り返り、冬でも植物を育てて収穫しようとする姿を紹介します。

冬に植物を育てる挑戦

どうする、スイカチーム。命と向き合う子どもたちの話し合い

休み時間にスイカチームが会議をしていました。その終わりの時刻、Aさんが担任のもとへ相談にやってきました。

Aさん「僕以外、スイカを作るっていうんです。時期的にもスイカは厳しいと思って、枯れてしまうとかわいそうだし」

スイカチームの他の子たちは、全員「スイカを育ててみる」との意見でした。そのまま互いに譲らないまま時間がきてしまったそうです。そのため、その日の昼休みにも、臨時のスイカ会議を行うことになりました。その話をきいて担任もスイカ会議に同席することにしました。

Aさんは、夏休みにスイカを育てていました。毎日水やりを行い、一生懸命育てたかいもあって、スイカを収穫することができました。9月に調理実習をした際には、食べたときに出た種も大事にとっておく姿も見られました。種も収穫できたので、次に育てることを楽しみにしているようでもありました。そんなAさんは、話し合いの中で次のように話していました。

Aさん「育てないというわけではなくて、育てられるような時期になったら育てる。可能性が低いなら、また違うときに育てたい」

このように考えるようになったきっかけは、家の人にスイカを育てると話したところ、「夏に育てる果物だから現実的に難しい。現実を見たほうがいいんじゃない」 とアドバイスをもらったことでした。
このような理由から、Aさんは頑なにスイカを育てることに反対していました。そして、その話し合いの中でずっと黙っているBさんがいました。普段はよく話すBさんの様子を見ていたCさんが、声をかけました。

Cさん「周りのことを思って、自分の気持ちを押し殺さんでいいんやで。みんなの前で言っていいんやで」

そうすると、Bさんはやっと自分の気持ちを語り始めました。

 Bさん「僕は、簡単にあきらめるんは、はっきり言って嫌いや。最初から枯れるのを考えてやるより、自分でやるほうがいい」

挑戦したい気持ちをAさんに伝えたのでした。話し合いは平行線のまま昼休みも終わりました。その後、担任がAさんに再度話を聞くと、

Aさん「難しいってことより、種を植えてスイカが枯れるとかわいそう。命やから」と語っていました。

実現可能かというより、スイカを一つの命として捉えているようにも見えました。この話し合いで、Aさんは涙を流し、スイカを育てることと向き合い、本気で考えていました。ここまで話し合った結果、Aさんはどうするか、後で結論を出すことにしました。 

その日の放課後、Aさんは担任のもとにやってきました。
Aさん「先生、やっぱりスイカを育ててみます」
スイカチームの仲間と一緒に育てることに決めたのです。

自分の中で葛藤があったものの、育てることを選択したAさん。さらにスイカチームは、冬でも育つ大根とブロッコリーも育てることにして活動は進んでいきました。

Aさんは真剣に対象と向き合い、本気で結論を出しました。夏休みに人一倍世話をして取り組んだAさんだからこそ、ここまで悩んだのだと思います。可能性は低くても仲間とともに挑戦するという道が究極へと続いていくのかもしれません。

大根とブロッコリーも育てる

スイカチームは、大根とブロッコリーも育てています。大根の種を植えて霜が降りないように、不織布をかけました。そして、地温が高くなるようにマルチも敷きました。また、寒暖差に耐えられるように、2つあったブロッコリーの苗のうち1つを畑に植え替えて、枯れないか試して観察し、活動を進めていました。

一方で、スイカは畑に苗を植え替えましたが、枯れてしまいました。今はプランターに植え替えて、教室で育てています。たくさん悩みながら、活動しています。スイカチームは、まず計画を立てて進めることを大事にしています。その都度、仲間と相談し、よりよい答えを考えながら協働して探究する姿が見られています。

このような自らの思いや「仲間とよりよくなりたい」という願いの実現に向けて活動する姿が、探究する学びへと続いていくのだと思います。

メロンの鉢から大根の芽が出た

メロンを植えている鉢から芽が出ました。しかし、よく見るとそれは大根の芽でした。メロンチームはどうするか考え、大根を育てようとしました。しかし、それをきいたスイカチームは納得がいかない様子でした。

 Bさん「メロンの芽も出ていないのに、大根を育てるのはおかしい」
 Cさん「一言も『育てていい?』とか許可をもらっていない」
 Aさん「もともとスイカチームが先生に言って、育てようとしているものだから、ちゃんと言ってほしい。メロンは育ってなくて、大根も同じようになるのではないの」

話し合いの時間も限られているため、共同編集ツールに意見を記入してもらうようにしました。以下、それぞれの意見です。

◆スイカチーム

・もともとスイカチームが大根を育てることになっていた。間違えて芽が出たのなら、返してほしい。
・自分たちの手柄を取られているのと同じではないか。解決方法は第三者に決めてもらうのがいいと思う。
・メロンが育っていないのに、大根を優先するのはおかしい。

◆メロンチーム

・朝の会で「大根の苗ができた」と報告したのに、大きくなってからどうして返せと言うのだろうか。
・種が余っているのに、どうしてもらったらいけないのか。
・どうして他のチームに大根を育てさせたくないのか。
・中庭の花壇にスイカと大根とブロッコリーを植えかえたとき、入りきるのだろうか。
・「一人ひとりの意見を大事にする」と言っていたから、大根の種をあげてもいいんじゃないかな。
・今まで育ててきたメロンチームの努力を返したくない。


話し合いの中では、メロンチームから「メロンはもう間に合わないから、大根を育てるしかないやん」という言葉がありました。その一言に対し、「メロンはどうするのか」と言及する言葉がクラスの子どもたちから出てきました。

この言葉からは、現実的にどうすればいいか考えていると捉えることもできます。「植物の命を大事にしているのか」と問い直しているようにも感じました。メロンの世話を継続してできないなら、大根の世話も同じようになってしまう。そう考えていたのでした。

次の日の朝の会にも話し合いが行われました。メロンチームは、メロンを育ててちゃんとできるようになったら、大根も育てるということとなりました。

この一件で、スイカチームから「自分たちで責任をもって育てる」という覚悟みたいなものを感じました。仲間から、自分たちの活動への向き合い方を問い直す時間となったのでした。

冬に果物を育てて究極に迫る

今回は、スイカチームの活動や仲間との関わりについて紹介しました。冬に植物を育てることについての難しさと、日々向き合っています。

次回は、冬にいちごを育てる子どもの姿を紹介します。「究極のひよカフェ」に向けて、活動がどのように進展していくのか。次回もどうぞよろしくお願いします。

箱根 正斉(はこね まさなり)

兵庫教育大学附属小学校


個がくらしを見つめ、その個が育つことを考えて実践に取り組んでいます。個が立ち、協働し、探究する。個がくらしをつくり、個が生きる。
生活科・総合的な学習の時間を中心として、その個が自分の思いを膨らませながら、自らの願いを実現し、自己実現を更新していく。
そんな個の育ちを目指して実践しています。

同じテーマの執筆者
  • 酒井 淳平

    立命館宇治中学校・高等学校 数学科教諭(高校3年学年主任・研究主任)

  • 西村 健吾

    米子市立福米東小学校 教諭

  • 川村幸久

    大阪市立堀江小学校 主幹教諭
    (大阪教育大学大学院 教育学研究科 保健体育 修士課程 2年)

  • 川島 隆

    浜松学院大学地域共創学部地域子ども教育学科 教授

  • 今村 行

    東京学芸大学附属大泉小学校 教諭

  • 安井 望

    神奈川県公立小学校勤務

  • 山本 優佳里

    寝屋川市立小学校

  • 朝倉 しおり

    東京都内公立中学校 教諭

  • 伏木 陽介

    花園中学高等学校 社会科教諭

  • 角田 直也

    岡山県矢掛町立小田小学校 教諭

  • 川崎 知子

    合同会社Toyful Works 代表社員・元公立小学校教員

  • 有村 竜希

    山口大学教育学部附属山口小学校

ご意見・ご要望、お待ちしています!

この記事に対する皆様のご意見、ご要望をお寄せください。今後の記事制作の参考にさせていただきます。(なお個別・個人的なご質問・ご相談等に関してはお受けいたしかねます。)

この記事に関連するおススメ記事

i
pagetop