探究を探究する―試作品づくりを通して探究が深まる子どもたちの姿―(vol.8)
前回は5年生の総合的な学習の時間「究極のひよカフェ」の実践について、一人の児童の姿からその子らしさについて紹介しました。
今回は、1学期から2学期にかけて、試作品づくりに没頭した子どもたちの学びの姿を紹介します。
「究極のひよカフェを開きたい」という自分たちの願いを実現しようと、日々活動する中で、クレープづくりやスイカを使った試作品づくりに取り組みました。
※文中に出てくる「個」という表現は、そこにいる子どものことを指します。その場にいるのは、その子だけなので、個という表現を使っています。
兵庫教育大学附属小学校 箱根 正斉
クレープづくりに取り組む中で見られた子どもの学びの姿
1学期の終わりに、いちごを使って試作品づくりを行いました。Bさんは、クレープづくりに挑戦しました。分量を正確に量り、火をつける前に油を敷き、生地をフライパンいっぱいに広げて焼き始めました。しかし、生地をひっくり返そうとしたその時です。一緒に活動していたKさんは、 「先生、助けて!」 と、大きく広がりすぎた生地を前に助けを求めてきました。
しかし、担任は「失敗もまた学びになる」と考え、あえて手を貸しませんでした。すると、フライパンを持つBさんが、思い切って生地をひっくり返したのです。見事成功した瞬間、いつの間にか集まってきていたクラスの仲間から、自然と拍手が沸き起こりました。
Bさんのその日の振り返りには、そのことが綴られていました。さらに、1学期の振り返りにも、その時のことが次のように書かれていました。
「私は、友達といっしょにクレープの生地を作りました。クレープの生地を焼く時に、クラスのみんなが寄ってきて、応援してくれました。この一学期でこんなにクラスのみんなと親しくなったんだなと思いました。この一年でどれくらい成長するのか楽しみです」
仲間との関わりの中で生まれたあの瞬間の高揚感は、Bさんにとって非常に大きな出来事となったようです。2学期以降の活動や仲間との生活に期待を膨らませる姿が感じられました。
スイカを使った試作品づくりに広がる探究の過程
Aさんを中心に育ててきたスイカが、大小合わせて4個収穫できました。一番大きなものはそのまま試食し、残りの中くらいのスイカ2個を試作品づくりに活用することにしました。 子どもたちから出されたメニューは、「焼きスイカ」「スイカソーダ」「スイカゼリー」「スイカケーキ」の4つ。それぞれグループに分かれて調理が始まりました。
スイカゼリーチーム

工夫してゼリーを移す
人数が多かったため、中身だけを使う「果肉チーム」と、皮を器にする「丸ごとチーム」に分かれました。
果肉チームは、冷やすのに6時間かかることを知ると、Cさんが
「先生、何時から調理できる?」
と、尋ねてきました。
8時15分からできることを伝えると、
「9時にできたとして・・・6時間だから、できるのが3時やわ」
と計算して、計画を立てていました。
当日の朝になると、Dさんは、登校するなり、
「材料見とくから、家庭科室にいっていい?」
とやる気に満ち、積極的に活動に取り組んでいました。
目標は、8時半でしたが、協力して9時には調理を終えて冷蔵庫に入れていました。実際の活動でも、Cさんはゼリー液を器に移す際、お玉を受け皿にしてこぼれないよう工夫したり、周囲に指示を出したりとリーダーシップを発揮していました。
一方の丸ごとチームは、隠し味にレモン汁を入れる工夫をしました。けがをしていたEさんも、計量など自分にできる役割を見つけて協力していました。 結果として、9時に冷蔵庫に入れた果肉チームのゼリーは固まりましたが、スイカを器にしたチームのゼリーは固まりませんでした。固まらなかった理由として、器の違い、またはゼラチンを入れるタイミングなどが考えられましたが、何が原因かはっきりしませんでした。レシピ通りでもうまくいかない――。この「なぜ?」という体験を、今後の学びにどう生かしていくかが重要になります。
焼きスイカチーム

スイカに竹串を刺す
焼きスイカチームは、栄養教諭の助言を受けながら、スイカを切り、竹串に刺してコンロで炙ります。しかし、スイカの重みで串が安定しません。そこで、串を2本にしたり割り箸に変えたりと、試行錯誤を繰り返しました。
後半には、クラスの仲間に「炙り体験」を実施する姿も見られました。試作品づくりを行う中で、カフェで行われるイベントのような活動へとなっていました。このような子どもの姿は、炙り体験といった参加型のイベントとして、今後立ち上がってくる可能性を感じました。究極のカフェについて、「ただ美味しいものを提供すること」から、楽しめる、落ち着くなど「楽しませる場」として捉え直す、重要な視点の芽生えだったと言えるでしょう。カフェの在り方を考える上で重要な立ち上がりとなる場面でした。
スイカソーダチーム

スイカの実を濾す
スイカを煮詰めて炭酸に入れる工程で、Gさんは目分量でドバドバと注いでいました。担任が「どのくらい入れるの?」と聞くと「適当」との返事。味見をして「炭酸を入れすぎた……」と呟くGさんに、Hさんが「割合が大事じゃない?」と助言する場面もありました。
理想の味(市販のサイダー)に近づけるには大量の砂糖が必要になるという気づきは、美味しさと健康面の折り合いをどうつけるかという、自分たちなりの「究極」を考えるきっかけとなるでしょう。
スイカケーキチーム
AさんとIさんは、スイカを混ぜ込んだ生地を使い、オーブンとフライパンの両方で焼き比べをしました。しかし、フライパンでは油を引かなかったり、生地が多すぎたりして焦がしてしまいました。 そこへ助っ人として現れたのが、クレープづくりで活躍したBさんでした。「生地を少なくしたほうがいいよ」とアドバイスしながら、手際よく小さなパンケーキを焼き上げました。
さらに、焼きスイカチームの他の子どもたちも、スイカケーキチームの洗い物を手伝ったり、アドバイスしたりして、協力して活動していました。全体的に、1学期の試作品づくりと比べ、格段に手際よくできていました。少しずつですが、その個らの育ちが見られています。
活動の中で表れたBさんのその個らしさと成長
Bさんは今回、クレープづくりと焼きスイカに取り組みました。
焼きスイカでは、竹串が折れてしまう課題に直面すると、状況を見ながら工夫を重ねていました 。また、スイカケーキのグループが生地を焦がしている様子を見かねて、自ら活動に加わる場面もありました 。Bさんは普段から料理教室に通い、スイーツを作ることが好きな児童です 。そうした経験を活かし、火加減を調節して生地を鮮やかにひっくり返したり、火が通りやすいように生地の量を考えたりすることができたのです 。
仲間との活動の中で、自らの良さを発揮したBさん 。その「個らしさ」が周囲に波及することで、クラス全体の「究極」に向けた探究は、より一層加速していくことでしょう 。
究極のひよカフェに向けた次の活動
次回は、試作品づくりを終えて、究極のひよカフェに向けて、活動がどのように進展していくのか。子どもたちの姿から見ていきたいと思います。

箱根 正斉(はこね まさなり)
兵庫教育大学附属小学校
個がくらしを見つめ、その個が育つことを考えて実践に取り組んでいます。個が立ち、協働し、探究する。個がくらしをつくり、個が生きる。
生活科・総合的な学習の時間を中心として、その個が自分の思いを膨らませながら、自らの願いを実現し、自己実現を更新していく。
そんな個の育ちを目指して実践しています。
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