2026.09.05
  • x
  • facebook
  • はてなブックマーク
  • 印刷

探究を探究する―「究極のひよカフェ」3回目の試作品づくり(vol.13)

今回は、「究極のひよカフェ」に向けて3回目の試作品づくりに取り組む子どもの姿を紹介します。
活動の進展に伴い、その子がどのように変化していったのか、その変容の過程を追っていきます。

兵庫教育大学附属小学校 箱根 正斉

「究極のひよカフェ」に向けて3回目の試作品づくり

「究極のひよカフェ」のメニューは、ひよこのクレパン(クレープ+パンケーキ)、大根とブロッコリーのスープ、いちごソーダの3種類に決まりました。

そして今回は、3回目の試作品づくりです。
活動は給食後の5、6時間目に行いました。下校時刻があるため、13時から15時までの時間を設定し、子どもたちに枠組みを提示しました。
前回は時間が足りず慌てていた姿を見ていたため、担任としては「早く準備したほうがいいのでは」と思っていました。しかし、給食を食べ終わっても子どもたちは動きません。

そこで何時から活動を始めるのか尋ねてみると、「13時30分からで十分間に合う」との返答でした。担任は「間に合わなくてもいい。それも学習だ」と考え、そのまま見守り、活動を子どもたちに委ねることにしました。

すると、その予想はいい意味で裏切られました。なんと、どのグループも時間内にすべての工程をやりきったのです。
準備から調理、片付け、振り返りを行うだけでなく、教室での帰りの会まで自分たちで進める姿が見られました。
自立して自分たちで活動や生活をつくっていく――そんな子どもたちの成長を実感した出来事でした。

3回目の試作品づくりにおける子どもの姿

ひよこのクレパン Aさんの姿から見る追究

クレープとパンケーキをつくり、ひよこに見立てて提供しようと考えた「クレパン」グループ。普段から家で調理をする子どもが多く、手際もすごくよかったです。

薄力粉や強力粉、米粉を使って生地をつくるのですが、ある子はだいたいの感覚で量をはかって調理していました。決められた分量でなくても味はあまり変わらないと思っているようでした。

突き詰めていけば味は変わるはずですが、そこまでの意識の高まりはまだ感じられませんでした。
大人は「グラム単位でメニュー化し、よりおいしくしようとする姿」へと高まってほしいと理想として考えがちです。しかし、子どもの実際の姿と求める理想にはギャップがあり、それを引き出す難しさを改めて感じました。

そんな中で、Aさんの姿にはすごさを感じました。この子は小さいころからお菓子教室に通い、普段から料理をしています。冬休みにも家でクレープづくりを行い、追究してきた子です。そのため、料理の技能が非常に高いのです。

粉を入れて水と混ぜる際、はじめはダマができて滑らかになっていない状況でした。担任は「このダマがざらざらした食感になるかも」と予想しながら見ていました。
しかし、Aさんはボウルを持ち出し、ヘラでこしながらダマをなくしてさらさらの生地をつくり、冷やすことで見事なクレープ生地をつくり上げたのです。
裏ごしする技術、この子のスキルによる追究の姿が、「究極」に向けた高い品質を生み出すのだと感じました。

その後の焼く工程でも、フライパン選びにこだわりを見せました。四角い玉子焼き用のフライパンしか見当たらず、Bさんが「こっちでいいんじゃない?」と言うものの、Aさんは丸いフライパンを探します。

2学期に経験したスイカのパンケーキづくりの際、四角いフライパンを使用したら横のフチに生地がくっついてうまくいかなかった経験があったからです。きっとその経験を思い出していたのでしょう。
また家でも、丸いフライパンに生地を少し小さめに流し込むことが工夫のポイントだと考えていたようです。そして、大きな丸いフライパンを見つけ出すと、焼きはじめました。

焼く前には、バターを使おうと考えました。グループの仲間から「バターはあるか」と尋ねられたあと、Aさんは「先生、それ無塩バター?」と尋ねてきました。食塩が入っているかどうかで味や風味が変わることを知っているのです。
さらに、Aさんは竹串を持ち出し、生地の焼き加減を確認してひっくり返します。その手際の良さには、周りの子も気づき学びを得ていました。

こうしてAさんはクレープづくりを担当しました。できた生地はもちもちでしっとり。フライパンに流し込む分量も工夫されており、ひっくり返すのが難しいことも冬休みの追究で研究済みだったのです。

そして焼き上がりそうになると、成形は他の子に頼みます。頼む相手も成形が得意な子(絵を描いたりデザインしたりするのが得意な子)をしっかり選んで任せていました。
周りがよく見えている、まさにこの子らしさです。適材適所に人を見極めながら、協働して「究極」に向けて追究できる、Aさんのこの力の凄さを強く実感しました。

一方で、パンケーキは焦げてしまうことがありました。担当する子どもの経験の少なさが感じられ、フライパンの火力も焼く時間もばらばらで調節できていませんでした。
クレープだけがうまくできても「究極」とはなりません。チームで協働し、どのように振り返って次に生かしていくのか、期待が膨らむところでした。

大根とブロッコリーのスープ 大根の皮と味 

Cさんは、大根の皮をむかないという選択をしました。皮と実の間に栄養があると考えていたからです。担任がそのスープを試食した際、根が出ていて見た目が気になるとともに、食感もあまりよくないように感じられました。

子どもたちの振り返りとしては「おいしい」という意見が多かった一方で、何人かからは「味が薄い」という意見もありました。試食の際に「薄い」と発言していた子は、塩コショウをかけて食べていました。

また、Dさんは「和風でも味付けができそうだ」と構想しており、さらにおいしくするにはどうすればいいかを考えている子もいました。
食感と味付けに関する追究が、次の活動でも立ち上がってきそうな様子が見られました。

いちごソーダ  目の前の活動で試行錯誤する子どもたち 

いちごソーダチームは、明らかに行き当たりばったりの活動の連続でした。
調べたレシピが「いちごをそのまま使う方法」であったため、「加熱しなければならない」というルールを把握できておらず、活動の中でどうするかをその都度考える、その繰り返しで進んでいました。

まず、いちごの加熱の場面では、1回目は切ってからゆでていました。2回目はそのまま加熱してから切っていました。
子どもたちなりに「いちごの果肉感はどうだろう」「味はどうだろう」と考え、試しているようでした。

また、砂糖を担当する子どもの姿にも変容が見られました。1回目は適当に砂糖を入れていた子が、2回目になると「砂糖30グラム」ときちんと測って味を調えようとしていたのです。この子なりに試行錯誤しています。

はじめ、教師は「適当」と言ったこの子に対して「何グラムかわからないと究極にならないよ」と言いそうになりましたが、ぐっとこらえて黙って見守ったからこそ見取ることができた学びでした。
教師や大人がすぐに正さなくても、子どもは自分でやり方を工夫して課題に向き合うことができる。そんな姿を、いちごソーダの子どもたちからも見取ることができました。

3回目の試作品づくりの振り返り

  

「3回目の試作品づくりをふりかえろう」板書記録 

3回目の試作品づくりの振り返りを行いました。
まずはチームごとに話し合いを行い、その後、全体からアンケートをとって自分たちの試作品に対する意見をもらう、という手順で進めることにしました。

ひよこのクレパン

クレパンチームは、グループでの話し合いや追究が一段と深まっていました。
Eさんは、生地をもっとふわふわにするために豆腐の量を増やそうと考えていました。
またFさんは、自らのパンケーキづくりの経験をもとに「クリームが欲しい」と提案すると同時に、チョコが苦手な人やアレルギーがある人への配慮しながら、次の試作品づくりに向けた振り返りを行っていました。

Aさんは、活動全体を通して一貫してアレルギーのことを考えて進めていました。
クリームについても牛乳や卵を使わない方法を模索し、「普通のカフェにはないメニュー」を目指して意欲的に取り組んでいました。

大根とブロッコリーのスープ

振り返りでは、主に2つのポイントが浮き彫りになりました。
1つ目は、大根の切り方と厚みについてです。イチョウ切りや輪切り、厚みの違いについてGさんから意見が出されました。

Gさんは「厚さや切り方を変えて、鍋を分けて試してみよう」と具体的な検証方法まで提案してくれました。
理科や算数が得意なGさんは、味付けや作り方の条件を変え、理科の「条件制御」の考え方を用いて比較実験をしようとしていたのです。

2つ目は、味付けについてです。
「味が薄い」という意見が多く出たため、「コンソメを増やす」という案が出ました。担任としては、次の試作品づくりもこの方向性で進んでいくだろうと予想していました。

しかし、このグループのHさんは、他のメニューを見て「おいしそうだな」とつぶやき、使いたい材料を変更しようとしていたのです。
これに対し、担任としてどう関わるべきか迷いました。なぜなら、この取り組みは当初「自分たちで育てた大根とブロッコリーを使ってスープをつくり、ふるまう」という目的から始まっていたからです。

このまま本人のやりたいように進めさせるのか、それとも全体に問い直す場を設けて目的を共有し直すのか。
大根とブロッコリーのスープで何度も繰り返し追究するからこそ、学びが深まるのではないか。「究極」とは、ただ単においしいものをつくればよいということなのか。

子どもたちと一緒に考えてみたい部分でもありました。担任として子どもたちの追究がより深まるよう、今後の関わり方を模索していきたいと考えています。

いちごソーダ

いちごソーダチームでは、炭酸の強さ(強い炭酸にするか弱い炭酸にするか)について迷っていました。
また、アンケートからは「いちごの量を増やしたらどうか」という意見や、「砂糖の種類を変えてみたら?」といった具体的なアドバイスも届いていました。

このように学級の仲間からさまざまなアドバイスを受けた一方で、担任の見立てとしては「このグループが最終的にどんな料理をつくりたいのか」がまだはっきり見えてこないというのが正直なところでした。

この子たちは、本当にいちごソーダをつくってカフェでふるまいたいのだろうか。
子どもたちが真に没頭し、思いが膨らんでいく活動にしていくためには、教師としてどのように関わっていけばよいのか。そう深く考えさせられる子どもたちの姿でした。

その子の思いがふくらみ、願いが太くなるために

今回は、3回目の試作品づくりに取り組む子どもたちの姿を紹介しました。
その子の思いがふくらむ関わりとなるために、教師としてどのように支え、関わっていけばよいのかを深く考えさせられる姿でした。

活動がどのように進展していくのか、次回もどうぞよろしくお願いいたします。

箱根 正斉(はこね まさなり)

兵庫教育大学附属小学校


個がくらしを見つめ、その個が育つことを考えて実践に取り組んでいます。個が立ち、協働し、探究する。個がくらしをつくり、個が生きる。
生活科・総合的な学習の時間を中心として、その個が自分の思いを膨らませながら、自らの願いを実現し、自己実現を更新していく。
そんな個の育ちを目指して実践しています。

同じテーマの執筆者
  • 酒井 淳平

    立命館宇治中学校・高等学校 数学科教諭(高校3年学年主任・研究主任)

  • 西村 健吾

    米子市立福米東小学校 教諭

  • 川村幸久

    大阪市立堀江小学校 主幹教諭
    (大阪教育大学大学院 教育学研究科 保健体育 修士課程 2年)

  • 川島 隆

    浜松学院大学地域共創学部地域子ども教育学科 教授

  • 今村 行

    東京学芸大学附属大泉小学校 教諭

  • 安井 望

    神奈川県公立小学校勤務

  • 山本 優佳里

    寝屋川市立小学校

  • 朝倉 しおり

    東京都内公立中学校 教諭

  • 伏木 陽介

    花園中学高等学校 社会科教諭

  • 角田 直也

    岡山県矢掛町立小田小学校 教諭

  • 川崎 知子

    合同会社Toyful Works 代表社員・元公立小学校教員

  • 有村 竜希

    山口大学教育学部附属山口小学校

ご意見・ご要望、お待ちしています!

この記事に対する皆様のご意見、ご要望をお寄せください。今後の記事制作の参考にさせていただきます。(なお個別・個人的なご質問・ご相談等に関してはお受けいたしかねます。)

pagetop