2026.05.30
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探究を探究する―冬のいちご栽培で深まる総合的な学習の探究―(vol.11)

前回、年生総合的な学習の時間「究極のひよカフェ」の実践を、冬に植物を育てて活動に取り組むすいかチームの子どもたちの学びの姿として書かせていただきました。
今回は、いちごチームで活動する子どもたちの姿を紹介したいと思います。

兵庫教育大学附属小学校 箱根 正斉

冬にいちごを育てる方法を調べる

 

10月8日朝の会「果物について調べてきたAさん」

冬にいちごを育てようと活動しています。
いちごチームのAさんは、そもそも冬に植物を育てることは可能か、家の人に聞いてきたことをもとに朝の会で報告しました。

そして、いちごについても、以下のように調べていました。

・そもそも冬の寒さにあてないと花が咲かない。
・いちごは寒さに強いから、ビニールハウスはいらない。
・4月に収穫予定だから、ひよカフェ(2月)に間に合わない。

そして、もっと詳しい人にを育て方を聞いた方がいいと意見を出しました。
このあと、Aさんの発言をきっかけに活動は進んでいきます。

大きないちごが実った理由を考える

 

10月16日朝の会「大きいいちごがとれたよ」

Bさんは、10月16日の朝の会で大きいいちごが収穫できたことを発表しました。

小さいいちごばっかりだったのに、どうして大きないちごが収穫できたのか、肥料のことや、根切り虫対策を行ったことなど、さまざまな要因を考えて、クラスの子から意見が出ていました。

この頃から、担任もペットボトルを利用し、ランナー(つる)を土に根付かせていちごの栽培を始めました。
担任は、寒冷な屋外よりも、暖かい教室内のほうが育ちが良いのではないかと考え、試していました。担任が自ら実践する姿を一つの学習環境として提示することで、子どもたちに間接的に働きかけます。自発的な行動変容を促すことが狙いです。
「こうすべきだ」とゲストティーチャーなどを介して直接教えることは簡単ですが、今回はあえて間接的な関わりを選択しました。
担任は、その子が自ら気づいて考えたり動いたりして必要感をもって立ち上がってほしいと願いをかけて関わりました。
こうした教師の関わりには、その子の意志で動き出さなければ、自ら学ぶ力にはつながらないという考えがあります。
直接的な指導に比べ、すぐに行動として表れるまでには時間がかかるかもしれません。しかし、こうした間接的な関わりを通じて、個の意志を育み、自己実現へと向かう力を育てたいと考えています。

家庭でもいちご栽培を続ける姿

一方、Cさんは家庭でも自らいちごの苗を購入し、不織布のトンネルを自作して栽培に挑戦していました。
休日を利用して個人的に探究を深めるなど、学校での活動を家庭生活へと広げ、追究する姿が見られました。

このように、日々の暮らしと学校での学びがつながり、より良い実践を求めて主体的に動くCさんの姿からは、「調べた方法から、自分でもいちごをより良く育てたい」という切実な願いと行動力が伝わってきました。
生活と学びをつなげながら歩む、個としての確かな育ちを感じることができました。

割れたいちごから原因を探る

いちごチームの活動は、一歩ずつ着実に進んでいきました。
当初は不織布のトンネルを設置し、内部の温度を測ることから始めました。
気温が次第に下がり始めた11月末、厳しい寒さの中でもいちごは花を咲かせ、小さな実をつけていました。しかし、12月に入ると成長が停滞し、実は大きく膨らむ前に割れてしまいました。
この予想外の事態に対し、Cさんはどうして割れたのか、原因について調べていました。

Cさん「寒暖差5度までって書いてる。今日、最低気温3度やもんな」

前日と当日の最低気温は3度まで冷え込んでいました。
Cさんは、このまま寒さが続けばいちごがさらに割れてしまうと考え、その日の6時間目にプランターの様子を確認しに行きました。

目の前にある㋐~㋒のプランターのうち、どれを教室へ避難させるべきか。Cさんはプランターを前にして、寒さから守りたいという思いと、それぞれの成長具合をくらべながら、懸命に悩み、考えていました。

㋐割れてしまったいちごがあったプランター。もしかすると別の理由で枯れたかもしれないし、病気かもしれないから、移動しても同じことになるかもしれない。でも、いちごの花が2~3個ついている。

㋑2~3個いちごの花があるプランター。こちらは、形になっていないもの。小さいからできそうにない。

㋒花も咲いていないプランター。

結局、Cさんは㋐と㋑のプランターを教室へ運ぶことに決めました。
また、同様にランナーをポットに植え付けたものもいくつかあったため、これらも教室の環境で育ちを試すことにしました。
これにはCさんの意図も重なっていました。
Cさんは理科的な見方・考え方を働かせ、「条件を変えることで、どうすれば実を割らずに育てられるか」を検証しようとしていたのです。
こうしてプランターを教室に運ぼうとしたその時、ふと廊下で足が止まりました。

Cさん「教室は暖かすぎるから、急激な温度変化に耐えられないやん。どうしよう」

そう考え直し、結局プランターは廊下に置いておくことにしました。
見守っていた担任が、心配になって声をかけます。

担任「温度は大丈夫なの?」

Cさん「わからない。夜は無理やで。先生、夜の気温、測ってよ!」

Cさんからそう依頼を受け、その日の19時、担任は廊下の気温を測りました。
結果、10度を下回っていないという現状を伝えると、Cさんたちはそのまま廊下で栽培を続けることに決めました。

Cさんはその都度、自らインターネットで情報を収集し、「どうすればいちごを収穫できるか」という問いに対して試行錯誤していました。

教師が寒暖差や温度管理を徹底し、最短距離で結果(収穫)を出すことよりも、私はこの「育て、悩み、試行錯誤するプロセス」そのものを尊重することを選びました。
この過程を大切にすることこそが、この子にとって他の場面でも応用できる「活用のきく確かな学び」となり、その子の育ちを生むことにつながるのではないでしょうか。

担任が教室で育てているいちごの花が咲く

12月17日、担任が教室で育てていたいちごの花が咲きました。
ペットボトルを再利用した容器にランナーを植え替え、子どもたちの傍らで共に試行錯誤を続けてきたものです。
私は暖房器具の近くにプランターを置き、植物用ライトを照射するなど、温度と日照時間の条件を最適に整えるように工夫していました。

こうした担任の姿を間近で見ながらも、いちごチームの子どもたちは安易にその手法を真似ようとはしませんでした。
あくまで自分たちが導き出した条件や方法で、活動を進めています。
栽培においてこれが正解という絶対的な答えはありません。だからこそ、子どもたちが自ら考え、納得して歩みを進めるプロセスを、何よりも大切にしながら活動を支えています。

不織布からビニールトンネルへ変える

12月末、いちごチームは不織布をビニールトンネルへと変更しました。
AさんとCさんは、素材を変えることで「内部に結露がたまり、水やりをしなくても水分を補給できるのではないか」と考えていました。
さらにAさんとCさんの二人は、夜間の気温の変化を詳しく知りたいと考え、再び担任に計測を依頼しました。
担任が18時時点の気温を測ると9度であり、その結果を写真に撮って共有しました。一方、日中の気温を計測してみると19度まで上がっていることが判明しました。
この寒暖差に対し、子どもたちは今後どのように考え行動していくのでしょうか。3学期、いちごが収穫できるまで取り組み続けていくことになるのでしょう。

植物の栽培は、すぐには結果が表れません。
先が見えない不透明な状況に対して、自らがどれほど真摯に向き合ってきたか、その価値は、おそらくもう少し時間が経ってから気づくのだと思います。
たとえ見通しが持てない状況であっても、諦めずに挑戦し続ける。その先にこそ、より良い結果が待っているのだということを、子どもたちには日々の活動を通じて学んでほしいと願っています。
そんな願いを胸に、これからも子どもたちの歩みに寄り添い、共に取り組んでいきたいと思います。

花の様子を調べて成長を比べる

担任は受粉を助けるため、Cさんに筆を借りて授粉させました。
Cさんたちが廊下で育てているいちごのプランターには、すでに花弁が落ち、小さな実がつき始めていました。
担任は、「みんなのいちごは、うまくいっているの」と聞くと、Cさんは即座にいちごの生育過程がわかる画像を検索し、目の前の実と見比べながら次のように話していました。

Cさん「受粉がうまくいきすぎている」

Cさん「これは、先週咲いたやつやな。先週花やったやつが受粉してる。これから実が大きくなるんやで」

これまでの観察の積み重ねを裏付けるように答えていました。
屋外では実が大きくならなかったという前回の経験を踏まえ、今回は廊下での栽培に挑戦しています。ここまでは順調に進んでいます。ここから、どうなっていくのか、AさんやCさんの中では、きっとうまくいくと考えているでしょう。
ここから先、赤く小さな実ができるのか、あるいは再び壁にぶつかるのか。
子どもたちは、その結果を真摯に受け止め、また自分たちの力で次の一歩を考えていくことになるでしょう。

一歩踏み出す力を育む関わり

高学年になると、多くの子どもたちはインターネットや書籍を駆使して情報を収集できるようになります。しかし、得た知識を実際の行動へと移し、未知の一歩を踏み出すには、想像以上に大きなエネルギーが必要です。
担任は、過去に自ら動き出した経験の有無が、その後の行動力に大きく影響しているのではないかと考えてきました。

また、自らの意志で行動を決定するには、本人の意欲だけでなく、共に歩む仲間の存在が不可欠であるようにも思います。
自分の調べたことを共感的に受け止め、共に活動してくれる仲間がいてこそ、学びは協働的な広がりを見せ、自発的に動き出す姿へと、探究へと深化していくのだと思います。

「やってみたい」という思いを具体的な行動へとつなげる力は、いかにして養われるのでしょうか。
それは、幼児期や低学年の頃から、周囲に認められ、温かな関わりの中で育まれることが極めて重要だと考えます。
その子の育ちは一人一人異なるため、関わり方に唯一の正解はありません。しかし、その子が自己実現に向かうために必要なことは明確だと思います。
まずは「やりたい」という思いを大きく膨らませるような関わり。そして、何かに挑戦した際に、決して否定されることのない安心感のある関わり。
そうした積み重ねが、より良くなりたいと強く願いをもった子の育ちへとつながっていくと思います。

その子のあらゆる行為・行動には、必ず理由があります。
そんな行為・行動の背後にある思いに光を当て、共感しながら寄り添っていくこと。
これからもその子の内面を見つめ、その子にとってよりよい関わり方を探し続けていきたいと考えています。

冬の果物栽培で探究を深める

今回は、いちごチームの活動の様子について紹介しました。
冬に植物を育てることについての難しさや向き合い方を日々、捉え直しながら真摯に探究を続けています。
担任や大人が提示する「こうすれば育つ」という手法に、絶対的な正解はありません。
対象に対して自ら働きかけ、試行錯誤を繰り返す中でこそ、自分なりの答えが見えてくるものです。しかもその答えは、環境や条件によって刻々と変化していきます。

こうした正解のない問題に対し、仲間と協働し、対話を重ねながらその子らなりの答えを導き出していく。そのプロセスこそが、学びの醍醐味だと言えるでしょう。

次回は、究極のひよカフェに向けてメニューを試作する子どもの姿を紹介します。

箱根 正斉(はこね まさなり)

兵庫教育大学附属小学校


個がくらしを見つめ、その個が育つことを考えて実践に取り組んでいます。個が立ち、協働し、探究する。個がくらしをつくり、個が生きる。
生活科・総合的な学習の時間を中心として、その個が自分の思いを膨らませながら、自らの願いを実現し、自己実現を更新していく。
そんな個の育ちを目指して実践しています。

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