探究を探究する―個らしさが響き合う5年生、「究極のひよカフェ」実践―(vol.9)
前回、5年生総合的な学習の時間「究極のひよカフェ」の実践で取り組んだ、すいかを使った試作品づくりについて書きました。
今回は、試作品づくりを振り返り、究極のひよカフェの実現に向けて、冬に植物を育てて活動に取り組む子どもたちの学びの姿について、紹介します。
※文中に出てくる「個」という表現は、そこにいる子どものことを指します。その場にいるのは、その子だけなので、個という表現を使っています。
兵庫教育大学附属小学校 箱根 正斉
「果物がとれなくなる」Aさんの切実な語りが活動を動かした
二度の試作品づくりを経て、活動の振り返りを行いました。同心円チャートを用い、自分たちの活動から自分が思ったこと、感じたことを振り返りました。
担任としては、ここまでの手応えから、議論が次の試作品づくりに向かうだろうと想定していました。しかし、子どもたちから出てきたのは、冬に向けていかにして果物を育てるかという、栽培環境への切実な意見でした。
授業の中で、Aさんは冬に向けて次のように語り始めました。
「このまま果物がとれなくなると、ひよカフェは解散になってしまうよ」
その言葉は非常に切実なものでした。振り返りを通して活動をまとめようとする担任の思惑とは裏腹に、「一刻も早く次の活動へ向かいたい」という子どもたちの熱量との温度差を感じる時間となりました。
担任は、その子たちから「まだ活動は途中だ」「自分たちで進めているのだから、立ち止まらせないでほしい」と訴えられているように感じました。それは良い意味で、子どもが自ら活動を創り出し、「やらされていない学び」へと変容している証でもありました。
教師が舵取りをするのではなく、自ら舵をとって進んでいく学習の姿を、今回の授業を通して改めて確認することができました。
こうして活動は、冬の収穫を実現するためのビニールハウスづくりへと、次なる一歩を踏み出すこととなりました。
行動するBさんと冷静に分析するCさん

放課後ビニールハウスをつくる子どもたち
ビニールハウスづくりに向けて、Bさんたちは近くの店で材料を買い求め、教室に持ち込んで実際に作り始めていました。
その一方で、思いのままに突き進む仲間の姿を、冷静に分析するCさんの姿がありました。
Cさんは「先生、絶対あのテープは取れてしまうよ。材料が無駄になる」と、懸念を口にしていました。そしてCさんは、3人の仲間と共に「明日、朝の会で言う」と決意し、全体へ伝えようと立ち上がりました。
実際の朝の会では、Cさんの意見をもとに、以下の6つの課題が浮かび上がりました。
① 材料の強度の問題
② 夜間の極寒対策
③ 不織布の厚みと保温性の限界
④ 水やり時の冷気の侵入
⑤ 骨組みの不安定さと倒壊のリスク
⑥ 強風による飛散防止と固定の必要性
これらの問題に対し、どう解決すべきかをインターネットで調べたり、互いに知恵を出し合ったりして協働的に考える時間を設定しました。この時間は、それぞれの子どもが、育てる果物の生育環境と真摯に向き合う大切な時間となりました。
Cさんは、事前の計画や下調べを丁寧に行ってから活動する個です。祖母の家にあるビニールハウスを参考にする際にも、「許可をもらってから撮ってくる」と、筋道を立てて確認を行うような誠実さを持っています。
また、Cさんは単に仲間の行動を批判的に捉えるだけでなく、「どうすれば仲間の願いを実現できるか」を考え、具体的な行動に移すことができます。検討せずに動き出してしまう仲間の姿を目の当たりにし、自分の考えを伝えずにはいられなかったのでしょう。活動に対して自分事として向き合っていたのだと感じます。
担任は、Cさんの「じっくり検討し材料を無駄にせず作る」という考え方と、「まず、つくってみる。試してみないとわからない」と考えるBさんの考え方について、どちらも正解はないように感じました。
この二つの考え方は、単なる手法の違いではなく、どちらもその個らしさが表れた、とても素敵な姿だといえます。
互いに異なる個らしさを持つ存在が学級の中に在り、影響し合いながらよりよい答えを探していく過程は、非常に価値のあるものです。Cさんにとって、仲間の存在が自分自身の学びや見方・考え方、さらには価値観までを揺さぶることにつながっていくのだと考えられます。互いに影響し合いながら、共に伸びていく子どもの姿を支えたいと担任は考えていました。
まずビニールハウスをつくり試してみるBさんと、冷静に計画を立ててから動くCさん。この二人には、それぞれの個らしさにもとづいた良さがあります。まずやってみるという行動力が道を切り拓くこともあれば、冷静に計画的に実行することで本質に辿り着く場合もあります。
このように、異なる個らしさがこの学級という空間で共に在り、協働して問題解決に向かうことで、質の高い探究的な学びが生まれるのではないでしょうか。互いの個らしさを認め合い、高め合いながら進めることこそが、学校で学ぶ大きな意義であると考えています。
冬に果物をいくつ育てるか決めよう
10月9日の朝の会では、「いちじくの木の世話が十分にできていない」という問題提起がありました。この現状をきっかけに、他の植物についてもこれからどう向き合っていくべきか、話し合いが進んでいきました。
「このまま諦めたくない」という意見が出る一方で、「本当にいけるの。いくつか育てる植物の種類を絞った方がいい」という冷静な意見も出されました。
そこから、冬に向けて果物をいくつ育てるか検討することになりました。1つか、2つか、あるいは4つか。子どもたちから出された理由は、どれも切実なものでした。
・1つに絞った方が愛を注げる。
・1つだと枯れたときに、カフェができなくなるから、2つにする。
・季節に合わないものがあるから、育てることが難しいと思う。
・4つだと、枯れても他の植物が残る可能性がある。
話し合いが深まる中で、自分たちの責任についても言葉が交わされました。
「たとえ、さぼった子が出ても大丈夫なように、人数を多くした方がいいと思う」
世話をさぼる子を想定した意見が出る中で、ある子から鋭い意見が投げかけられました。
「植物だって生きている。さぼる前提で話しているって、そもそもそれが『究極』じゃない」
この発言は、単なる数の議論を超え、自分たちの活動に対する根本的な向き合い方を問うものへと展開しました。
収穫が間に合わないかもしれないという厳しい状況下で、議論の焦点は個数ではなく、自分たちでやり切るという決意へと移っていきました。言葉を尽くして話し合う時間は、自分たちの活動に対する覚悟を確かめ合う時間となったのです。
最終的に、4つの植物を育てることとなりました。夏の果物であるスイカやメロンにも挑戦してみよう、という結論となりました。自分たちで困難に挑み、育て上げることこそが「究極」へと繋がると信じ、実現に向けて活動が進んでいきました。
冬に果物を育てて究極に迫る
今回は、試作品づくりを経て、その後の活動を模索する子どもたちの姿を紹介しました。
「究極」という価値について、自分たちの活動への向き合い方を問い直す場面を振り返りました。「究極のひよカフェ」という目標は、単なるカフェを開くという活動に留まりません。自分たちの活動に対する真剣さや、注ぎ込まれる熱量そのものを象徴しているようにも見て取ることができました。
- Aさんのように、自分たちの活動を真剣に語る子。
- Bさんのように「やってみたい」という思いを即座に行動に移し、やり遂げようとする子。
- Cさんのように冷静に物事を分析して、成功のために思考を巡らせる子。
このように、多様な個が同じ学級に「共に在る」こと。そして、互いに影響し合いながら協働して問題解決に向かうことで、より質の高い「探究する学び」が実現していくのだと考えています。
次回は、冬に植物を育て、寒さと向き合いながら活動する子どもたちの姿を紹介します。「究極のひよカフェ」に向けて、活動がどのように進展していくのか、引き続きその歩みを見守っていきます。

箱根 正斉(はこね まさなり)
兵庫教育大学附属小学校
個がくらしを見つめ、その個が育つことを考えて実践に取り組んでいます。個が立ち、協働し、探究する。個がくらしをつくり、個が生きる。
生活科・総合的な学習の時間を中心として、その個が自分の思いを膨らませながら、自らの願いを実現し、自己実現を更新していく。
そんな個の育ちを目指して実践しています。
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