2026.10.07
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「美術が苦手」でも大丈夫。親子で美術を楽しみ、感性を育てよう

私、アグネス・チャンがこれまで学んだ教育学の知識や子育ての経験をもとに、学校や家庭教育の悩みについて考える連載エッセイ。芸術の秋、行楽の秋がやってきました。涼しくなって出かけやすいこの季節は、親子で美術にふれる絶好の機会です。「絵が苦手」「芸術の知識がない」という方も、どうか身構えないでください。今回は「親子で美術を楽しみ、子どもの感性を育てる」をテーマに考えました。

「美術館は子どもにハードルが高い」と思っていませんか

 

 

我が家は美術館、博物館が大好きです。時間があると、子どもたちを連れて行きました。旅行に行っても、美術館には必ず行きます。今でも、時間があると孫を連れて行きます。

美術館は子どもにはハードルが高いと感じる方も多いようです。静かにしていなきゃいけない、行っても退屈するんじゃないか。そもそも芸術に詳しくないと楽しめないのではないか、など。実は、私もあまり知識がありません。でも、美術館ってただ黙って鑑賞するだけのところではないのです。

私は子どもが興味を持ちそうな話を、絵の前でします。「この人、おいしそうに食べているね」「なんで、枯れてる花を描いたのかな」「光の捉え方がすごいね。まるで光ってるように見えるね」など。その絵に物語があれば、それを話してあげます。今ならスマートフォンで調べればすぐにわかります。

今では、息子たちのほうから解説をしてくれるようになりました。これがとても面白いのです。そして、「私はピカソが好き」「あなたはどれが一番好き?」と、自分たちの意見を言いながら見ます。「これが素敵」「あら、お目が高いね」なんて言い合うのも楽しいものです。

美術というのは、言葉にできないことを絵や彫刻などで表現しているので、見たり、触れたりすることによって、感じるものです。いいものと出会うことによって、感性が育てられます。だから気軽に行ってみることから始めれば良いと思います。

自分のテーマを持つと、もっと楽しくなる

美術館に行くときは、テーマがあったほうが楽しいと思います。私は、絵の中に「光」を探すのです。光をどうやって描き出しているのか。光をうまく描く画家には感心します。光の当たり方で肌がきれいに見えたり、果物が輝いて見えたりします。海や月の光を見事に描く画家もいます。そんなふうに私は、光を探しながら見ています。

子どもと一緒なら、「ピカソの絵をどれだけ見られるか」「ゴッホの自画像って何枚もあるんだよ。探しに行こう」と、テーマを決めてもいいと思います。

それから、親の下調べも必要です。「この美術館では、これとこれは絶対に見よう」と、見せたい作品をあらかじめ絞り込んでおく。一から全部見せようとすると、子どもは飽きてしまいます。まずは親が少しでも興味を持たないと、子どもも同じようには楽しめないものです。

私たち家族は陶器や昔の衣装、装飾品などを見るのも大好きです。「昔の人はこんな船を作っていたんだ」と驚くこともあります。絵は、その人の目を通して歴史や時代、世の中を見るものでもあります。「この人は、私とは違うものを見ているんだ」と、その人の視線から物事を感じる。そうすると、自分の見方も少し広がる気がします。

美は、美術館の中だけにあるものではありません

美術を見るのは、知識を持つためではありません。「ああ」とため息が出たり、体が震えたり、心が動いたりする。その感動のために行くものだと思います。人間には、そういうところから心に余裕が生まれるのだと思います。時代を超えて人を感動させることができる画家は、本当にすごい存在です。私もミュージシャンですから、音楽でそういうことができたらと願いますが、画家として生まれるのもよかったなと考えることもあります。

美は、美術館の中だけにあるものではありません。スマートフォンを持って子どもと出かけて、その日に一番美しいと思ったものを撮る。人でも建物でも、虫でも花でもいい。そうしているうちに、違った角度で周りを見るようになります。

長男は写真が好きで、彼のテーマは「神々しい木」です。キャンプや山に行くと、変わった形の木やきれいな木を撮影して、「この木は神さまが住んでいるみたいだ」と言うのです。そういう見方をすると、なるほどきれいだなと思ったりもします。

子どもが小さい頃は、一番星を探したり、夕日を見に出かけたりしました。今、孫は毎日のように月を眺めています。車で走っていると「It's following us.(ついてきてるよ)」と言うのです。三日月、半月、満月、赤い月も、ちゃんと見分けています。

私自身は、ふと思い立って花を見に行くことがあります。先日も家の近くの温室で、蘭の花を見ていたら、大きいものも小さいものもあって、みんな違うので見ていて飽きませんでした。海も好きで、香港にいるときは散歩のついでに海を見に行きます。浜辺ではなく、ただの波止場です。それでも、ぼーっと眺めるだけで満たされます。自然の中にも、美しいものはたくさんあるのです。

美意識は持っていても使わなければ、なくなってしまいます。今、私たちが忘れかけているのは、美しさを楽しむことではないでしょうか。身の回りにある美しいものに気づき、それを感じることです。はやりのものだけでなく、永遠に心に残るものもあります。だから、美を狭い範囲で考えず、できるだけ広く感じてほしいと願っています。

アグネス・チャン

1955年イギリス領香港生まれ。72年来日、「ひなげしの花」で歌手デビュー。上智大学国際学部を経て、78年カナダ・トロント大学(社会児童心理学科)を卒業。92年米国・スタンフォード大学教育学部博士課程修了、教育学博士号(Ph.D.)取得。目白大学客員教授を務め、子育て、教育に関する講演も多数。「教育の基本は家庭にある」という信念のもと、教育改革、親子の意識改革について積極的に言及している。エッセイスト、98年より日本ユニセフ協会大使、2016年よりユニセフ・アジア親善大使としても活躍。『みんな地球に生きるひと』(岩波ジュニア新書)、『アグネスのはじめての子育て』(佼成出版社)など著書多数。2009年4月1日、すべての人に開かれたインターネット動画番組「アグネス大学」開校。2015.6.3シングル『プロポーズ』release!!(Youtubeで公開中)

AGNES CHAN OFFICIAL SITE ~アグネス・チャン オフィシャルサイト

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