前回までは、人との関わり方の根底にある考え方を、掘り下げてお話ししてきました。今回からは、トレーニングの手法について、具体的に話を進めていきたいと思います。
私は十数年に渡って、ソーシャルスキルトレーニング(以下SST)の指導に携わってきました。すると、周囲の指導者の様子に、「こんな指導でいいのかな」と考えさせられることもありましたし、自分自身の指導の未熟さを反省せざるを得ないこともありました。それで、多くの皆さんに、SSTの魅力と効果を実感していただくためには、考え方だけではなく、技法についてもお伝えしていく必要があると思ったのです。今後は、不定期の投稿になりますが、うまく伝えられるように努力しますので、何卒よろしくお願いいたします。
まず、SSTを行うにあたって、最初に考えなければならないことは、「場面の設定を明確にする」ということです。漫画には、イライラしたときの場を設定するとき考えられる手法と、場面の例を示してみました。一口に「イライラしているとき」と言っても、数えきれないくらいの多様な場面があるのです。
ですから、「もしイライラしているときには、どうしたらいいと思いますか?」と子どもたちに投げかけるとしたら、無謀なことだと考えなければなりません。「イライラしていたら音楽を聞けばいい」とか、「外で遊ぶといい」、「美味しいものでも食べて、気持ちを押し付けよう」という答えを引き出せたとしても、それは生きる上での知恵に過ぎず、スキルを磨くことにはならないからです。また、「ドッジボールで負けてしまいました。悔しくてイライラしています」という具体的な場面を設定したとしても、「そういうときには、周りの友達がドンマイと声をかければいいと思います」という意見を求めただけでは、スキルトレーニングとは言えないのです。
ある場面に対して、具体的にどのような言葉で表現していくのか、言葉以外の表現をどのように活用していくのかについて、知識があることも大切です。次回は、表現指導のポイントについて話を進めていきます。
荒畑 美貴子(あらはた みきこ)
特定非営利活動法人TISEC 理事
NPO法人を立ち上げ、若手教師の育成と、発達障害などを抱えている子どもたちの支援を行っています。http://www.tisec-yunagi.com
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