これまで、p4cを活用した道徳の授業での実践についてご紹介してきました。
実は、今年度は道徳の授業でp4cのやり方の一部分だけを取り入れています。
私の今年度の実践のように、p4cを全て取り入れるのではなく、p4cの一部だけを取り入れることもできるんだ!と読者の先生方にお伝えできればうれしいです。
道徳の授業での「問い」を自分で立てる
私が取り入れているのは、p4cの中でも、「自分で問いを立てる」ということです。
実践を簡単にご紹介します。
事前にgoogle formを用意しておきます。そこで、「今日みんなで考えたい問いを立てましょう」のように自由記述で回答を求め、今日の道徳の授業で考えたい問いを募集します。
そのようにして問いを集めると、子どもの立てた問いが重複する場合もあります。子どもたちが立てた問いの中から、多かった問いを5つほど選びます。
子どもたちに問いを提示し、どの問いについて考えたいか、決める時間を取ります。
その後、問いを選びます。私は多数決で選んでいますが、様々な決め方があるでしょう。
1つの問いを選んだ場合でも、別の問いに関連している場合があります。
授業の中で対話を深める中で、選ばれなかった問いについても取り上げ、子どもたちと考えていくこともできます。
google formは一度作れば、あとは都度コピーを作成し、教材名だけを書き換えて配布すればよいので、手間はそれほどかかりません。
教材文を読んだら、google formを配布し、問いを集める。多かった問いを、みんなで考える。問いを子どもたちに自分で考えさせる、という流れです。
問いを自分で立てることの良さ
道徳の授業において、問いを自分で作ることの良さとは何でしょうか。
私は、「考える」ことの一歩となるからと考えています。
p4cでは、対話を深めるためのツールとして、WRITEC(ライテック)を使うことがありますが、問いを立てる際にも使うことができます。
WRITEC(ライテック)は本来、対話を深める視点を与える6つの単語で、6つの単語のアルファベットの頭文字をとって、WRITEC(ライテック)と呼ばれています。
- What(意味)どういう意味かな ?
- Reason(理由)なぜそう思うの ?
- Assumption(前提)それって当たり前かな ?
- Inference/If~then~(推論)もし~なら~ということになる ?
- True(真実 事実性)本当にそうかな ?
- Example/Evidence(事例 証拠)例えば ? 証拠は ?
- Counter-example(反例)でも、こういうこともあるのでは ?
(「探究の対話(p4c)」次の一歩より引用)
これらを提示して、子どもに問いを考える時間を取りますが、与えられた問いについて考えるだけではなく、これらを使って問いを立てること自体が、考えることであると感じます。
実際に私自身も問いを立てようとすると、教材文を読み問いを立ててみようとしても、すぐには問いが浮かばない時があります。問いを立てようとする中で「考える」ことが始まると感じています。
さらに、自分で問いを立てる、ということは、日常ではあまりない経験であり、考えることの練習になるとも感じています。
実際に、問いを立てられない子どももいますが、回数を重ねることで慣れたり、他の子どもの立てた問いを見る中で、問いを立てられるようになったりする子もいます。
今日は、教科書の発問を中心に取り上げようかな、と「今日はこれについて考えよう」とこちらが問いを決めて子どもたちに提案したこともありますが、すぐに「問いを自分たちで考えたい!」と子どもたちからは反応が返ってきます。
少なくとも私の学級の子どもは、与えられた問いよりも、自分で立てた問いを考えるほうが好きな子どもが多いようです。
若手の先生こそp4cを取り入れてみて
私自身、授業の経験不足で、指導書を読み込んで授業をしてみても、うまく進まないことがたくさんあります。問いを子どもたちに考えさせると、「これを考えさせなければ」「この流れにしなければ」という、「べき思考」から離れ、子どもと一緒に道徳的価値について考えたり、対話を深めたりすることができると感じています。
子どもは、意外な問いを立ててきたり、予想しなかった面白い問いを立ててきたりします。子どもによって、考えたいことは全く違うのだな、と知るだけで興味深いです。
まずは1回、子どもが問いを立てる道徳の授業を実践してみてはいかがでしょうか。
参考資料
- 「探究の対話(p4c)」次の一歩 宮城教育大学 上廣倫理教育アカデミー 2019年 11月発行
齋藤 祐佳(さいとう ゆか)
仙台市公立小学校 教諭
宮城教育大学教職大学院にてp4c(子どもの哲学対話)
『初任者教師のスタプロ ハッピー学級経営編』(東洋館出版)にてコラムを執筆。
note(https://note.com/haru_
日本教育心理学会所属。
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