私たちは日常的に誰かと関わっています。特定の集団の人たちと、特定の家族や仲間と、不特定多数の人たちと。そこには楽しいこともあるでしょうし、不愉快な気持ちになることもあるでしょう。しかし、その関わりは双方にとって意味があると考え、関わりを通して届けられるメッセージに耳を傾けることも必要ではないかということを前回お話ししました。今回は、相手と自分の気持ちの違いをはっきりさせようと、気持ちを色で表現した実践を元に、話を進めていきたいと思います。
漫画を見てください。これはひとつの例ですので、場面や色の設定を変更することも可能です。私は、「それ以外」という色も作ってみましたが、すべての色に意味をもたせてもかまいません。まず、教師の説明を聞き、児童は自分で考えてワークシートの円に色を塗ります。その後、グループに別れて自分の気持ちを伝え合います。実は、これに似た授業を参観した後、教師集団も同じような学習をしてみました。
参観と実践を通して気づいたことは、言うまでもなく、色を見ただけで自分と相手は違った感情をもつことがわかったということです。それから、同じ色に塗っていても、その色で表現された気持ちは少しずつ違うということです。悲しいのか淋しいのか、あるいは虚しいのかという気持ちは、聞いてみなければわかりません。また、色を見ながら話しているので、相手の気持ちをイメージしやすいことや、質問しやすいこともわかりました。
私たち教師は、「相手の気持ちを尊重しましょう」と、何気なく言ってしまうことがあります。しかし、相手の気持ちをイメージすることは、簡単なことではありません。子ども達による授業の初めに教師が、「みんなは、友達の気持ちを知りたいと思ったことはありますか?」と質問すると、「いつも思っている!」という声が返ってきました。これが本音なのだろうと思います。経験を積んだ大人でさえ、相手の気持ちを察することは難しいと感じているのではないでしょうか。ある本には、むしろ自分の気持ちを理解することの方が難しいとありました。目に見える形では表現されにくい「気持ち」や「感情」を理解し合うことは、困難なことなのだと認識しておく必要があるのです。
昨今、「自分さえ我慢すれば」とか、「先に言った者勝ち」のような風潮が見られます。「感情を殺す」ことが美徳であると思い込んでいる人も多いと思います。普段から自分のことは後回し、気の合わない人とでも無理をして付き合う、「平気」という返事で済ませてしまう、無理をしてでもポジティブに振舞おうとする・・・ そんな傾向はないでしょうか。
「自分にもいい、相手にもいい」というアサーティブな関係を作るためには、「わからなかったら聞いてみる」、「相手に理解してもらおうと思うなら伝えてみる」といったことが大切です、まずは「質問」と「説明」というキーワードを心に留めて、互いの声に耳を澄ましてみてほしいと思います。
荒畑 美貴子(あらはた みきこ)
特定非営利活動法人TISEC 理事
NPO法人を立ち上げ、若手教師の育成と、発達障害などを抱えている子どもたちの支援を行っています。http://www.tisec-yunagi.com
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