2024.12.20
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道徳授業のスキルアップ5選!

道徳の授業で、明日から生かせる授業技術5選です。
初任者の方であっても、ベテランの方であっても、間違いなく手軽に生かせることができます。でも、大事なことに変わりはありません。もしかしたら、自然とできている先生もいらっしゃるかもしれませんが、改めて言語化しておきましょう。

東京都公立小学校 主任教諭 柿原 健吾

①多くの発言を聞き取ってから板書する

教師:「○○くんが涙を流していたとき、どんなことを思っていたのでしょう」「はい、Aさん」
A児:「ごめんね、○○さん」
(教師が板書する)

教師:「はい、Bさん」
B児:「ぼくが間違っていたよ。」
(教師が板書する)

上記のような光景を見たことがあったり、日頃やったりしていないでしょうか。一問一答のようなこのやり取り、私も以前によくやっていました。全てが悪いというわけではありません。ただ、「授業のリズム」を意識していくと、流れが途切れてしまう感じが否めません。そこで、すべての発言を一度に聞き取ってから板書することにしています。全ての発言を覚えておくか、メモを取っておくといいですね。ただ、以前にこんな質問をいただいたことがありました。
「その方法で板書していると、子どもを待たせる時間が長くなりませんか」
もちろん、少し時間はもらいます。ですから私は、以下のような声をかけてから板書するようにしています。

「たくさん発言が出たね。ちょっと、板書させてほしい。先生が黒板に書いている間に、自分の発言が書かれているか、確認してね」
「友達の発言を比べたり、付け足しがあったりしたら書き終わったら聞くからね」などと伝えています。
そうすると、子どもたちは挿絵と言葉を組み合わせて、教材に浸っています。私が大切にしているのは、「リズム」です。子どもの生きた声をできるだけ早く、共有したいためです。

②発問の後、考える時間を与える

発問次第で、授業は良くも悪くもなることはご承知しているかと思います。すぐに思い浮かぶ子もいれば、じっくりと考えてから言語化できる子もいるでしょう。
全員を同じ土俵に立たせるために、少しでも時間を取ってから挙手などをさせると、授業が生き生きとしてきます。抑揚も大切なので、ポンポンと進む部分も授業ではあってよいのですが、発問は授業の「核」となるので、丁寧に扱っていきたいところです。

③教材提示の仕方を工夫する

導入後、教科書を開かせて教師が範読をする。このやり方を否定するわけではありませんが、私はしません。理由は明確で、配慮が必要な児童にとっては、情報量が多くて目移りしてしまうことがあるためです。国語とは違って読み取りではないので、わずか数分で教材の内容を、子どもたち全員が同じ理解度に立てるようにしなければいけません。そこで私は以下の方法で、教材提示をしています。

プレゼンテーションソフト
→挿絵と肝となる人物の台詞や様子を、大型モニターに映しながら範読しています。こうすることで、情報を絞って提示することができ、時間短縮にもつながります。少し準備は必要となりますが、子どもたちはお話の世界に誘われて、教材に浸ることができます。ほぼ毎時間、私はこの方法で進めています。

ペープサート
→幼稚園や保育園でもお馴染みの方法です。登場人物を動かしながら、範読していきます。興味関心が高まり、特に低学年の子どもたちにはおススメですね。ただ、毎時間は難しいので、有名教材のときなど、絞ってやるとよいかと思います。

④書く活動は、極力少なくする

 「中心発問」「価値理解の発問」「振り返り」など、いずれかに絞って書かせましょう。「考え、議論する道徳」を積み重ねていくために、やはりたくさんの「声」を交わしていきたいので、書かせる時間を減らしていきたいところです。もちろん、自分の意見をもたせたり、思考を整理して言語化したりするために書く活動は有効なので、取り入れるべきです。しかし、「何のために」という目的を明確にして書かせていきましょう。
私は必ず、「振り返り」は書かせています。どんなことを学んだのか、どんなことが分かったのかを知るためです。書く活動は、多くても2か所に留めることを心がけましょう。

⑤葛藤場面では、子どもを動かす

「AかBか」「自分だったらどうするか」などの子どもたちの内面に葛藤が起こる場面では、子どもを動かしましょう。

ネームプレート
→黒板やホワイトボードに、ネームプレートで意思表示をさせます。ねらいと発問がマッチしていれば、自然と議論が起こります。友達の考えを聞いて、自分の意見を変えたくなったら、ネームプレートは自由に動かしてよいこととしています。ただ、動かしにくいこともあるので、学級の実態に応じて指示しましょう。

円になる
→みんなの顔を見ながら、机や椅子を取っ払って議論させます。教室を半分にして、椅子を使ってAかBかを聞いても盛り上がりますよ。子どもたちは、友達がどう感じているのか、表面的にあまり出さなくても、すごく聞きたいと思っています。

タブレット端末でアンケート
→その場で、発問に対してどう思っているかを打ち込ませます。匿名表記にしておくことで、苦手な子でもホンネをさらけ出しやすいメリットがありますね。また、視覚化されるので、自分事として捉えやすくなる面もあります。

いかがでしたでしょうか。
これら5つの手法をどれか一つでも生かしていくだけで、間違いなく授業が変わり、子どもが変わっていきます。大事なのは、先生方がアップデートすること。私ももちろん、今後も学級の実態に応じてさらに新たな方法を探っていきます。

柿原 健吾(かきはら けんご)

東京都公立小学校 主任教諭 道徳推進教師


全学年の担任を複数回行い、単学級の小規模校、1学年4学級の大規模校まで幅広い経験が最大の武器です。
道徳を専門としたきっかけは、6年生を担任している際に、本音で語り合う子供たちの姿に心を打たれて道徳を学び始めました。
道徳は、子供たちがよりよく生きるための「種まき」です。
授業のことはもちろん、組織として取り組むべき子供たちの心の育成について共に考えていきましょう!

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