「君たちはどう生きるか」を問い続ける道徳教育~ぶれない良心と愛を原動力として生きるために~(NO.10)
新しい年を迎えました。例年であれば穏やかなお正月を過ごしていたところですが、今年は年明け早々に様々なことが起きました。特に能登半島の地震で被災された皆様には、心よりお見舞い申し上げます。
このようなときこそ教育を充実させ、道徳の視点から正しいと思う言動を取ることのできる子どもを育てていくことが大事なのではないかと思います。私にできることには限りがありますが、今年も教育者という立場から、有用な情報を配信できるよう頑張っていこうと思っています。どうぞよろしくお願いいたします。
さて、今回は道徳教育のまとめとして、教師として「どう生きるか」、「何を優先してやるべきか」を考えてみたいと思います。先輩教師から皆さんへの語りかけであるとともに、自戒の念を込めてお伝えします。
特定非営利活動法人TISEC 理事 荒畑 美貴子
ぶれない良心を育てること
「人は生まれながらにして良心をもっていて、それに従って生きればいい」というのではなく、良心は育むものだといわれます。誰かの意見に振り回されたり、誰かの評価の目を気にしたりすることなく、自分の心が最善であると思うことをやり続ける。その継続の中に、良心を育てるエネルギーがあるのだろうと思います。
残念なことに、世の中の情報の全てが正しいということはなく、善意だけで関わってくる相手ばかりということもありません。学校を離れてしまえば、人生という大波の中で揉まれながら生き抜かなければならないのです。そのために、子どもたちの中にぶれない良心を育て、どんなときにも確固たる信念をもって周囲の人や社会と関わっていく力をつけてやりたいと思っています。
まずは、教師自身が手本となり、教育に命を吹き込みながら実践を繰り返していきましょう。私たちが毎日、当たり前のように子どもたちと関わり授業を行っていることが、子どもたち一人一人にとってどれほど大きな意味をもつのかを忘れてはなりません。
そして、子どもたちの良い言動を褒め認めることを通して、それが習慣化するように支えていきましょう。無意識のうちに、道徳性のある言動を取ることができるようになれば、そこに良心が育っていきます。
愛情をもって関わること
唐突な質問ですが、重い病を患っている方に、「やり残したことはないか」と聞いたとしたら、どのような言葉が返ってくると思いますか。私は、「もっと旅行をしておけばよかった」「夢を諦めなければよかった」など、様々な思いが語られるのではないかと予想しました。しかし、以前読んだ本によれば、「もっと愛情をもって関わればよかった」とか「もっと愛情をもって関わってもらえる人でありたかった」と返す人が多いとありました。当時の私は、「そういうものなのか」と読み飛ばしてしまいましたが、年齢を重ねるに従って、本当にそうなのだろうと思えるようになりました。
愛情をたっぷりと与えられて育った子どもは、大人になってから愛情を注ぐことのできる人になるというのは、間違いようのない事実です。教師は親とは異なり、愛情をかけるといっても限度がありますが、それでもできることはあります。子どもの心の声に耳を傾けること、子どもを一人の人間として尊重すること、子どもたちと繋がること。そうすることによって、愛情を受け渡す通路を、子どもたちとの間に作ることができるのです。
もし、学校に愛情を交わすルートをもった教師がいたら、子どもたちは毎日楽しんで学校に通うでしょう。また、そういう相手から、多くのことを学ぼうとするでしょう。
どんな内容の教育であれ、子どもとの信頼関係がなければ成果を上げることはできません。まして、読み書き計算のような学習ではなく、心を扱う学びであるならば、教師を尊敬していなければ何を言っても通じないのです。
しかし、私自身を振り返ってみても、子どもたちに尊敬されていると断言することはできません。それでも、子どもたちに愛情を注ぎ、大人として敬意をもって接してもらえるよう努力を続けていきたいと思います。
荒畑 美貴子(あらはた みきこ)
特定非営利活動法人TISEC 理事
NPO法人を立ち上げ、若手教師の育成と、発達障害などを抱えている子どもたちの支援を行っています。http://www.tisec-yunagi.com
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