子どもの哲学(p4c)とは何か 対話の振り返りの方法(vol.6)
p4cを知っていますか。p4cとはphilosophy for childrenの略称で、子どもの哲学、子どもの哲学対話などと訳される教育実践です。
私は子どもの哲学(p4c)の道徳での活用に注目し、授業実践について日々模索しています。
今回は、対話を振り返る方法をご紹介します。
仙台市公立小学校 教諭 齋藤 祐佳
p4cの基本的な流れ
これまでの記事でご紹介した、p4cの流れを復習してみます。
p4cの基本的な流れは、以下のようになります。
- 輪になって座る:参加者で輪になって座ります。
- 問いを立てる(問いを選ぶ):今日、みんなで考える問いを、みんなで考えます。
- 対話のルールを確かめる:対話を始める前に、ルールを確認します。
- 対話を行う
- 対話の振り返りをする
今回の記事では、対話を終えたあと、「対話の振り返り」の方法をご紹介します。
振り返りの方法は様々ですが、一例をご紹介します。
対話の振り返りをする
対話の振り返りは、全体で挙手による方法、個人でノートやワークシートに書く方法があります。
私が道徳の授業でp4cを行い対話を振り返る際には、挙手(全体)と記述(個人)の両方によって振り返っています。
挙手(全体)による振り返り
輪になって対話を行った後、輪になったまま全体で振り返ります。
「友達の話をよく聞きましたか」
「考えを深めることができましたか」
「安心して話すことができましたか」
これらについて、3段階で振り返ります。できたと思うほど腕(手)を高い位置で、できなかったと思うほど腕(手)を低い位置で挙げます。
例えば、よくできたと思うなら、腕(手)を高い位置で挙げます。まあまあできたと思うなら、腕(手)を肩と同じくらいの位置で挙げます。全然できなかったと思うなら、腕(手)を肩より下に低く挙げます。
挙げる位置は、3段階を明確に区分せず、参加者が自由に決めて振り返ることもできます。
グーサイン(全体)による振り返り
グーサインで振り返る方法もあります。
まず、腕を体に対して垂直に、床と平行になるよう伸ばし(およそ肩の位置)に固定したままグーサインを作り、よくできたほど親指が上向き、できなかったほど親指を下向きにして表現します。
対話を振り返る質問
対話を振り返るための質問は増やしてもよいです。
また、発達段階に応じて様々な表現で振り返ることができます。
例えば、
「友達の話を理解できましたか」
「考えが広がったり深まったりしましたか」
「セーフティはありましたか」
「自分の考えを発言しましたか」
「他の人の考えと自分の考えを比較しながら対話しましたか」
「新しい気づきはありましたか」
「安心して参加できましたか」
などが挙げられます。
記述(個人)による振り返り
対話を通して新しく気づいたことや発見、新しく生まれた問いなどを記録します。
ワークシートに、全体で振り返った項目を(A/B/C)の3段階で自己評価する欄を設けたり、自由記述欄で考えを自由に書いたりできるようにします。
私は、「今日の対話で感じたこと、新しく気づいたこと、これから生かしたいこと」を自由に書く時間をとり、ロイロノートで振り返りをしています。
対話の振り返りの意味
振り返りをすることで、今日の対話が児童にとってどのように感じられたものだったか、どのような時間になったのか、教師が把握し、次回以降の対話に生かすこともできます。
例えば、「安心して参加できましたか」に対して、できた、という児童がいつもより少ない場合、その日の対話を振り返って考えてみると、ルールがしっかり守られていなかったことが原因であったと推測することができたとします。
その場合、次回以降ルールを改めて全体で確認し直したり、ファシリテーターである教師が、ルールが守られた対話となるよう配慮したりすることで、反省を生かすことができます。
また、振り返りは、教師が学期末の評価に活用することもできます。
ここまでが、p4cの一通りの流れとなります。
これまでの記事が、p4cの実践の一助となれば幸いです。vol.6まで続いた記事「p4cとは何か」。最後までお読みくださり、ありがとうございました。
参考資料
- 「探究の対話(p4c)」はじめの一歩 宮城教育大学 上廣倫理教育アカデミー 2019年 3月改訂
- 「探究の対話(p4c)」次の一歩 宮城教育大学 上廣倫理教育アカデミー 2019年 11月発行
- 道徳で探究の対話(p4c)を始めよう 実践例編 東京書籍 2020年 4月発行
齋藤 祐佳(さいとう ゆか)
仙台市公立小学校 教諭
宮城教育大学教職大学院にてp4c(子どもの哲学対話)
『初任者教師のスタプロ ハッピー学級経営編』(東洋館出版)にてコラムを執筆。
note(https://note.com/haru_
日本教育心理学会所属。
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