3学期 道徳所見でバタバタしないために
多くの学校では、道徳科の所見を3学期に書くことが多いのではないでしょうか?
「どんなことを書けばいいのか?」
「あの子、書きづらいなあ」
気付けば提出1週間前なんてこともありますよね?
今年は計画的に進められるといいですね。
岡山県赤磐市立桜が丘小学校 指導教諭 古市 剛大
先日、初任者の時に勤めていた学校で一緒だった先生からメールがありました。
「新聞記事を見ました。活躍している姿が見られてうれしいです」と。
1月に、私が出版した絵本のことを地方新聞で記事にしていただいたのですが、とても小さな記事です。
あまり気付かれないかなあと思っていたのですが、読んでくださっていたのですね。
わざわざ連絡までいただきました。
もう10年以上もお会いしていないにも関わらず、連絡までくださって、私の方がとてもうれしい気持ちになりました。
いくつになっても、「あなたのことを見ているよ」という思いが見えてくるとうれしいものですよね。
きっと、みなさんも目の前の子どもたちにそのメッセージを届けていると思います。
毎日の声掛けやノートへのコメントなど。そして通知表の所見も。
そんな「あなたのことも見ているよ」にプラスして、道徳ならではのポイントを踏まえて子どもたち一人一人に伝えていきましょう。
道徳ならでは
道徳が教科になって何年も経ちました。
何度も評価をされてきただろうと思いますが、おさらいとして。
① 評価は記述で行う(ABCはつけない)
② 大くくりなまとまりで(1時間では評価しない)
③ 個人内評価(人と比べない)
ただ、通知表での評価に関しては、公簿ではないので、子どもや保護者への分かりやすさとして【②大くくりなまとまり】で書くよりも、【1時間の中での子どもの学び】を書いた方が伝わりやすいです。
ただ、気をつけないといけないのは
「それって本当に道徳の所見なの?」ということです。
昔、管理職の先生に
道徳が教科化されて間もない頃、出来上がった所見を管理職へもっていきました。
一人一人のよさを文章にまとめ、これで3学期の通知表の準備はばっちりだと思っていたのですが、所見を読んだ管理職から一言。
「これは何の所見?」
何のことかと思い、自分が書いた文章を読み返すと、
【ノートに自分の考えをしっかりと書きました】
【自分の思いを表現できました】
【たくさん考えることができました】
今思えば、よくこれで完成したと思えたものだなと恥ずかしく思います。
これって、道徳科でなくても書ける文章ですよね。
どの教科でもやっていることです。
では何を評価するのか
私が大事にしているのは2つです。
① 自分の事として考えているかどうか
② 多様な(多面的・多角的な)考えへと発展しているかどうか
①の自分の事として考えられているかどうかは、
「自分が教材の主人公ならどうするかなあ?」
「自分にも似たような経験があって、その時は…」
のような姿です。
②の多様な考えへと発展しているかどうかは、
「〇〇さんの言うことに納得できるな」
「もし〇〇な場合だったら…」
のような姿です。
この意識をもっていると「あ、今自分の事として考えているな」と授業者自身のアンテナに引っかかるようになるはずです。
でも残念ながら
この考え方が自然にできる子どもって少ないです。
でも子どものせいではありません。
授業者が、その見方や考え方を育てられていないからです。
ではどうするか?
授業の中に、自分の事として考えたり、多様に考えたりできるように授業を組み立てるのです。
発問にしてしまう
これが一番簡単かもしれません。
「みんなもこんな経験ある?その時どう思った?」
「みんなだったらどうする?どうして?」
これを積み重ねることで、子どもたちは道徳的な問題と出会ったときに自分の経験とつなげて考えたり、経験のない事でも自分のこれまでの生き方から想像したりして、自分の事として考えられるようになるはずです。
また、
「友達の意見で、納得した考えある?なんで?」
「違う場面でも(違う相手でも)同じことをする?」
これを積み重ねることで、子どもたちは道徳的な問題を立場や状況を変えながら考えたり、友達の意見を受けて考えを広げたりするはずです。
活動に取り入れる
他にも、主人公になりきって役割演技をするのもいいですよね。
教材に書かれていないことも先生が問い返せば、自然に子ども自身の思いを語ってくれます。
そして役割演技を終えたら、周りで見ていた子どもにどうだったかを聞きましょう。
「確かに…」「そうはいっても、やっぱり…」と、
考えを広げたり、相手の考えを踏まえつつ自分の考えを深めたりする発言が聞けるはずです。
私が考える所見の理想は
3学期の始めのうちに書くことです。
もっと言えば、冬休み中でもいいです。
書いていて気付くはずです。
「あれ、この子どうやって書こうか?」
「あと5人が書けない…」
どうしても書きやすい子とそうでない子が出てきます。
それに早めに気付くために所見を作ってしまうのです。
そして、書きにくい子を把握した状態で道徳授業に取り組むのです。
その子が輝ける瞬間を見逃さないようにしたり、その子が輝く瞬間を意図的につくったりします。
決して何かを言わせよう、やらせようではありません。
その子が興味をもてるような導入。活躍できそうな指名の順番。
その子の生活経験とリンクした問い返し。
きっとその子の良さが見えてくるはずです。
所見文例集はありがたい
特に、初めて道徳所見を書く先生にとっては助かるものです。
ただ、目の前の子どもは一人一人違います。
文例集をそのまま使って書くのは私はおすすめしません。
文例集を【参考に】しながら、子どもの良さをしっかりと文章にして伝えていきたいですね。
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古市 剛大(ふるいち たけひろ)
岡山県赤磐市立桜が丘小学校 指導教諭
「道徳の教科化」をきっかけに,道徳のおもしろさと難しさを感じながら,研究と実践を重ねてきました。子供の「知りたい」「話したい」を大事にした授業とは?道徳科における個別最適×協働とは?日々の授業から,そして指導教諭だからこそ見える・感じることを綴っていきたいと思います。
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