2026.10.25
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探究を探究する―プリンづくりから広がる追究(vol16)

前回は、5年生の総合的な学習の時間で取り組むカフェづくり「究極のひよカフェ」の実践として、4回目の試作品づくりに取り組む子どもたちの姿をご紹介しました。
今回は、その試作品づくりで成功したプリンをきっかけに、追究を深めていったAさんの姿を紹介します。活動がどのように進展していくのか、その子の変容の過程を追いながら考えていきたいと思います。

兵庫教育大学附属小学校 箱根 正斉

Aさんの豆乳プリン追究物語

2月20日 Aさん「卵パックで豆乳プリンの試作品づくり」

卵パックでつくった豆乳プリン

4回目の試作品づくりをきっかけに、Aさんのスイッチが入りました。学校での試作品づくりを終えてから、家でも豆乳プリンをつくってみたのです。

カフェで提供する際、1個ずつ作っていては効率が悪いと考えたAさん。どこにでもある卵パックを型として利用して、プリンの大量生産機をつくってきました。

さらに、きなこの作り方についても「ミキサーではだめだ」と考え、すり鉢でするほうがよいと調べて試そうとしていました。実際にその方法では、きなこにするまで2〜3時間もかかるため現実的ではありません。しかし、そこまで自分で調べ、考えて形にしてきたAさんの追究の勢いには、すさまじいものがありました。

※卵パックを食品の型として使用する際は、衛生面に十分な注意が必要です。

2月21日 朝の会

2月21日朝の会「家で豆乳プリンをつくったよ」板書記録

Aさんは翌日の朝の会で、家で追究してきた豆乳プリンについてクラスの仲間に伝えました。
「豆乳200mlに対してゼラチン2gだったから、豆乳を250mlにするならゼラチンは2.5gにしようと思う」

これは6年生の算数で扱う「比」の学習とも深くつながる部分です。同じ比率を保つことで、硬さや味を一定にしようと考えていたのです。
プリンパック(卵パック)を使うことで効率化も図ろうとしていたAさんは、発表の最後にこう呼びかけました。

「プッチンプリンくらいの硬さにしたい。明日、家で作ってくるから、食べるんじゃなくて『ツンツン』って触って硬さを確かめてみてよ!」

さらに朝の会のあと、Aさんは誰に言われるでもなく自分の考えを整理し、振り返りを書いていました。
普段の授業で教師が設定した振り返りの時間には、なかなか筆が進まないこともあるAさんです。しかし、自分自身の追究の中で、今つづっておくことが考えの整理になり、次につながると実感したからこそ、自発的に書き記したのでしょう。

自分のタイミングで振り返り、次へつなげる。
Aさんが立ち上がるタイミングはその子の内側にしかないのだと、改めて感じました。

2月24日 プリンの追究 第2号

2月24日にも、Aさんはプリンについてさらに追究を重ねてきました。その名も「プリン第2号」です。

「1号よりハードな食感になりましたが、ゼラチンが溶けきれず、粒々が残ってしまって食感が気持ち悪い」
振り返りにはそうつづられていました。

続けて「プリン第3号」も作りました。その様子は動画に収められており、朝の会でみんなに披露されました。
動画の中で型からプリンを出す際、プリンが型くずれしてしまう様子がカメラに捉えられており、なんともユーモアあふれる映像となっていました。

このように家で何度も試行錯誤を重ねるものの、なかなか思うようにはいきません。それでもうまくいかないけれど、やめられない。そんなAさんの姿は探究そのものであり、非常に価値ある学びの姿でした。

朝の会は子どもたちだけで進行していましたが、自分たちで場を回しながら自然ときき合いを成立させていました。
追究のプロセスを教師として見取りたい気持ちや責任はもちろんあります。しかし、ここまで子どもたちの情熱が高まってくると、子ども同士だけで十分に学びを深めていけるのだと感じさせられました。

2月25日 朝の会「プリン第3号」

2月25日朝の会「豆乳プリンの物語」板書記録

2月25日の朝の会でも、Aさんから「プリン第3号」の話題が持ち込まれました。家では30分で固めることに成功したようです。

きいている子がネットで調べると、豆乳200mlに対してゼラチン2.5gがよいことが分かりました。
また、型から取り出す際には、BさんとCさんから「空気を少し入れるときれいに抜けるよ」というアドバイスがありました。

さらに、きなこの甘みについては、別チームのDさんから「グラニュー糖やブドウ糖と組み合わせると甘みが引き立つよ」と教えてもらっていました。

2月26日の追究

2月26日の朝、Aさんはさらに豆乳250mlに対してゼラチン5gという配合で試してきました。
なかなか思い通りの硬さにはなりませんが、自分で確かめるだけでなく、友だちに触ってもらって硬さを確認していました。

2月28日の「究極のひよカフェ」本番が目前に迫る中、こうした追究をギリギリまで繰り返し、本番の調理へと生かしていくのでした。

Aさんの追究が他の子にも火をつける

2月27日には、Eさんが家で購入した豆乳を学校へ持ち込んできました。自分も何か役に立ちたいと考えて動いたのでしょう。
Eさんは普段、自分から進んでレシピを調べたりすることが少し苦手で、調理や試食の場でもどこか遠慮がちなところが見られる子でした。

そんなEさんの、仲間と一緒に成功させたいという精一杯の思いが、この行動に表れていたのだと見取ることができます。
Eさんの行動を引き出したのは、Aさんの追究する姿だったのでしょう。

仲間の熱い思いに応えたい。
Aさんの発する熱量がクラスの他の子にも伝わり、輪が広がっていくのを感じた瞬間でした。

その子の思いがふくらみ、願いが太くなるために

今回は、豆乳プリンづくりに没頭するAさんの姿を紹介しました。
子どもの学びのスイッチがいつ、どこで入るのかは誰にも予測できません。今回、教師としては「やってみないとわからないよ」と背中を押す声かけをしましたが、その言葉が響くタイミングはその子自身の中にしかありません。

大切なのは、日頃から子どもの姿をじっくり見つめ、ともに活動しながら、その子の心の中にある小さな声や訴えに耳を傾け続けることなのだと改めて感じています。

次回も、「究極のひよカフェ」に向けて追究を深める子どもたちの姿をご紹介します。

箱根 正斉(はこね まさなり)

兵庫教育大学附属小学校


個がくらしを見つめ、その個が育つことを考えて実践に取り組んでいます。個が立ち、協働し、探究する。個がくらしをつくり、個が生きる。
生活科・総合的な学習の時間を中心として、その個が自分の思いを膨らませながら、自らの願いを実現し、自己実現を更新していく。
そんな個の育ちを目指して実践しています。

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