2026.10.15
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算数を「道具」として使うオープンエンド課題~住みたい区、お得な買い物、「みんな」の意味を考える~(2)

今回は、前回に紹介しきれなかったオープンエンド課題を三つ紹介します。

東京都品川区立学校 平野 正隆

課題④住むなら何区?

5年「単位量あたりの大きさ」

人口密度(筆者作成)

東京23区の人口と面積のデータを使い、「自分ならどの区に住みたいか」を考えます。

児童は、各区の面積や常住人口などの資料から人口密度を求め、、昼間人口も含めてそれぞれの地域の特徴を捉えます。
さらに、常住人口と昼間人口を比較することで、「住んでいる人が多い地域」と「昼間に人が集まる地域」には違いがあることにも気付くことができます。

その上で、「あなたが住むなら23区のどこを選びますか。その理由を算数のデータを使って説明しましょう」と問いかけます。

ここでは、「人口密度が低い区が正解」ということにはなりません。
「人が多く、にぎやかな地域がよい」「人が少なく、ゆったりした地域がよい」「昼間人口が多い地域の方が便利そうだ」など、児童によって判断は異なります。

算数によって地域の特徴を捉え、その数値を根拠にして自分の価値判断を説明する課題です。

課題⑤どの店で買うとお得?

5年「割合」

同じ商品を販売している複数の店を設定し、それぞれ異なるサービスを提示して、「どの店で購入するのが一番お得なのか」を考えます。
例えば、ある店では15%引き、別の店では200円引き、さらに別の店では17%のポイント還元、別の店ではラッピングが無料というように、異なる条件を設定します。

さらに、「家族への誕生日プレゼントを買う」「予算は5000円」「ポイントは次回の買い物で利用できる」といった具体的な場面を設定すると、単純な価格比較だけでは判断できない状況になります。
ここで重要なのは、「お得」という言葉の意味を児童自身が考えることです。

単純に支払う金額が最も安い店を選ぶのか、ポイントまで含めるのか、ラッピング代を考えるのかによって、答えは変わります。
例えば、「今回はプレゼントなので、少し高くてもラッピングが無料の店を選ぶ」という判断も考えられます。

つまり、割合によって価格を比較するだけでなく、「何をもってお得とするのか」という判断基準そのものを考える課題になります。

課題⑥ 「みんな」って?

6年「資料の整理」

最後は、日常生活の中で使われる「あいまいな言葉」を算数によって明確にする課題です。
例えば、次のような会話を提示します。

「ねぇねぇ、もっとお小遣いを増やしてよ!」
「なんで?」
「だって、みんなのお小遣いはもっと多いよ!」

ここで、「みんな」とは一体誰を指しているのでしょうか。

自分よりお小遣いが多い人を「みんな」と呼んでいるのでしょうか。それとも、クラスの平均値より少ないことを「みんなより少ない」と表現しているのでしょうか。あるいは、中央値や最頻値と比較しているのでしょうか。

実際のデータを提示し、「この場合、『みんなのお小遣いはもっと多い』という言い方は妥当でしょうか」と問いかけます。

児童は、平均値、中央値、最頻値などの代表値を求めたり、それぞれの代表値より多い人・少ない人がどのくらいいるのかを調べたりしながら、「みんな」という言葉の意味を考えます。

ここでは、代表値を計算できれば、それで終わりではありません。「平均より少ないから『みんなより少ない』と言ってよいのか」「中央値より少ない人は何人いるのか」「何%くらいの人が多ければ『みんな』と言えるのか」といった問いへと発展させることができます。

つまり、日常のあいまいな表現を、算数の言葉やデータによって捉え直す課題です。

オープンエンド課題で大切にしたいこと

これらの課題に共通しているのは、単に「答えが複数ある」ということではありません。
大切なのは、児童自身が条件を設定し、算数を使って比較・検証し、その結果を根拠として自分の判断を説明することです。

例えば、「学校Tシャツはいくらで売ればよいか」という課題では、500円、1000円、1500円のどれが正しいということではありません。
「なぜその価格にしたのか」「どのような条件を設定したのか」「条件を変えると結果はどう変わるのか」「自分の考えはどのデータによって支えられているのか」といったところに、算数としての学びがあります。

また、すべてを算数だけで決める必要もありません。
「節電するなら、どこまで暗くしてよいのか」「住むなら、人口密度が高い方がよいのか」「プレゼントなら、最安値が本当に一番よいのか」といった問題には、算数だけでは決められない価値判断があります。

だからこそ、算数で考えられる部分を明確にし、算数では決めきれない部分については、自分の価値観や他者の考えと比較しながら判断することが重要になります。

オープンエンド課題は、「答えを自由にしてしまう課題」ではありません。
むしろ、条件や根拠を明確にしながら、「私はこう考える。なぜなら、算数を使って考えるとこうなるからです」と、自分の判断を説明できる児童を育てるための課題です。

算数を「正解を出すための道具」から、「よりよく判断し、現実の問題を考えるための道具」へと広げていくことに、オープンエンド課題の大きな可能性があると考えます。 

平野 正隆(ひらの まさたか)

東京都品川区立学校


研究会での実践報告や校内での若手教員育成などの経験を通して、自分の経験や実践が広く皆様のお役に立てるのではないかと考えております。大人・子どもに関わらず、「明日から頑張れそうです」「明日が来るのが楽しみです」と言ってもらえるのが私の喜びです。

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