2020.08.19
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「主体的・対話的で深い学び」を支える言語スキルー部活動でも対話の場面をー(No.8)

これまでは、国語の授業における「対話」の場面をどのように作ったり、指導したりするかをご紹介してきました。今回は、授業以外の場面での対話の活用についてお話したいと思います。

小平市立小平第五中学校 主幹教諭 熊井 直子

中学校の教員をしていると部活動の顧問を引き受けることがほとんどだと思います。人数の多い部であれば、学級担任をしているのと同じ(またはそれ以上の)人数の集団をまとめなければならないこともあります。でも、授業の準備や学級のこと、学年の仕事などを行っていると部活動に割ける時間とエネルギーはそんなに多くありません。今は外部指導員も導入されてはいますが、学校全体でお願いできる人数にも時間にも限りがあり、顧問が全く部活動を見ないということはできません。そんな中で、4月の「クラス開き」と同じように「部活開き」を大切にすることと、部員との対話を意識することで、限られた時間の中でも充実した活動ができる集団をつくることができると考えています。
その時のポイントは次の3つです。

①自分自身で確認する場面と生徒に任せる場面とを整理する。

②今のチームの状況について話す機会をこまめに作る。

③関係する大人同士のコミュニケーションをさぼらない。

今回は、この3つそれぞれについてお話します。

1 自分自身で確認する場面と生徒に任せる場面とを整理する。

会議等が入ってしまったり、定期考査の採点や次の日までにどうしても終わらせなければならない仕事があったりして、放課後の活動全てを見ることができない場合は多々あります。そんな時は、部長に練習の指示を出し、生徒自身で活動を行うことになると思うのですが、全てを生徒に任せてしまうと、準備や片付けなどをいつも同じ生徒が行っていたり、練習中に部長やキャプテンの言うことをきかない生徒がでてきたりと、生徒だけでは収集のつかない状況になってしまうこともあります。そこで、「ここだけは教員が確認する!」というところと、「ここは生徒に任せてしまっても良い」というところとを意識的に整理することにしています。

私が特に大切だと考えているのは、活動開始の時に活動場所にいることです。行うことは出席の確認、体調の確認、練習の指示出しで、5分もあれば終わります。終学活が長かったり、掃除があったり、放課後の委員会や係活動があったりと、平日の生徒は部活動以外にもやることがいろいろあります。そんな中、教員が確認しないと油断して活動開始時間を守らない生徒も出て来ます。練習開始に遅れた生徒が途中から参加する場合、気が緩んでしまったり運動部の場合は怪我をしやすくなってしまったりします。徹底されなくなってしまったことを生徒だけに管理させるのは大変です。

だから、私は活動開始の時には活動場所にいるようにし、誰がどのような理由で欠席(または遅刻)なのかを確認します。そして、遅れてきた生徒が練習に参加する前にどのような準備をするかを伝えます。それ以降の練習にいられなくても、最初の状況を確認していれば「活動の様子をわかろうとしてくれている」という部長の安心にもつながりますし、「先生は活動を把握している」という部員の緊張間にもつながります。また、「よし、今から練習だ」という活動に向けた気持ちの切り替えにもつながると考えています。「より良い部活動にする」という共通の目標に向けた前提の共有ができるのです。

2 今のチームの状況について話す機会をこまめに作る。

学級でも「1学期の目標」「2学期の目標」……と目標を立てますが、部活動においても同じようにどのようなチームにしていきたいのか、現状はどうか、それについて自分はどのように取り組んでいるのか、といったことを話す機会を作ることを心がけています。しっかり時間をとると良いのは、年度当初と3年生引退後のチーム立ち上げに関わるときと、公式戦が終わったあとですが、それ以外にも日々の練習の開始や解散の前のミーティングの中で「今日の練習の目標は?」「今のチームの課題は?」と聞くようにします。顧問やコーチだけでなく生徒自身にも考えさせたり話させたりすることは、自主的な取り組みにつながります。このような問いかけを繰り返していると、自分たちで練習のメニューも組めるようになっていきます。

「今はどんなことが課題?」

「どんな練習がしたい?」

「それならばこんな流れで練習したらどうかな?」

というような言葉かけで一緒にメニューを組むようにすれば、たとえ顧問がすべての練習を見ることができなかったとしても、自分たちで課題意識をもって練習に取り組むことができます。

また、あまりにも練習を見に行くことができないことが続いたときなどは、「最近練習で困っていることはない?」「みんなちゃんとできてる?」など、個別に声をかけて聞いていきます。練習を作るのは自分たちだけど、最終的には支えてくれる大人の存在がある、という意識を作るためのちょっとしたコミュニケーションが大切だと思います。

3 関係する大人同士のコミュニケーションをさぼらない。

例えば顧問二人体制の場合や、外部指導員と協力して指導を行う場合など、部活動に関わる大人の組織のあり方は様々です。いずれにしても大切なことは、関係する大人同士のコミュニケーションをきちんと取ることだと考えています。練習メニューについてや生徒の様子など、活動内容に関することはもちろんですが、どの程度練習に関わっていきたいのか、休みはどの程度必要かなど、指導への関わり方についてのことも共有しておいた方が、トラブルが起こらなくてすみます。

特に作成した書類のデータを個人フォルダで保管しない、部活動関係の資料がどの棚にあるかを伝えておくなど、資料やデータの共有をあらかじめしておくことでより協力しやすくなります。「この人がいないとできない」ではなく「これがあれば誰でもできる」という状態をつくることで、部活指導をひとりで抱え込まなくてすみます。

おわりに

今回は、授業以外の場面での対話として部活動を取り上げました。生徒や教員同士でのコミュニケーションを図ることで、少しでも負担を減らし、生徒にとっても有意義な活動となると良いなと思います。

熊井 直子(くまい なおこ)

小平市立小平第五中学校 主幹教諭
英語もできる国語の先生を目指しています。2016年度に1年間フィンランドの高校で国語の授業を研究していました。英語教育に力の入る今だからこそ母国語教育のあり方を今一度よく考える必要があるのではないかと考えています。

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