2022.07.11
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主体的・協同的に学ぶ児童・生徒を育む~振り返りを活用しよう~(5)

小学校で,子どもたちが主体的で協同的な学びを実現できる学習を研究してきました。今年度は,中学校へ異動となり,新たな気持ちで研究を継続していこうと思っています。子どもの実態によっては失敗もありました。が,子どもたちはいつでも生き生きと学習に励む姿を見せてくれました。1つの提案として読んでいただけたら幸いです。 学習づくりについては「①課題設定の工夫②子どもと子どもをつなぐかかわり合いの活動③振り返りの活用」の3つの手立てが大切だというお話ししました。今回は最後の柱となる「③振り返りの活用」について話します。

愛知県公立中学校勤務 都築 準子

学習の「振り返り」は必要か

私が考える振り返りとは,「確認して,生かす」ためのものです。
「子どもが何をどう学習したか確認して,自分の学習の仕方に生かす」
「誰の意見や考えがよかったのか確認して,次の自分の関わり方に生かす」
「教師は子どもたちがどんな考えをもっているのか確認して,新たな学習に生かす」などです。
児童は学習を振り返ることで,自分の学びを客観的に把握・認識し,自分の強みを発見します。また,自分の頭の中の考えを整理することで,理解の不十分だったところを認識したり,さらに新しい課題を発見したりすることも起こります。
教師は児童の達成度合いを確認し,次の活動へのヒントとします。次の時間には,導入で全体への働きかけとして使うこともできます。

このように学びを振り返りながら,スパイラルに学んでいくことで,児童は自ら考える思考力を身につけていくのです。  

全国学力調査でも「振り返り」をしている学校の児童は,していない学校と比べて,学力が高いことが分かっています。

学習の最後に,課題が達成できたか,ぜひ「振り返り」をしましょう。児童が仲間とかかわる活動において,生まれた認知の変化を「振り返り」によって自ら数値化・言語化することで,より深い学びへつながっていきます。

「楽しかった」で終わらない「振り返り」の仕方って

振り返りシートの例

「振り返り」には,学習の課題が「分かる(できる)ようになったか」「どのような考えが参考になったか」「だれとの関わりによって分かる(できる)ようになったか」などを書くようにします。

<振り返りシートの内容>
①本時の課題を書く。
②課題についてできたかできなかったか自己評価する。
③自分で積極的に学習を進めることができたか自己評価する。
④分からないことを教えてもらったり,分かったことを友達に教えたりで きたか自己評価する。
⑤感想にだれの考えがよかったか,納得できたかなど,友達とのかかわり  について書くようにする。

振り返りの方法はとりあえず何でもいい!!

各学年の実態に合わせて,振り返りの方法を模索してみましょう。
まずは,「今日の学習が楽しかったよっていう子はいますか」とか「今日の学習の○○ができたよって思う子はいますか」とか「だれの意見が参考になりましたか」「だれと学習してできるようになりましたか」といった質問に,手を挙げて答えてもらう。
「振り返りシート」などを使って,◎○△に丸をつけたり,自分の学びを1~5で数値化したりする。
学習の最後にノートに今日の感想を書くだけでもいい。

とにかく,子どもたちに今日の学習について,自分のことを客観的に見つめる時間をとることです。

最初のうちは「いいこと」を振り返る

クラスの信頼関係ができていない時期には「いいこと」を振り返るのがおすすめです。「学習の楽しかったところ」「誰の意見がよかったか」などです。それを教師が紹介したり,価値付けしてやったりすることを続けることで,子どもたちはだんだんと自分たちで価値付けしていくことを学びます。

クラスの信頼関係ができてくると,「できなかったこと」や「いやだったこと」「悔しかったこと」「残念だったこと」などネガティブな思いもみんなで共有できるようになります。そうしたら,これからどうしたいか子どもたちだけで考えて次の学習課題を創っていくこともできます。

「振り返り」は反省ではありません。うまくいったときも,うまくいかなかったときも自分の学びを言語化し,自分のことをメタ認知して,これからやりたいことや自分の強みなどを発見し,よりよい学びへとつなげていけるようになります。

「振り返りシート」の実際

以下は,自分がかつて行った学習の「振り返りシート」の内容です。(3年国語)

<授業の楽しさや意欲的に取り組めた喜びを書いた児童>
「じゅぎょうのとき,自分たちでグループでやったのでむずかしいところもあったけど,たのしかったです。ことしで1ばんのたのしいじゅぎょうでした」
「こんなにたのしいじゅぎょうをはじめてやりました。先生たちがいっぱいきたときはきんちょうしたけど,きもちよくできました」
「(略)みんなと楽しい時間をすごすことができて,とてもうれしかったです。いままでの国語のじゅぎょうで一番心にのこりました」
「この国語のじゅぎょうは,自分的にはすごいがんばった感じでした。めっちゃくちゃ楽しかった」
「記号を家の人に聞いたりしてがんばりました。清書もていねいに書くのをがんばってほめてもらえて  本当に楽しかったです!」

<友達とのかかわりについて書いた児童>
「みんなといっしょだからとってもたのしかった。先生たちがきてどきどきしたけどおもしろかった」
「みんながきょうりょくして,ほうこくしょを書けることが分かりました。とてもしっかりとがんばれ ました。楽しかったです」
「みんなは,こんなきごうをかいてきたり,しらべたりしたのが,はっぴょうし合ってよくわかりました。また,こういうじゅぎょうがあるといいなとおもいました」
「Aさんのカードがえもじょうずで,意味もとっても分かりました」
「(略)Bくんの読み方がとてもじょうずでした。Hくんのせつめいがとてもじょうずだった。せつめいしてくれた人がじょうずにせつめいしてくれたので,すぐにわかりました。もういちどやりたいと思いました」
「カードをたくさんの友だちにしょうかいできて,うれしかったです。とくによかった友だちはCさん  です。よみかたがよかったです」
「たくさんの友達と話せてたのしかった。がんばったことは,自分で思ったことを言えたからです」
「Dさんのせつめいのしかたがよかったです。みんなが大きな声ではっきりはなしてくれたのでよかったです」
「記号を友だちにしょうかいできて,知ってもらってよかったです。とくにEちゃん,Fちゃん,Gちゃんがよかったです」
「みんなそれぞれ,分けかたがちがって,おもしろかったです」
「わたしはこんなたのしいじゅぎょうなんて,ありませんでした。ちょうさカードを10まい作ったのでとっても楽しかったです。ほうこく書もグループでいっぱい考えて,とってもドキドキしたけど,友だちとたのしくすごせたのでよかった」
友達と関わりながら,学習を深めていったことがうかがえる内容です。

児童は学習を振り返ることで,自分の学びを客観的に把握・認識し,自分の強みを発見します。また,自分の頭の中の考えを整理することで,理解の不十分だったところを認識したり,さらに新しい課題を発見したりすることも起こります。

教師は児童の達成度合いを確認し,次の活動へのヒントとします。次の時間には,導入で全体への働きかけとして使うこともできます。このように学びを振り返りながら,スパイラルに学んでいくことで,児童は自ら考える思考力を身につけていきます。

次回からは,今までの私自身の実践と今までの勤務校でのみなさんの実践を書きたいと思います。  

都築 準子(つづき じゅんこ)

愛知県公立中学校勤務


仲間とかかわり合いながら主体的・協同的に学ぶ児童の育成を研究・実践しています。18年にわたる小学校勤務において,協同学習を取り入れた,全員が参加する授業作りを行ってきました。まずは,読んでくださる方に寄り添い,思いを共有していただけるよう心がけます。

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