「協働的な学び」を考える
「個別最適な学び」と「協働的な学び」を一体的に充実し、「主体的・対話的で深い学び」の実現に向けた授業改善につなげていくことが必要だと言われています。今回は、「協働的な学び」について考えていきます。
東京都品川区立学校 平野 正隆
協働的に活動したいと思う場面はどんなときか
「協働的な学び」とは、簡単に言えば、他者と関わりながら取り組む学習のことです。では、ペア学習やグループ学習を取り入れさえすれば、それは成り立つのでしょうか。
「協働的な学び」を育むうえで、そういった学習形態を取り入れる前に考えておかなければいけないのが「協働的に活動したいと思う場面はどんなときか」です。それを知っていれば、子どもたちが協働的に活動できるように仕掛けることができます。
教師が「隣の人と話し合いましょう」「グループで相談しなさい」と、言わずとも、子どもたちは自然発生的に協働的に学び始めます。私は、これを「学び合い」として、日常的に取り入れています。では、協働的に活動したいと思う場面はどんなときなのでしょうか。
●分からないとき
指示が分からない、問題の意味が分からない、解法の見通しが立たないなどが挙げられます。「まずは自力解決させないと」と考える方も多いですが、苦手な子や自信のない子に長時間の自力解決の時間を与えれば、思考は停止し、苦痛な時間が流れるだけです。教師が言わなくても、子どもたちは、自力解決から始めるものです。だから、班のなかでは自由に相談してよいことを伝え、教師は集中しきれない子へ声をかけたり、困っている子を別な子へつないであげたりする役割に徹します。
●不安なとき
自分の考えがまとまったり、自分なりに答えを導き出せたりしても、本当にそれでいいのか不安になります。学年が上がるほど、その不安は顕著に見えてきます。グループ内で確認しておくことで、その不安は解消され、自信につながります。教師は、各班を回り、良い考えをしている子がいれば、「それを班で共有してみたら」と声をかけます。
●他の考え方を知りたいとき
多様な考え方や解法があることに気付くと、自分が考えた方法が最善なのか、どんな考えが他に存在するのかと思います。そして、グループ内で共有し合うことで、考えが広がったり、深まったりするのです。そこで教師は、協働的な学びになかなかうつれない班に「そういう考え方があるんだね」「その方法は面白いから班で紹介してみて」などと、声をかけます。
●できそうでできないとき
ミスコンセプション(誤概念)に直面したとき、そう考えていたのは自分だけなのかと確認したくなります。最初に挙げた「分からないとき」とは少し違います。例えば「周りの長さが長いほど面積は広くなる」「6畳に4人、8畳に6人は同じ混み具合」という間違った概念などです。算数は、誤概念を生かしやすい教科です。この誤概念に子どもたちが困惑したタイミングをねらって、時には全体に対して、時には班ごとに「困り感」を共有するようにします。
●考えの方向性を統一しなければいけないとき
グループとして、ある課題についてどう考えるかをまとめるときに話し合うことが欠かせません。また、その考えにもとづいて、何か活動をしていくとなれば、なおさら話し合いで足並みをそろえていく必要があります。例えば、「資料の調べ方」の単元で、「どっちのクラスの方が握力調査の記録が良いと言えるか考え、発表しよう」などです。意見をまとめるような課題を提示することで、協働的な学びを深いものにしていきます。
●自分とは正反対の意見に気付いたとき
正反対の意見を言われると、その相手に自分の意見を理解してもらおうとしたり、相手が何故そう考えるのかを知りたくなったりします。そして、学びが広がったり、深まったりします。教師は、正反対の意見をもつ子を班や全体に取り上げ、つなぐ役割を担います。
このように、「協働的に活動したいと思う場面はどんなときか」を教師側が理解し、協働的な学び(学び合い)を「させる」ではなく、「仕掛ける」のが大切だと考えます。
平野 正隆(ひらの まさたか)
東京都品川区立学校
研究会での実践報告や校内での若手教員育成などの経験を通して、自分の経験や実践が広く皆様のお役に立てるのではないかと考えております。大人・子どもに関わらず、「明日から頑張れそうです」「明日が来るのが楽しみです」と言ってもらえるのが私の喜びです。
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