2023.12.26
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キャリア教育の視点からの取り組み「笑育」(3)

本校では、学校教育目標を「心~魅力ある生徒の育成~」と掲げ、その実現に向け、基礎的・汎用的能力の育成を目指した、様々なキャリア教育の取り組みを進めています。その成果が認められ、平成31年1月に、キャリア教育優良学校として、文部科学大臣表彰を受けました。前回では、キャリア教育の視点からの『笑育』の取り組みにおける子どもたちの活動の様子や、4件法による事前・事後のアンケートによる効果検証を紹介しました。今回は、活動後に子どもたちが書いた自由記述からの効果検証を紹介します。

大阪市立中学校教諭、日本キャリア教育学会認定キャリアカウンセラー 青木 信一

テキストマイニングによる自由記述の分析

テキストマイニングによる語と語の共起関係

笑育』活動終了後、子どもたちに「笑育を終えての感想を書こう」と「自分にとって、ためになったと思うことがあれば書こう」という題で、自由記述形式で総括を書いてもらい、その自由記述から、テキストマイニングによるKHCoderを活用した分析をしました。
KHCoderとは、テキスト型データの計量的な内容分析もしくはテキストマイニングのためのフリーソフトウェア頻出語を確認したうえで、それらの語の共起関係を探ることを通して、恣意的になりやすい手作業を極力廃した分析方法です。その結果、画像のような共起関係が見られました。
この画像から「自分にとってためになったこと」として、4つの特徴的な記述の一群が見られました。実際の子どもたちの記述と共に紹介します。

1.人前で発表する機会を通して、自信がついた。

・自分は人前で話すのが苦手やったけど少しは人前に慣れることができた。
・みんなの前に出て発表するのって、面白いなと思った。
・たくさんの人の前で発表して、勇気が持てた。
・いざ発表すると、自分が思っているほどのことではなく、人前に出るのが少し得意になった。
・たくさんの人前で話すことの大変さがわかった反面、まわりの優しさや温かい気持ちに気づくことができた。
・授業中に発表することが平気になった。
・やってみて、人前で話したり、相手に何か伝えるのって楽しいと感じた。
・人前で話すのが苦手だったけど、少し克服できた。
・みんなががんばって発表する姿を見たら、自分も楽しんで発表できた。
・人の前に立つのは元々から得意だったが、もっと得意になった気がする。
・久しぶりに人前で話した。
・人前で話せる良いチャンスだった。
・ふだん人前に出ない私にも、平等に発表の機会があり良かった。

2.言葉の持つ大切さを知った。

・言葉を伝えるって、簡単に見えて、とても難しいことだなと思った。
・大きな声で分かりやすく、言葉を相手に伝える方法を学ぶことができた。
・私は滑舌があまりよくなくて、相手に言葉を伝えるのが苦手だったけど、大切なのは気持ちを込めることだと思い、少し自信がついた。
・漫才が完成するまでには、相手の意見を聞いて、自分の意見を言って、時に衝突し、勉強になった。
・相手を傷つける言葉は絶対に言ってはダメということを知った。
・人の話を聞く大切さ、思ったことを相手に伝える大切さがよくわかった。
・しゃべり方だけで印象が大きく変わることを知った。
・笑いには、いい笑いと悪い笑いがあり言葉や伝え方をちょっと間違うと、悪い笑いになってしまうと知った。
・言葉は凶器にも魔法にもなるということを学んだ。
・人に聞いてもらいやすい話し方を意識してから、友達と話している時「えっ?」と聞かれることが少なくなった。
・笑育を経験して、学年目標のあじみを考えるようになった。

3.普段できない貴重な体験ができた。

・みんなでアイデアを出し、協力し合ってネタが完成。相方がいないとコンビは成立しないし、相方がいたら人を笑顔にできる。それって奇跡だと思った。
・普段はできない体験。私は「やるならとことんやろう」と思った。この体験はまた次の道へとつながるはず。
・自分の心の中で点数をつけたら200点!
・初めての体験ばかりで緊張したが、芸人さんに励まされ勇気が出た。
・最初緊張したけど、やり終えた後、達成感があった。
・いつもは見ている側の漫才を、逆の立場ですることでいい経験になった。
・現役アナウンサーの方に発声練習を学んだおかげで、大きな声で発表できた。
・他の人のキャラになりきるなど、初めての体験ばかりで、すごくためになった。
・初めての体験をする中で、いつもは見れないみんなの良い面が見れた。
・自分たちの力で試行錯誤の末、完成させた貴重な体験だった。
・職業講話で松竹の人やチキチキさんの仕事に対する思いが聞けて、自分の将来を考える、いい機会になった。

4.人と協力し、作り上げる楽しさを知った。

・普段あまり話したことがない人と、話し合ったり、意見を交換して、仲が深まった。
・人の漫才を見て、みんなで声を出して笑ったり、大きな拍手をしたり、発表する人だけでなく、みんなで作りあげていく大切さを知った。
・発表する方も見る方もみんなが一生懸命やっていて、みんなで協力したから成功したと思う。
・グループワークでは、あまりしゃべらない人と一緒やったけど、みんなで考えたり話したりして、他の人がどんな考えをしているのかを考えるようになった。
・笑育をして、みんな楽しかったと言っていたし、よりみんなのコミュニケーションが深まったと思う。

まとめ

これらの結果からも『笑育』が、楽しい思い出づくりのためだけの行事ではなく、子どもの基礎的・汎用的能力の育成において、一般化という観点では課題が残るものの、有効な方策であると考えています。
 

青木 信一(あおき しんいち)

大阪市立中学校教諭、日本キャリア教育学会認定キャリアカウンセラー、スクールカウンセリング推進協議会認定ガイダンスカウンセラー
大阪市立中学校で社会科教諭をしています。日本キャリア教育学会認定のキャリアカウンセラーとして、中学校教諭の立場から、積極的にキャリア教育の推進と普及に取り組んでいます。


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