戦略的思考〜立ち歩く&2人組は立たせろ〜(4)
今期も担当させていただくことになりました。が、今期の連載で私の連載も最終になります。今期は「戦略的思考」をテーマに、学級づくり・授業づくりについて綴っていきます。深い学びを実現するにも、より良い学級を実現するためにも「戦略的思考」は必要不可欠です。
※戦略的思考の書籍化のオファー、待っています!
京都教育大学付属桃山小学校 樋口 万太郎
どうしてみなさん立ち歩かせないのでしょうか。それは授業中に立ち歩かせると「学級崩壊しているように見える…」「学習規律が…」と思うからでしょう。もしかしたらこういった取り組みをして、管理職や学年主任から注意された方もいるのかもしれません。
もちろん目的やねらいもなく立ち歩かせるのではありません。目的やねらいもなく立ち歩かせるのは、学級崩壊への道まっしぐらです。しかし、目標や目的を達成するために立ち歩かせようという戦略なら有効です。
例えば、4年「折れ線グラフ」の学習で、グラフの特徴を読み取るために、子供たちに「グラフを見て思ったことやわかったことを20個書きましょう」と発問をし、2分間1人で考えさせます。しかし、たった2分間では、20個書ける子はいません。そこで、「立ち歩いて、協力しあってもいいから、20個書き切りましょう」と言います。すると、多くの子供たちは協力し合い、20個をクリアしようとアクティブに動きます。
1人では無理だったことも、複数だと短時間で達成することができます。このときに、「仲間と協力し合うよさや大切さ」を実感できます。だから、樋口学級では、一人で考える時間に立ち歩いてもいいようにしています。
わからない子はヒントをもらいに、
先生のところや友だちのところに立ち歩きます。
問題を解けた子は困っている子の元へ立ち歩きます。
ただ、4月当初は「こういう目的やねらいがあるから、立ち歩いていいよ」と言っても、子供たちは動き出しません。「立ち歩いたらダメ」という意識があるのでしょう。
動き出しても、授業とは関係のない話や騒いでしまう子もいるかもしれません。そんなときはその都度、この活動を取り入れる目的を語り、指導をしましょう。いきなりはうまくはいかないかもしれません。落ち着かない雰囲気のときは、立ち歩かせないというのも戦略です。またこのとき、「協力しあっても」といったのは、
一人で考えたい子がいるかもしれないからです。
一人で考えたいのであれば、一人で考えてもいいのです。
絶対に友だちと考えるということを強要してはいけません。またグループが充実していると立ち歩かなくなります。そんな時も強要してはいけません。
4月当初は、「授業中に立ち歩かせる」こと以外にも、「隣の人と話してごらん」といったペア活動を教師の指示でさせることが多いです。しかし、日がたつにつれて、教師が指示をする機会を減らしていき、子供達が自然と話しあえるように促していきます。その結果、誰も立ち歩かないのであれば、それでも構いません。それは、子供達が選択した学び方なのですから。
子供が立ち歩いているとき、教師は子供たちの様子をしっかりみておくことが大切です。この子は誰と話し合っているとか、ここに困っているのかをしっかり把握しておきます。
2人組での交流は立たせろ
(4年「面積」の学習。秋元さんが面積の求め方を発表した後)
「全員立ちましょう。今から、秋元さんの面積の求め方を確認します。話し合えた 2人組から座りましょう」
と子供たちに指示をします。話し合ってすぐに座る組もあれば、しばらくしても立っている2人組もいることでしょう。そのような2人組には、すぐに支援を行うことができます。
「支援がいる子がすぐにわかる」という戦略です。
このとき支援をすることができるのは、教師だけではありません。立っている2人組がいれば、座っている子たちからも支援や応援をさせることができます。応援といっても、「ガンバレー」「ファイト」と言うのではありません。面積の求め方に関するヒントを言わせるのです。ヒントを言うためには、相手がどこまでわかっているのか、何がわからないのかということを知らないといけません。知るためにはコミュニケーションが必要です。
つまり、相手と関わりあう機会が増えるのです。また相手にヒントを言うには、しっかり考え方を理解していないといけません。関わりあうことで考え方の理解を深めることにもつながります。
わかったという状態は「人に説明し、相手がしっかり理解してもらえたとき」と子供たちには伝えています。2人組の交流で立たせる場面は、
問題の設定を確認したい場面
大切な考えを理解させたい場面
で使用することが有効です。それ以外の2人組の交流は、座ったままでも構いません。

樋口 万太郎(ひぐち まんたろう)
京都教育大学附属桃山小学校
みんなが「わかる」「できる」、そして「楽しい」授業を目指し、目の前にいる子に応じた指導を行っています。キーワード「学級経営」「算数」「タブレット端末」。
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