戦略的思考〜「同じでーすを信じるな」&「「いいでーす」を今すぐやめよう」〜(1)
今期も担当させていただくことになりました。が、今期の連載で私の連載も最終になります。今期は「戦略的思考」をテーマに、学級づくり・授業づくりについて綴っていきます。深い学びを実現するにも、より良い学級を実現するためにも「戦略的思考」は必要不可欠です。
※戦略的思考の書籍化のオファー、待っています!
京都教育大学付属桃山小学校 樋口 万太郎
①「同じでーす」を信じるな
(8分の16と8分の14のどちらが大きいのかを考えている場面、子どもの苗字は全て仮名です)
斎藤「8分の1が16個と14個。16と14では、16の方が大きいから8分の16の方が大きい」
先生「じゃあ、高山さんはどう考えたの?」
高山「斎藤さんと同じーす」
先生「同じなの。同じ内容でもいいから言ってごらん」
高山「分子だけを見ると、16の方が大きいから」
斎藤さんと全く同じ内容でないにも関わらず、高山さんは「同じでーす」と最初は言ったのです。なぜでしょうか。
1つは自分の考えと斎藤さんの考え方が一緒だと本当に思っていたからです。でも同じ内容であっても、表現の仕方が全く同じになることはありません。
似ているようで、違う考え方を言うときもあります。「同じでーす」と言った子には、
「同じ内容でもいいから、自分の言葉で言ってごらん」
と促してあげましょう。そして、もう1つ理由として考えられるのは、
「同じでーす」と言うと先生にあてられない
からです。もしかしたら、高山さんは発表をしたくなかったのかもしれません。教師は案外「同じでーす」という言葉に安心してしまいがちです。だから、子供の「同じでーす」を信じてはダメです。
そして、使ったときにも自分の言葉で言わせると、いつのまにか子供達は「同じでーす」と言わなくなります。「同じでーす」の言葉を信じていては、学びに繋がりません。
②「いいでーす」を今すぐやめよう
宿題プリントの答え合わせをしているときに、
与田さん「1番は25です。いいですか?」
全員「いいでーす」
このようなことをしていませんか。このとき、間違えている子も「いいでーす」と言っている可能性があります。
「いいでーす」と言って、答えを書き直したら、バレません。完全犯罪です。
教師もその言葉に騙されがちです。授業の発表場面でも、
先生「ゆうりちゃんと同じ考えでいいですか」
全員「いいでーす」
と言う場面を作っていませんか。
「いいでーす」と言った子の中には、本当に同じ考えの子もいれば、そうでない子もいます。わかっていないのに、「いいです」と言っている子は必ずいます。「同じでーす」の時と一緒です。学びに繋がりません。だから、
「いいでーす」を信じてはいけません。
そこで、「いいでーす」をやめようという戦略です。その代わりに答え合わせのときには、答えを教師が言ったり、解答を配布したりしてもいいです。
答え合わせのときに答えを間違えたときには、「違いまーす」と言われます学級全員から「違いまーす」と言われたときの子供の気持ちを考えたことがありますか。
その子にとっては、公開処刑のようなものです。なんとも思わない子供もいるでしょう。でも、その一言で傷つき、「手をあげたくない!」「発表したくない!」と思うかもしれません。「違いまーす」と言わせることもやめさせましょう。

樋口 万太郎(ひぐち まんたろう)
京都教育大学附属桃山小学校
みんなが「わかる」「できる」、そして「楽しい」授業を目指し、目の前にいる子に応じた指導を行っています。キーワード「学級経営」「算数」「タブレット端末」。
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