2019.06.03
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「これから10年の教育」を考える~教科等横断的な視点を持つために~(No.3)

これまで2回の連載を通して、新学習指導要領改訂の基本方針である「社会に開かれた教育課程」、そして「これからの社会を造る子供たちに必要な資質・能力とは何か?」についてお話しました。今回は、これらの目標を達成する授業を行うために、どのようなことを意識したらよいかについて考えます。

小平市立小平第五中学校 主任教諭 熊井 直子

【前回までの内容】

新学習指導要領の基本方針として重要になるキーワードは、

①「社会に開かれた教育課程」
②「資質・能力」
③「カリキュラム・マネジメント」   の3つです。

このうち最も根本的な概念として教員が考えるべきなのは、「社会に開かれた教育課程」=「学校で学ぶことが社会とつながりを持っていること」。そして、これからの社会を造り出していく子供たちが、社会や世界と関わり合いながら自らの人生を切り拓いていくために求められる資質・能力は、大きく3つに分けて

①「何を理解しているか、何ができるか(生きて働く「知識・技能」の習得)」
②「理解していること・できることをどう使うか(未知の状況にも対応できる「思考力・判断力・表現力等」の育成)」
③「どのように社会・世界と関わり、よりよい人生を送るか(学びを人生や社会に生かそうとする「学びに向かう力・人間性等」の涵養)」

であり、これらが日本だけでなく世界的にも重要視されていることを確認しました。
今回は、この「資質・能力」を身に着けさせるための「カリキュラム・マネジメント」についてまとめていきたいと思います。

教科等横断的な視点を持つことがカリキュラム・マネジメントの中心

今回もまずは、『幼稚園、小学校、中学校、高等学校及び特別支援学校の学習指導要領等の改善及び必要な方策等について(答申)[抄]』(平成28年12月21日中央教育審議会)に書かれている内容からご紹介したいと思います。

子どもたちがこれからの社会を生きていくための力(資質・能力)を身につけさせる場である学校が行う教育活動は、各教科、総合的な学習の時間、道徳、特別活動の4つがあります。カリキュラム・マネジメントとは、簡単に言えば、これらの教育活動を計画的に行っていこう、ということです。

これは何も特別なことではなく、これまでも学校は毎年教育課程を作成し、届け出をしています。各分掌主任や教科担当でそれぞれの教科等の年間指導計画・評価計画を作成しています。中央教育審議会答申では、この教育課程作成において、「教科等横断的な視点から教育活動の改善を行っていくことや、学校全体としての取り組みを通じて、教科等や学年を越えた組織運営の改善を行っていくことが求められる。」としています。

具体的な側面としては次の三つが挙げられています。
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①各教科等の教育内容を相互の関係で捉え、学校教育目標を踏まえた教科等横断的な視点で、その目標の達成に必要な教育の内容を組織的に配列していくこと。
②教育内容の質の向上に向けて、子供たちの姿や地域の現状等に関する調査や各種データ等に基づき、教育過程を編成し、実施し、評価して改善を図る一連のPDCAサイクルを確立すること。
③教育内容と、教育活動に必要な人的・物的資源等を、地域等の外部の資源も含めて活用しながら効果的に組み合わせること。
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どの立場からどのようにカリキュラム・マネジメントに関わるのか?

さて、この記事を読んでくださっている皆さんの立場は様々だと思います。これまでの3回の連載を通して、「社会に開かれた教育課程とはつまりどういうことか」→「社会で生きていくために必要な資質・能力とは何か」→「資質・能力を身に着けさせるためにどのようなカリキュラム(教育課程)を作っていくのか」と話を進めてきましたが、最も生徒に近い所で働いている先生方にとっては、話が抽象的なので自分の実践とつなげて考えづらいところもあるかもしれません。現に中央教育審議会答申には『「カリキュラム・マネジメント」の実現に向けては、校長又は園長を中心としつつ、教科等の縦割りや学年を越えて、学校全体で取り組んでいくことができるよう、学校の組織や経営の見直しを図る必要がある。』という記述もあります。

しかし、実際に授業を行うのは私たち教員です。私たち自身が、今、どのような教育が必要なのかを理解した上で授業を行っていくことが何よりも大切なことだと思っています。そして、それを同じ学校にいる先生同士で共有し、活用していくところに、学びの広がりとおもしろさがあると思います。

最初のステップはつながりを意識した年間指導計画・評価計画から。

そこで、教科担当教員として新学習指導要領の求める教科等横断的な視点を持ったカリキュラム・マネジメントを行うためのスタートラインは、つながりを意識した年間指導計画・評価計画だと考えます。「つながりを意識する」とは、これから生徒に学習させようとしていることが、これまで学習してきたこととどのようなつながりを持っているかを考える、ということです。年間指導計画・評価計画は、使用している教科書の進行をもとに作っていると思いますが、実際に授業をする時には、「教科書がそういう順番になっているから」というだけでなく「以前はこのようなことを教えたから、それを今回の単元につなげよう」と考えることが大切だと思います。

例えば私が担当している国語では、教科書に載っている文章を使ってどのような国語の力を身に付けさせるかは教師の指導計画によります。中学校2年生で出てくる「走れメロス」という作品を通して、「起承転結という物語の構成」を教えることもできますし、「人物像の描かれ方」を教えることもできますし、「作品が書かれた背景」を教えることもできます。しかし、もしも1年生の時に別の文学作品を通して「物語の構成」を教えているならば、2年生で全く同じことを指導する必要はありません。すでに学習した「物語の構成」について理解していることをもとにさらに別のことを指導することができます。

教科の指導内容だけでなく、学びを支える技術を整理すると効果的。

既習事項とのつながりを意識することは、「話し合いの仕方」「情報の扱い方」「ICTの使い方」など、学びを支える思考技術の指導において特に効果的だと思います。

例えば「話し合いの仕方」。私は、話し合いの参加方法には次の3段階があると考えて指導しています。

①協力的な姿勢で話し合いに参加すること
②話し合いを広げたり深めたりすること
③話し合いをまとめること

「①協力的な姿勢で話し合いに参加すること」とは、たとえ自分の意見を明確に述べることができなかったとしてもうなずく、相槌を入れる、話している人の方へ視線を向ける、といった「私はこの話し合いに参加しようとしていますよ」という態度を同じグループのメンバーへ表明することを指します。

「②話し合いを広げたり深めたりすること」とは、自分の考えを述べるだけでなく、相手の発言に対して「どうしてそう考えるのですか?」「具体的にはどのような場合がありますか?」などの質問をしたり、これまでの流れとは異なる新しい視点から意見を述べたりと話し合いを発展させていく発言をすることを指します。

「③話し合いをまとめること」とは、制限されている時間を意識したり、これまでに発言された内容の共通点と相違点を示したり、話がずれた場合に話し合いの議題に戻したりする司会的役割のことを指します。

このように整理をした上で、中学校1年生では上記の話し合いの3段階の提示と今自分にできていることの確認をします。そして、授業における話し合い活動を繰り返しながら2年生では「②話し合いを広げたり深めたりすること」、3年生では「③話し合いをまとめること」に重点を置いて指導を行います。そうすると、3年間で目指す話し合いの完成形とそこに至るステップを生徒が見通すことができるので、今の自分にできていることとできていないことを分析することができ、主体的な学びにもつながっていきます。

また、このようなことを他の学年や他の教科の先生と共有すれば、「教科等横断的」な実践になっていきます。

大きな目標を達成するためにどのようなステップを踏むのかを考える。

このように、実際に生徒に対して指導を行う立場である私たち教員は、常に「どのような力を身に着けさせるのか」と「今日何を教えるのか」の間を行ったり来たりしながら授業を行っています。私は教師という仕事の楽しさは、どのような道筋をたどっていけば生徒が最終的な大きな目標に到達することができるのかを考えるところにあると思っています。今回の新学習指導要領は、これまで以上にこの「道筋」を考えることに重点が置かれているのだと思います。それが「カリキュラム・マネジメント」なのです。

熊井 直子(くまい なおこ)

小平市立小平第五中学校 主任教諭
英語もできる国語の先生を目指しています。2016年度に1年間フィンランドの高校で国語の授業を研究していました。英語教育に力の入る今だからこそ母国語教育のあり方を今一度よく考える必要があるのではないかと考えています。

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