2021.07.12
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コーディネーション理論とバスケットボール

バスケットボールの授業に悩んでいる先生方は多いようです。

新学習指導要領に合わせたバスケットボール遊びを紹介します。

旭川市立大学短期大学部 准教授 赤堀 達也

ボールの持ち方

<はじめに>

バスケットボールの授業を難しいと思う先生方は多いようです。そこでバスケットボールをコーディネーション理論によって、楽しく意味ある授業に変える一例をご紹介します。
どちらかというと「ボール遊び」の意味合いが強く「バルシューレ」(ドイツで最近脚光を浴びている「ボール遊びスクール」)に近いものになります。

私がいつも考えることは「教え過ぎ」て失敗することです。
以前、小学生のバスケットボールを教えていた時に、体が大きく、走れる子どもが低学年のうちから入ってきたことがありました。丁寧に細かく指導し、6年生になった時には県ベスト5に選出されるなど県を代表する選手にはなったのですが、その後の中学以降は伸び悩んでしまいました。
教え過ぎると子どもは趣旨が変わってしまいます。「ボールを自在に操ること」から「言われた通りに行うこと」に重きを置くようになってしまいます。つまり「上手くできなくても、言われたことができたからOK」となってしまいます。
そうならないよう遊び的要素のあるものを多くし、自分で成長していく楽しみを得られるようなものを紹介していきます。

※写真のモデルは全員短大1年生で私のゼミ生です。バスケットボールに関しては7人中6人が未経験で、1人が小学生の時にミニバスに所属していました。


<識別能力(ディファレンシング能力)>

識別能力とは物を扱う能力です。バスケットボールにおいてはボールを扱う能力つまり「ボール感覚」になります。ここに紹介するものは全てボール感覚を養うものになります。

バスケットボールは球技の中で最も大きいボールとなります。そのためボールの持ち方がしっかりしないと、手に収まらず上手く扱うことができません。
基本とする持ち方は「手を開き、親指と小指を同じシーム(バスケットボールの溝)の上にのせる」ようにします。この時、どの指も立たせることなく、フィンガーパッド(指のお腹の部分全部)をボールにくっつけます。そうすると①人差し指と中指はもう1つのシームに引っかかり、②手のひらはボールから離れます。
この状態からボールが転がるように徐々に指から離れるようにし(指で転がすように扱うため「フィンガーロール」という)下に落とすとドリブル、前に出すとパス、上に投げるとシュートになります。しかしこれを口頭で教えると完全に教え過ぎです。

チーム対抗クラッシュボール

遊びの中で感覚的に身につけた方が、その後の成長度合いが異なります。つまり「習うより慣れろ」がいいのです。様々な能力を刺激しながらいつの間にか上達しているような内容を以下に紹介していきます。

「チーム対抗クラッシュボール」

ボールを正確に扱うためにこんな遊びがあります。
ボールの向こう側とこちら側にチーム毎に1人1個ボールを持って並びます。そして真ん中にあるボールを当て、相手の線より向こうへ追いやったら勝ちです。遊びながら正確にパスを出したり操ったりする力を養います。

ボール on ボール

<バランス能力>

「ボール on ボール」

2人組でボールを2個使って行います。
ボールの上にボールを乗せて落とさないようにします。
少し慣れたら指定した場所へ動くようにします。
また投げたのを受け取ってから行う方法もあります。
ボールの軸を感覚的に把握することができボールを扱う力を養います。

片足シュート

「片足シュート」

今度は体の軸を感覚的に把握するものです。
片足を上げ、もう片足で立ってシュートするだけのものです。
軸がしっかりするのでボールが真っすぐ飛ぶようになりシュートが入るようになります。
軸ができていない子どもは届かなかったりシュートがぶれたりします。


2人お手玉

<連結能力(カップリング能力)>

「2人お手玉」

2人組でボールを3個使って行います。
①サイドスローで行うものと、②チェストパス(胸へのパス)とバウンドパスで行うものがあります。
①は片手でボールを扱う感覚を身につけることができます。
②はあえて両手で行わせるようにすることで、手を素早く動かすクイックハンドの育成にもつながります。


リアクションパス(上下)

<反応能力(リアクション能力)>

「リアクションパス」

2人で2つのボールを使用してパス練習をするものです。上記の「2人お手玉」に似たようなものをボール2個で行うのですが、少し行い方を変え、1人がチェストパスをしたらもう1人はバウンドパスで返し、バウンドパスをしたらチェストパスで返し、ボールがぶつからないように行うおもしろいパス練習です。
敵に反応する力を身につけることができます。

また左右でも同じように行うことができます。


ミラードリル①

<リズム能力>

「ミラードリル」

リズム能力には、リズムに合わせる要素もありますが、動きを真似する要素もあります。上手い人の動きを上手く真似できるのも上達の大事な要素です。それを遊びの要素を持ちながら行うといいでしょう。

①走ったりサイドステップしたりして相手の動きについていく
②その場ドリブルで真似する
③ドリブルで相手の動きについていく

といったように発展させながら行うとより楽しくなります。



サークル鬼ごっこ

<変換能力(アダプタビリティ能力)>

「サークル鬼ごっこ」

サークルと真ん中の線を使って1対1で追いかけっこをする遊びです。
最初のうちはドリブルをするとボールがどこかに行ってしまい対決にならないので、ドリブルせずにボールを持ったまま行うといいです。タッチをするため片手でボールを持つことになります。ボールを体の横で扱う感覚が身につくようになります。ちなみに真ん中に立っている4人は単なる柱です。柱に腕をひっかけて鋭く回るのも有効な技です。


ドリブル鬼ごっこ

<定位能力(オリエンテーション能力)>

「ドリブル鬼ごっこ」

ドリブルをしながら行う鬼ごっこです。
①鬼を複数人決めて行う鬼ごっこと、②鬼を1人・子を3~4人にして子が鬼を追いかけ鬼のボールを外へ出す逆バージョンの鬼ごっこも面白いです。
空間を把握する能力を高めることにつながり試合でのます。


<最後に>

いかがでしょうか。
これらは、できるまで行う必要はありません。経験することが大切だからです。
以前にもお伝えしましたが、コーディネーション理論は感覚神経を刺激するものです。
例えば耳をよくするために同じ音をずっと聞くようなことはしないはずです。いろいろな曲や音を聴いたりするでしょう。それと同じでいろいろな刺激が大切なのです。
よく、練習は上手だけど試合では活躍できない子どもがいます。きっとこの子どもは同じことばかり練習させられているからです。
その逆で、練習は下手だけど試合では活躍できる子どもがいます。これは正しく新学習指導要領で求められる「未知の状況にも対応できる思考力、判断力、表現力など」につながります。このような子どもに育てたいものです。
このように遊びのきっかけを与え、そこから子ども同士で遊びを発展させていくといいでしょう。今の子どもは運動を通した遊びをあまり行ってきていません。体育の授業で「運動が楽しい」と感じていく必要があるでしょう。
授業の概念を変えていく必要があるかもしれません。考えるきっかけとしていてください。


赤堀 達也(あかほり たつや)

旭川市立大学短期大学部 准教授・北海道教育大学旭川校女子バスケットボールヘッドコーチ
これまで幼児・小学生・中学生・高校生・大学生と全年代の体育・スポーツ・部活動指導してきた経験から、子どもの神経に着目したスポーツパフォーマンス向上を図る研究を行う。

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