2019.04.19
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「これから10年の教育」を考える~新学習指導要領全面実施に向けて~(No.1)

新学習指導要領全面実施が近づいてきました。これから10年の教育を考えるためには、「主体的・対話的で深い学び」、「プログラミング教育」、「英語教育」などのキーワードだけでなく、今回の改訂の基本方針からきちんと理解することが大切だと思います。今回は、その中でも中心的な意義を持っていると考える「社会に開かれた教育課程」について中央教育審議会答申をふまえて整理してみました。

小平市立小平第五中学校 主任教諭 熊井 直子

新学習指導要領全面実施に向けて準備はできていますか?

2017年度に周知徹底された新学習指導要領ですが、中学校では2021年度の全面実施に向けて各教科の移行措置も本格的になってきました。私の勤務する中学校でも、新年度に向けて教科書の準備をしている時に移行措置に関する資料が添えられているのを見つけ、「いよいよですね…」という声をちらほらと耳にしました。読者の皆さんは、今回の改訂の趣旨についてきちんと理解し、教育活動を行っていく準備はできていますか?私自身は、まだまだ整理しきれていない部分が多く、残り2年間でしっかり指導要領を読み込み、勉強する必要を感じています。この連載を通して、皆さんとともに新学習指導要領についての理解を深め、私のこれまでの経験から考えたことなども紹介していければと思っています。

学校での学びに社会とのつながりを持たせることが大切

さて、今回の改訂における基本的な方向性の主なキーワードとして取り上げたいのは、

①「社会に開かれた教育課程」
②「資質・能力」
③「カリキュラム・マネジメント」              

の3点です。

今回は主に①「社会に開かれた教育課程」についてとりあげたいと思います。

新学習指導要領が周知される前に発表され、今回の改訂の方向性についての詳細が説明されている『幼稚園、小学校、中学校、高等学校及び特別支援学校の学習指導要領等の改善及び必要な方策等について(答申)[抄]』(平成28年12月21日中央教育審議会)には、学校教育と社会との関わりについて次のような記述があります。

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○ 学校教育が目指す子供たちの姿と、社会が求める人材像の関係については、長年議論 が続けられてきた。社会や産業の構造が変化し、質的な豊かさが成長を支える成熟社会に移行していく中で特定の既存組織のこれまでの在り方を前提としてどのように生きるかだけではなく、様々な情報や出来事を受け止め、主体的に判断しながら、自分を社会の中でどのように位置付け、社会をどう描くかを考え、他者と一緒に生き、課題を解決していくための力の育成が社会的な要請となっている。

○ こうした力の育成は、学校教育が長年「生きる力」の育成として目標としてきたもの であり、学校教育がその強みを発揮し、一人一人の可能性を引き出して豊かな人生を実現し、個々のキャリア形成を促し、社会の活力につなげていくことが、社会からも強く求められているのである。

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「働き方改革」「副業解禁」などの言葉をよく耳にするようになりましたが、これは、これからの社会の中ではこれまでのように「学校を卒業後に就職した会社で退職まで働き、その後は年金で生活する」という生き方だけではなくなることを表しています。むしろ、超高齢社会である日本では、そのような生き方は選びたくても選べない時代になるとも考えられます。上述の中央教育審議会答申の中にも「社会や産業の構造が変化し~(中略)~特定の既存組織のこれまでの在り方を前提としてどのように生きるかだけではなく~(以下略)」とあるように、教員である私達も含め、子どもたちは、「前例やモデルのない生き方」を模索していかなければならないのです。

新しいものに対する子どもの柔軟な適応力をどう活かすか

そして、実は親や教員よりも、子どもたちの方がそのような時代の流れを敏感に感じ取っているなと感じることがあります。新学期の自己紹介カードの中にあった「将来の夢」という項目に「今はまだない仕事」と答えた生徒がいました。総合的な学習の時間で、「どのような職業があるか」「働く人にインタビュー」「自分の適性を知る」などの職業についての学習をしていたとき、具体的な職業についてではなく、「どうしたらお金を稼ぐことができるか」を熱心に考えている生徒がいたこともあります。

以前勤務していた学校では、校内のICT環境が整っており、生徒1人にタブレット端末1台を貸与して授業を行っていましたが、様々なアプリケーションソフトや画像・動画の編集などの操作への適応のスピードは目を見張るものがありました。時には、生徒の方から「1年間の終わりに、これまで撮った動画を編集して学年集会で見せたい」などの提案をしてきたこともあり、身の回りのテクノロジーを使いこなす力を感じました。

子どもは、新しいものに対する柔軟な適応力を持っています。学校教育は、方法次第でそれを活かすことも殺すこともできると考えます。だからこそ、今回の新学習指導要領は、これまでに比べて特に「社会とのつながり」という点に重点が置かれているのだと思います。ただ、これまで行ってきたことを全て変えなければならないとは考えていませんし、そんなことがすぐにできるとも思いません。前述の中央教育審議会答申の中にも、「様々な情報や出来事を受け止め、主体的に判断しながら、自分を社会の中でどのように位置付け、社会をどう描くかを考え、他者と一緒に生き、課題を解決していくための力の育成が社会的な要請となっている」とありますが、こうした力は、「学校教育が長年『生きる力』の育成として目標としてきたもの」とあります。これまで行ってきたことの延長線上に社会とのつながりのある学校教育、つまり「社会に開かれた教育課程」があるはずなのです。

「社会に開かれた教育課程」の実現のためには…

では、これまでの教育実践活かしつつ「社会に開かれた教育課程」を実現していくために、私たち教員はどのようなことを意識したり、考えたりする必要があるでしょうか。先程引用した『幼稚園、小学校、中学校、高等学校及び特別支援学校の学習指導要領等の改善及び必要な方策等について(答申)[抄]』(平成28年12月21日中央教育審議会)には、「社会に開かれた教育課程」実現のために重要なこととして次の3点が挙げられています。

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① 社会や世界の状況を幅広く視野に入れ、よりよい学校教育を通じてよりよい社会を創るという目標を持ち、教育課程を介してその目標を社会と共有していくこと。

② これからの社会を造り出していく子供たちが、社会や世界に向き合い関わり合い、自らの人生を切り拓いていくために求められる資質・能力とは何かを、教育課程において明確化し育んでいくこと。

③ 教育課程の実施に当たって、知育の人的・物質的資源を活用したり、放課後や土曜日等を活用した社会教育との連携を図ったりし、学校教育を学校内に閉じずに、その目指すところを社会と共有・連携しながら実現させること。

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やはり、まずは「①社会や世界の状況を幅広く視野に入れ」とあるように、教員自身が現在の社会の状況を学ぶ姿勢を持ち続けることが必要です。正直、とかくやることの多い学校現場で働きながら、速い社会の流れに対して常に高い感度を持ち続けるというのは大変なことだというのが本音です。ですが、「今自分は何のためにこれを教えているのか」と問い続けていくと、最後は現在の社会の状況を把握しなければならないという結論につながるのも事実です。私はこれまでに、社会や世界に対する視野を広げるために、異業種の人たちの話を聞いたり、海外に留学したりしてきたので、次回以降の記事の中でご紹介できればと思っています。
 
また、社会や世界の状況を把握するだけでなく、上記答申の②にあるように、これから社会に出ていく子どもたちにどのような力を身につけさせる必要があるのかを明確にしなければ、教育活動を行うことはできません。この点が最初に挙げた3つのキーワード、

①「社会に開かれた教育課程」
②「資質・能力」
③「カリキュラム・マネジメント」

のうちの②「資質・能力」に関する話につながっていきます。この「資質・能力」の詳細については中央教育審議会答申や学習指導要領解説の中で説明されていますので、次回の投稿の中で整理していきたいと思います。

新学期も始まったばかりでまだまだ忙しない中かと思いますが、今年度、「社会とのつながり」を意識した授業デザインに挑戦してみてはいかがでしょうか?

熊井 直子(くまい なおこ)

小平市立小平第五中学校 主任教諭
英語もできる国語の先生を目指しています。2016年度に1年間フィンランドの高校で国語の授業を研究していました。英語教育に力の入る今だからこそ母国語教育のあり方を今一度よく考える必要があるのではないかと考えています。

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