2022.09.22
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少し遠くから見る集団宿泊学習

集団での集団宿泊学習が各学校で行われるようになってきています。教育課程では主に特別活動に位置する教育活動ですが、私はその教育効果をこれまでなんとなくしか感じることがありませんでした。
学習中は、関係業者との交渉、児童の安全確保、他の教職員との連携など、やらなければならないことがたくさんあります。時には、ほぼ睡眠時間もなくなるような肉体的にも負担が大きい中で、なかなか担任が児童の成長を実感できる余裕はないのではないでしょうか。
今回、私は自分が担当していない学年の集団宿泊学習に参加させてもらう機会に恵まれました。担任ではない立場から、改めてその意義について考えてみたいと思います。

浦安市立美浜北小学校 教諭 齋藤 大樹

コロナ禍で失われた宿泊学習・修学旅行

多くの学校で、宿泊学習や修学旅行が行われる秋。今年度は、各学校で集団宿泊学習(以後「宿泊学習」と表記)が行われるようになってきているようです。コロナ禍においては多くの学校で宿泊学習を取りやめていましたが、少しずつ状況が変化しているのだと感じます。
新型コロナウイルスの流行前には、宿泊を伴う学習に行くのは毎年の恒例行事でした。私は、昨年まで2年間6学年を担当しており、修学旅行がない卒業学年を担任しました。これまで当たり前に感じていた宿泊学習や修学旅行がなくなったことで、その代替に悩んだ2年間でした。

特別活動として位置づけられる宿泊学習

今年は3学年の担任を務めていますが、5学年の宿泊学習に参加させてもらうことができました。私にとって、新学習指導要領に移行してから初めての宿泊学習です。その意義や目的を確認したいと考え、小学校新学習指導要領の「特別活動編」を読み直しました。
新学習指導要領の特別活動では、「自然の中での集団宿泊活動などの平素と異なる生活環境にあって,見聞を広め,自然や文化などに親しむとともに,よりよい人間関係を築くなどの集団生活の在り方や公衆道徳などについての体験を積むことができるようにすること」と示されています。

ある程度教員を続けていると、なんとなく学校行事を指導すれば良いと考えてしまいがちですが、体験を積むことができるように明確に目標を設定して、活動に取り組ませることが重要ということでしょう。

自然に親しむ体験がどうして必要なのか

コロナ禍で一大ブームを巻き起こしたものとして、キャンプがあります。YouTubeでもキャンプ動画は人気のジャンルですし、キャンプ用に自分の山を購入してしまう方もいるそうです。2020年の流行語大賞には、「ソロキャンプ」が選ばれており、『ゆるキャン』というアニメも若者の人気を集めています。コロナ禍だからこそ自然の中で過ごす価値が再認識され、それが人々に支持されているのでしょう。

国立青少年教育振興機構が行った令和元年度「青少年の体験活動等に関する意識調査」では、その調査結果の概要の中で、子どもたちが自然体験を深めることで自己肯定感が高くなり、自立的行動や探求力が身につく傾向にあると示されています。
先に述べた新学習指導要領の特別活動編解説では、宿泊学習は、自然そのものを学ぶだけでなく、人間関係をも学ぶことができ、いじめの未然防止につながるとされていました。本当に効果がある学習なのだなと感じました。

3日間のネイチャースクール

こうしたねらいを改めて確認した上で、3日間の宿泊学習に補助として参加しました。本校の場合は、ネイチャースクールと呼び、富士山周辺での学習を行いました。富士登山や飯盒炊爨、ナイトハイクなど、自然に触れ合う活動と友だちと協力する活動をバランスよく設定しています。子どもたちはこうした活動に大変意欲的に取り組み、とても楽しそうに過ごしていました。
担任として、常に同じ子どもたちと関わっていると、成長に鈍感になってしまうことがあります。宿泊学習中は、生活指導の連続ですから、ついつい子どもの欠点にばかり目がいってしまい、小言を言いたくなってしまいます。振り返ると、宿泊学習の目的をしっかりと達成したいと思う気持ちが前面に出てしまい、子どもたちの成長に目を向けられないこともありました。

今回、私は普段から関わっていない子どもたちだからこそ、初日と最終日での集団や児童の変化だけに着目することができました。例えば、初日は、ついつい教員に次の行程を尋ねてしまう子が多かったのですが、最終日には自分からしおりを見ている子が多くなりました。集団で行動することに慣れていき、友だちと協力する姿勢をもてる子が増えて行く姿を多く見ることができました。こうした成長が、学校に戻ってからの学習に良い影響を与えるのでしょう。
学級担任と子どもたちの関係性がより深いものになる姿も見ることができました。宿泊学習では、良くも悪くも担任の人間性が問われます。やることが決まった授業をするだけの学校生活と異なり、担任の意外な一面が垣間見える機会が多くなります。好きな音楽や映画など、普段は知らなかった担任の興味や関心を知りながら、人と人の関係を深めていくのでしょう。担任と子どもたちが目標を立て、学級全員でそれを達成していく過程が、担任と子どもたちの信頼関係の構築には重要なのだなと感じます。

また、教科指導においても効果があります。富士の樹海を探索することで安山岩に触れたり、富士山が日本の人々に与えた文化的な影響を学んだりしました。これから6年生で火成岩の学習をしたり、江戸の町人文化を学んだりする際には、この体験が知識と結びつくはずです。

消灯時間後も続く子どもたちの時間

子どもたちの立場からすると、宿泊学習で楽しみなことの一つに「消灯時間後のおしゃべり」があるそうです。思い返すと、多くの寝不足気味の子どもたちの原因の一つにいわゆる「恋バナ」があったと記憶しています。消灯時間を過ぎても友だちと好きな人について語り合うことが楽しくて仕方がないのでしょう。新学習指導要領にも当然、触れられていないこの「恋バナ」ですが、小学校高学年という思春期の始まりだからこそ、ある意味大切なことなのかもしれません。

しかしながら、2泊3日や3泊4日のような長い旅行の場合には、睡眠不足が日中の活動に影響を与える場合があります。子どもたちの気持ちを尊重しつつも、先の行程を考え、言葉かけしなければならないのです。単に、頭ごなしにルールを押し付けるだけでは、子どもたちの反発が強くなってしまいます。子どもたちの思いをどのようにして受け止め、どう諭していくか。宿やホテルでの過ごさせ方は、まさに引率者としての力量が試される場だなと思います。

前期の終わりに

今回は、コロナ禍で中断されていた宿泊学習が再開していく中で、改めて宿泊学習の意義について考えました。当たり前のことを書いていますが、当たり前の宿泊学習がまた当たり前のようにできたことを嬉しく感じます。
これから宿泊学習や修学旅行を行う学校も多いと思います。せっかく久しぶりに実施できる宿泊学習。中断を挟んでいるからこそ、脊髄反射的に行わず、今一度基本を見直して、より良い学習にしてもらえれば幸いです。

また、今回の記事は、令和4年度の1「教育つれづれ日誌」前期の部、最終回となります。今期も多くの読者の方に読んでいただきました。忙しくて記事のネタに困っているときに、読者の皆様からのアクセスが励みになっていました。本当にありがとうございました。

齋藤 大樹(さいとう ひろき)

浦安市立美浜北小学校 教諭


一人一台PC時代に対応するべくプログラミング教育を進めており、市内向けのプログラミング教育推進委員を務めていました。
現在は小規模校において単学級の担任をしており、小規模校だからこそできる実践を積み重ねています。

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