振り返りを子ども自身の手に ~学びのサイクルを可視化し、成長を加速させる~
体育の授業が終わると、子どもたちが一斉にタブレットを取り出し、真剣な表情で画面に向かい始めます。文字を入力したり、友達の投稿をスクロールしたりしながら、「この考え方、いいな」「同じことで悩んでいる!」
そんなつぶやきも聞こえてきます。
私の授業では、毎時間の振り返りにオンライン掲示板ツール「Padlet(パドレット)」を活用しています。
愛知県東郷町立春木中学校 教諭 阪野 一輝
振り返りを次の学びにつなげる
単なる「できた・できない」の○×チェックや、「楽しかった」という一言の感想で終わらせるのではなく、自分の学びを自分で振り返り、次の学びにつなげていくことを大切にしています。
振り返りを通して、自分の現在地を知り、次の時間に何を試すのかを考える。このサイクルを繰り返すことが、子どもたちの自己調整能力を育てることにつながると考えています。
授業のスタートは、子どもたちの「疑問」から
そもそも、深い振り返りを生み出すためには、毎時間のめあてが子ども自身の問題意識とつながっていることが大切です。そのため私は、単元や授業の始まりを、できるだけ子どもたちの素朴な疑問や困り感からスタートさせるようにしています。
例えば、バスケットボールの単元。教師が「今日はパスの練習をします」と一方的に課題を提示するのではなく、まずは試しのゲームを行います。
すると、
「なかなか得点が取れない」
「ボールを持っていないとき、どこに動けばいいのか分からない」
といった子どもたちのつまずきが生まれます。
そうした困り感や疑問を振り返りに書いてもらい、そこから、
「どうしたら、もっと得点を取れるようになるだろう?」
という問いを、子どもたちと一緒につくっていきます。
自分たちの疑問から始まった授業だからこそ、授業の終わりにも、
「自分の課題に対して、どんなことを考え、どんなことを試したのか」
という振り返りが生まれるのです。
「観点」と「キーワード」で振り返りの質を高める
とはいえ、「振り返りを書いてみよう」と端末を渡しただけでは、何を書けばよいのか迷ってしまう子もいます。そこで私は、Padletに入力する前に、振り返りの視点をいくつか示すようにしています。
・気づいた技能のポイント(何がコツだと分かったか)
・自分の課題(今の自分には何が足りないか、次の時間につなげたいこと)
・解決するために意識したこと(具体的に何を試したか)
・友達の動きで、すごいと思ったこと(真似してみたい動き)
自分自身のことだけでなく、友達の動きにも目を向けることで、自分にはなかった視点に気づくことができます。
さらに、授業によっては「今日は『スペース』という言葉を使って振り返ってみよう」と、キーワードを指定することもあります。
例えば、
「スペースをいかすために、自分はどのように動いたのか」
という視点をもつことで、ただ「うまくできた」「できなかった」と振り返るのではなく、自分の動きや考えを具体的に捉えられるようになります。
こうした小さな視点を積み重ねることで、子どもたちの振り返りは少しずつ具体的になり、自分の学びを客観的に見つめられるようになっていきます。
Padletが生み出す協働的な振り返り
こうして書かれた一人ひとりの振り返りは、Padlet上にリアルタイムで集約されます。私の実践では、授業時間ごとに投稿を色分けしているため、後から見返したときに、自分の考えがどのように変化してきたのかを一目で捉えることができます。
そして、Padletを活用する上で特に大きな意味を感じているのが、友達の振り返りを読める点です。
自分の振り返りを書き終えると、子どもたちは友達の投稿を読み始めます。
「○○さんが書いている『相手の背後のスペース』って、そういうことか!」
「同じところでつまずいていたけど、○○さんが意識していたことを試したらうまくいったよ!」
共感した投稿には「いいね!」を押したり、新しい気づきを得た投稿にはコメントを残したりします。
一人で完結しがちな振り返りの時間が、Padletという場を通すことで、友達の考えに触れ、自分の考えをもう一度見つめ直す時間へと変わっていくのです。
自分の振り返りを書く。
↓
友達の振り返りを読む。
↓
新しい気づきを得る。
↓
次の時間に試してみる。
この循環が生まれることで、個人の学びと仲間との学びが自然につながっていきます。
振り返りは、教師が成績をつけるための「提出物」だけではありません。子ども自身が自分の現在地を知り、仲間の知恵を借りながら、次の時間の課題や練習方法を考えていくための、学びのためのツールでもあるのだと思います。
画面上に色鮮やかに積み重なっていくPadletの投稿。そこに残されているのは、単なる感想の記録ではありません。
「今日はこんなことに気づいた」
「次はこれを試してみたい」
「友達の考えから、こんなことを学んだ」
そんな一人ひとりの思考の軌跡です。
子どもたちが、自分の学びを自分で動かしていく。その姿を見るたびに、振り返りの時間には大きな可能性があると感じています。

阪野 一輝(ばんの かずき)
愛知県東郷町立春木中学校 教諭
公立学校教諭。大学院にて運動生理学を専攻。これまで約10年間、小学校を中心に、体育における「自己調整学習」の実践研究や、子どもたちが主体的に運営する学級経営に注力している。授業や学級経営を通じ、子どもたち一人ひとりの心に「自律の種」をまく実践を大切にしている。
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