なぜ算数を学ぶのか?「生かそうとする態度を身につけるため」後編(7回)
算数を研究して18年。これまでさまざまなテーマに取り組んできましたが、「学校教育において算数を学ぶ意義とは何か」は、私自身にとって常に大きなテーマでした。これまでの研究を通して得た私なりの見解を10の視点に整理し、実際の算数指導と関連づけながら紹介させていただきます。
第6回では、「生かそうとする態度を身につけるため」(後編)として、実践の紹介をさせていただきます。
東京都品川区立学校 平野 正隆
実践「平均」(第5学年) ※習熟度上位コース

筆者作成
教師:今日はキャップつかみ取りゲームをします。
児童:イエーイ。
児童:それって何ですか?どんなゲーム?
教師:では、どんなゲームなのか、ルールと共に説明します。各班のダンボールの中にたくさんのペットボトルキャップが入っています。それをつかんで何個取れたかを競うゲームです。ルールは…(※前編の資料参照)。取ったキャップは、表にこのように並べて置きます。では、やってみましょう。
――ゲーム開始――
ここで、全ての班が4人であることに気付きました。人数が揃っていると、平均の良さを実感できなくなるため、架空のデータ(私の前任校の結果)を用意しておきました。
教師:では、結果を発表してください。
児童:1班は合計29個でした。
児童:2班は合計32個でした。
児童:3班は… (以下省略)
教師:実は、先生が以前に勤めていたA校の5年生が、すごい結果を出しました。なんと、その班は45個でした。(5人で合計45個の表を見せる)
児童:えぇ!?すごい。
児童:うちら負けたじゃん。
児童:でも、5人だからずるくない!?
児童:たしかに、うちらは4人だし、負けたわけじゃない。
――めあて:勝敗の決め方を考えよう――
教師:どうしたら勝敗が決められるか考えてごらん。
――自力解決・班での学び合い――
教師:勝敗の決め方を発表しましょう。
児童:人数を合わせるために、その5人のうちの1人を消す。
児童:消すって(笑)。でも、確かに、そうしたら4人になるから比べられるね。
児童:でもさ、どの人を無くせばいいのかな。
教師:そうですね。その方法は、良いとは言えませんね。他にはありませんか。
児童:一番、多く取った人がどっちかで勝負すればいいんじゃないかな。
児童:それじゃチーム戦にならないよ。
児童:ってことは、一番、少ない人で比べるのもなしか。
児童:なしだね。
教師:チーム対抗だから、なしですね。他には?
児童:4人のうちの誰かが2回やれば、5人と比べられるよ。
児童::でもさ、ルールに「1人1回だけ」ってあるからダメなんじゃないかな。
教師:はい。ルール上、それはできませんね。どうすれば比べられるでしょうか。
児童:平均を使えばいいんじゃないかな。
児童:たしかに。
教師:平均とは何ですか?
児童:その班の「普通」が何かってこと
教師:「普通」って?
児童:……
児童:だいたい何個とったか。
教師:「平均」という言葉は、いったん置いておいて、6班が面白い考えをしていたので、紹介してもらいましょう。
児童:僕たちは表のキャップを動かして考えました。このように、班の中で多く取った子から少ない子に動かして、なるべく同じになるようにすると、1人何個くらいとったかが分かります。
教師:では、この考え方で自分たちの班が1人何個くらいとったか調べてみましょう。
児童:うちらは7個だ。でも1個あまる。
児童:2班は8個ちょうどだ。
児童:A校はちょうど9個だけど、僕らの6班は9個と1個余るから、勝った!!
教師:みんなが出したこの値を「平均」と言います。いくつかの数をまとめて、同じ大きさになるようにならしたもので、全体のだいたいの様子を1つの数で表すことができます。式にすると、どうなりますか。
児童:合計÷人数です。
児童:でもさ、小数になってもいいのかな。
――以下、授業は続く――
まとめ
テレビやインターネットで見かける統計調査のグラフ、天気予報で伝えられる平均気温の情報、お菓子作りでの計量など、私たちの生活の中には算数があふれています。子どもたちが日常の中で自然に触れているこうした算数的な要素を、学問として体系的に再構築していくのが算数の授業です。
算数は、これまでの生活経験や既習事項が「今の学び」とつながっていることを実感しやすい教科です。だからこそ、子どもたちの生活経験やこれまでの学習を想起させ、具体的なイメージをもたせながら、学ぶことの必要性を感じ取れるよう支援していくことが大切です。

平野 正隆(ひらの まさたか)
東京都品川区立学校
研究会での実践報告や校内での若手教員育成などの経験を通して、自分の経験や実践が広く皆様のお役に立てるのではないかと考えております。大人・子どもに関わらず、「明日から頑張れそうです」「明日が来るのが楽しみです」と言ってもらえるのが私の喜びです。
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