なぜ算数を学ぶのか?「自分の行いに責任をもつ力を育むため」前編(10)
算数教育の研究に携わって18年。
折に触れてさまざまな課題を追いかけてきましたが、常に胸の内にあったのは「算数を学ぶ意味とは何か」という問いでした。
これまでの歩みの中で得た気づきを10個の視点にまとめ、授業の実践とともに紹介しています。
今回は、その中から「自分の行いに責任をもつため」という観点を取り上げます。
東京都品川区立学校 平野 正隆
自分の行いに責任をもつことにつながる算数
算数の学習では、至るところで「振り返り」が求められます。
例えば、自分の解答や解法は正しかったのか、よりよい方法はなかったのか、表現は適切だったのか、友達に自分の考えが伝わったのかなどです。
指導の工夫
授業で「責任ある学び」を形づくるために、私はいくつかの工夫を心がけています。
① 見通しを持たせる
「今日の学習をやりきることが自分の責任だ」と自覚できるよう、授業の前半でゴールを共有します。
解決の方向性が明確になることで、学習に主体的に取り組む姿勢が育まれます。
② 成果を共有する自由探究
自力解決の過程で、考えを班やクラス全体に共有させることで、自分だけでなく集団の学びにも責任をもたせます。
そのために、班隊形での授業を効果的に活用します。
③ 対話的な説明をする
発表者は一方的に説明するのではなく、聞き手に問いかけながら進めます。
聞き手も、分かることと分からないことをやりとりの中で明らかにします。
こうした対話的説明によって、発表者と聞き手双方に責任感が生まれます。
④ 共同作業による協力
図形の敷き詰め模様など、複数人で協力しなければ完成しない課題を扱うことで、自然に「協力してやり遂げる責任」を意識させます。
⑤ 授業の中で生まれた疑問や予想を板書に残す
振り返りの中で出てきた新たな疑問や予想を板書に残し、タブレットなどで記録します。
次時以降の課題へとつなげることで、学びを自分ごととして捉え、責任を持った学習へとつながります。
ここまで、理念と工夫を中心に述べてきました。
次回の【後編】では、実際の授業実践「図形の角」(5年生)を取り上げ、子どもたちがどのように責任ある学びを体現しているかを紹介します。

平野 正隆(ひらの まさたか)
東京都品川区立学校
研究会での実践報告や校内での若手教員育成などの経験を通して、自分の経験や実践が広く皆様のお役に立てるのではないかと考えております。大人・子どもに関わらず、「明日から頑張れそうです」「明日が来るのが楽しみです」と言ってもらえるのが私の喜びです。
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