活動時間と子どもの満足― 授業づくりを見直すヒント ―
先生方は、学習活動を短い時間で区切って数を多くしていますか?
それとも、学習活動をいくつかまとめて時間を長めにとっていますか?
それぞれの良さや問題点って何でしょうか?
岡山県赤磐市立桜が丘小学校 指導教諭 古市 剛大
子どもが見せた満足の笑顔
「授業改革推進員」として学校をまわり、先生方と授業について考える仕事をしています。
ある日、いつものように授業参観に行くと、5年生の教室で社会科が行われていました。
「これからの食料生産」の単元で、めあてを黒板に書いたところでした。外国の安い食料が輸入されていることを確認し、国内の生産者の困り感を想像できたところで、「生産者がどのような取り組みをしているのか」「それによってどのような効果があるのか」という視点で、資料を基に調べる場面を設定していました。
先生「時間は15分です」
私(少し長いなあ、どんなふうに一人で取り組むのかな)
先生「一人で考えてもいいし、考えがもてたら友達と確認したり相談したりしながら進めてもいいよ」
児童:一人で調べる子、友達と確認し合う子、教科書を持って友達に質問しに行く子など、それぞれが活動を始める。
~15分後~
私のすぐそばの席で、一人で活動していたAさんが話しかけてきました。何かと思いAさんの方を向くと、ノートを見せながら
「字は汚いけど、情報はしっかり集められた」
と笑顔で教えてくれました。
笑顔の理由
実はAさん、活動が始まってすぐは資料から読み取ることが難しく、なかなか進んでいませんでした。5年生ということもあり教科書にはたくさんの字が書かれていて、読むのも内容を理解するのも一苦労です。それでもAさんは、少しずつ生産者の取り組みやその効果を見つけ、ノートにまとめていったのでした。
ここでもし先生が、このような活動時間の配分をしていたらどうなっていたでしょう?
先生「時間は7分です、7分は一人で考えましょう」
~7分後~
先生「ここからは友達と考えを交流します、まだ書いている人も鉛筆を置いて友達と伝え合いましょう」
きっと7分ではAさんは自分のノートに満足できていなかったでしょう。時間を過ぎてもノートに書こうとして、先生に注意されていたかもしれません。あの笑顔は、きっと見られなかったと思います。
時間の幅をもたせることの良さ
「近くの人と2分相談してみましょう」
「30秒でどれか選んでみて」
こんなふうに時間を短く区切って指示を出す先生の姿を見ることがあります。授業のテンポを上げて子どもたちの意識を学習に向けさせる意図があるのだと思います。45分という授業時間で子どもがねらいを達成できるようにするためのタイムマネジメントの意味もあるのでしょう。
ただ、1つ1つの活動時間を短く区切ることの危険性もあるのだと思います。
「あと少し時間があればできたのに…」
「時間が短くて進まなかった…」
「できる人に任せよう…」
そうなってしまうともったいないですよね。
ゆとりを持った時間設定、これによって救われる子どもたちはいるはずです。早く終わってしまう子には追加の課題やさらに深める視点を用意すればいいかもしれません。授業者自身も焦らなくて済みますね。
子どもの可能性を信じて
時間が長いとだれてしまうのではないか、子どもたちだけではこの部分まで自力でたどり着けないかもしれないから、その部分を扱う時間を確保したい、その気持ちはよく分かります。しかし、それによって子どもたちが自分の学びに満足できなければ、もったいないです。導入での課題意識、資料から読み取るポイント、解決の見通し、さまざまな手立てを打ったあとは子どもたちを信じましょう。きっと自分の力を発揮して、課題解決に努めるはずです。もしうまくいかなければ、次の授業に向けて手立てを改善していけばよいだけです。
Aさんの笑顔を見ながら、そんなことを感じたのでした。

古市 剛大(ふるいち たけひろ)
岡山県赤磐市立桜が丘小学校 指導教諭
「道徳の教科化」をきっかけに,道徳のおもしろさと難しさを感じながら,研究と実践を重ねてきました。子供の「知りたい」「話したい」を大事にした授業とは?道徳科における個別最適×協働とは?日々の授業から,そして指導教諭だからこそ見える・感じることを綴っていきたいと思います。
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