学習問題とは
社会科では、単元を見通して授業を構成します。その際に大事になってくるのが学習問題です。学習問題は、子どもが単元を通して正対し、解決することを通して、社会科で育成を目指す資質・能力を育むものです。
そのためには、学習問題が教師から与えられた「課題」ではなく、教師と子どものやり取りの中で培われ、子ども自身が「問題」としてとらえることが必要です。
今回は、社会科における学習問題がどのように設定されるかを述べたいと思います。
学習問題の設定過程~4年生「くらしをささえる水」~
(1)導入:学習への関心を高める
授業のはじめに、教師が蛇口の実物を提示し、「これは何かな?」と問いかけました。これにより、児童は身近な題材に興味を持ち、学習への意欲が高まりました。続いて、「毎日使っている水について話し合おう」というめあてを示し、児童が生活の中でどのような場面で、どのくらいの水を使っているかを振り返りながら話し合いました。
(2)展開1:水の種類と安全性について考える
児童は、自分たちが普段どんなときに、どのくらいの水を使っているかについて意見を出し合いました。日常生活の中でさまざまな場面で、多くの水を使っていることに気付きました。次に、水道水と川の水を比較しました。その結果、「水道水は安全で、きれいに消毒されている」という特徴をとらえました。また、安全な水が使えなくなった場合の生活や命への影響について考え、「水が使えないと生活できない」「命にかかわる」といった意見が多く出されました。この活動を通して、児童は水の安全性の重要さを実感することができました。
(3)展開2:人口と給水量の関係を読み取る
姫路市の資料をもとに、人口と給水量の関係について考えました。資料によると、姫路市では一日に約16.4万㎥(25mプール約660杯分)の水が使用されていることを確認しました。児童は「人口が増えると給水量も増える」という関係を読み取り、水の使用量が人々の生活と密接に関わっていることを理解しました。
(4)学習問題の設定
これまでの学習をふまえて、児童が感じた疑問を出し合い、学習問題を設定しました。その結果、「なぜ、わたしたちは毎日、たくさんの安全な水を使うことができているのだろうか」という共通の問題が生まれ、今後の学習の方向性が明確になりました。
(5)まとめ・ふりかえり
授業の終わりに、児童は学習問題に対する自分の考えや予想をノートにまとめました。「水道の仕組み」「水が作られる仕組み」「水を届ける人の努力」など、児童一人ひとりが自分の関心をもってふり返る姿が見られました。この活動を通して、次時以降の学習への意欲を高めることができました。
学習問題設定のポイント

筆者作成
私は、学習問題を子どもたちと設定するときに「興味から関心へ」ということを意識しています。まず、授業の始めに蛇口の実物を見せたり触らせたりすることで、学習へのワクワク感を高めます。そして、自分たちが使っている水について生活経験を想起し、自分とのつながりを感じさせるようにします。その際、水道水と川の水を比較することにより、自分たちが使っている水が「安全」であることを認識できます。次に、資料を用いることで「自分が使っている水」から、「姫路市で使われている水」へと視点を広げます。そして、個人が思い浮かんだ疑問を全体で共有することで、学習問題として設定することができます。
このように、《子どもの興味を引き付け、生活経験とつなぎ、資料によって学習内容へ関心を高める》という流れは、多くの単元で学習問題を設定する際に活用できます。

竹内 哲宏(たけうち てつひろ)
姫路市立白鷺小中学校 主幹教諭
世界遺産姫路城の目の前にある姫路市初の義務教育学校に勤めています。
資質・能力を育成するための授業づくりを中心に発信できればと考えています。
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