総合的な学習の時間の取り組みー課題の形成とこれからの学びへー(3)
前回より引き続き総合的な学習の時間の様子をお伝えします。
今回で「課題を設定する」場面は一区切りつきます。
明石市立鳥羽小学校 教諭 友弘 敬之
ほかの学年のみんなはどのような学校にしたいのかな?
前回の終わりに、子どもたちには「4年生以外の視点」をもつように促しました。なぜなら、学校のよりよさを「自分たちだけ」で考えることはできないからです。そういった視点を投げかけてあげることも、教師の一つの役割だと考えています。
そこで、「4年生以外のみんなはどのような学校にしたいのかな?」ということを課題に、再度対話を始めました。すると、子どもたちは
「誰に聞く?」「やっぱり校長先生かな?」「けど、どうやって聞こう?」と、いろいろと頭を悩まし始めました。
そこで、ある子の発言を取り上げて「どうやって誰に調査する?」という問いを全体で共有しました。
子どもたちの思いはさまざまでした。
「校長先生は今年来たばかりだから、昔からよく知っている教頭先生に調査するのはどうかな!」
「学校のことをよりよくしてくれているのは用務員さんだから、用務員さんに聞きたい!」
「5・6年生も大切だけど、これからの学校をつくっていくのは低学年だよね!」
と、いろいろな対象が出されました。
そこで、「どうやって決めていこうか?」と投げかけると、ある子が
「もうクラスごとに役割を決めてしまうといいんじゃないかな?」と発言。これにみんなも同意し、役割を分担することになりました。
こうして、1週間の準備期間を経て、各々の担当先へインタビュー調査を行う運びとなったわけです。
緊張の面持ちでインタビュー

インタビューで調査した内容を共有する
あるチームは低学年へ行き、またあるチームは教頭先生を訪ねました。
インタビューで調査した内容についてクラスで話しているとき、「ほかのクラスの様子も知りたい!」という発言があり、それを受けて4年生全体で情報共有をすることになりました。
情報共有は前回と同様に、資料としてまとめた内容をチームごとに紹介し合うワールドカフェ方式を採用しました。
どの班も一生懸命に伝えたり聞いたりして、考えの違いを検討している様子でした。
前回も同じような方法で考えの共有を図ったので、前回よりもスムーズに取り組む子どもたちの様子に成長を感じました。
課題の形成
クラスごとの調査の共有が済み、いよいよ1学期最後の対話の時間がやってきました。投げかけた問いはこちらです。
「調査をしていろいろな学年や先生の思いも分かったようですね。改めて今、どんな学校にしていく必要があると考えているのかな?」
この投げかけを受けて、いろいろな考えが発言されました。
「学校のみんながいたいと思える」「行きたいと思える」「もっと楽しく過ごしたいって思ってほしい」など、たくさん要素が出てきました。
そこで、「少しまとめてくれない?」と投げかけると、
「みんなが楽しく過ごせる学校をつくりたい!」と、まとめられました。
これにはほかの子どもたちも合意し、4年生の総合的な学習の大きな課題「みんなが楽しく過ごせる学校を創ろう!」が立ち上がりました。
さらに、「改めて、具体的にはどんなことをしたいのか?」と、掘り下げていく中で、
「中庭を改造したい!」「みんなが楽しめる遊具をつくりたい!」「心安らぐリラックスエリアをつくりたい!」と、3つの活動が提案されました。
そこで、2学期からはこの3つのグループに分かれて学習に取り組んでいくことになりました。
終わりに
こうして、今年度の総合的な学習の時間の大きな課題が形成されました。本校ではこういったプロセスを経て子どもとともに「課題」を形成する時間に重点を置いています。
それは、そのあとの活動一つ一つが「自分事」として駆動していくための起爆剤になると考えているからです。
今後は、2学期からの具体的な学習の様子も紹介していければと考えております。総合的な学習の話題はいったん終わりにさせていただき、次回は体育の話題に移っていきたいと考えています。

友弘 敬之(ともひろ たかゆき)
明石市立鳥羽小学校 教諭
「単元学習」をテーマに学び続けてきました。その中で、「学習デザイン」「実の場」「問い」と、興味を広げてきました。今は「そもそも学びってなんだろう?」という問いと向き合っています。それは、子どもの学びだけではなく、教師としての、また大人としての学びも含みます。この学びの場を通して、私の問いを解決していきたいです。
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