2023.04.24
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算数科の学習を通して「深い学び」を深く考える〜連続性の学び〜(第5回)

「解き方が分かる」「新しい知識を得る」といった知識・理解や技能向上だけに留まってしまえば、学びは深まっていかないと考えます。「連続性の学び」は、長期的に見た学びの深まりを目指します。授業で学んだことから興味をもって調べたり、疑問をもって考えたりすることで、学びは続いていきます。今回は、「算数科6学年 分数×整数、分数÷整数」を例に挙げて、「深い学び」について深く考えていけたらと思います。

東京都品川区立学校 平野 正隆

連続性の学びは「深い学び」

授業のなかで多様な考えに触れることで「他にも考え方があるかもしれない」と思って広い視野で捉えたり、「〜の場合は、どう考えればいいのだろう」と疑問を抱いたりすることで、学びは連続していきます。こうした興味や疑問は、主体的に学習に取組むきっかけになります。特に算数科の学習は、内容の程度を学年が上がるにつれて少しずつ高まるスパイラルな教育課程が編成されています。だから、興味をもって自分なりに調べたことや疑問をもって考えたことが、次の授業や次の学年で扱われ、さらなる興味につながったり、解決の糸口をつかんだりします。

連続した学びは「あえてスッキリさせずに授業を終える」のが有効だと考えます。

授業の終末に、あえてスッキリさせない

そもそも算数科は、既習の内容を使って未習の内容を考えるといった連続性がある教科です。その学習を、授業ごとに毎回スッキリ終わらせては、その面白さは半減してしまいます。だから、テレビアニメのように、授業の終末に次の授業や次の学年で扱う問題を紹介するなどして、「どうやったらいいんだろう」と思わせて終わらせます。次項より、「算数科6学年 分数×整数、分数÷整数」の実践を紹介いたします。

第1時「分数×整数」

第1時では、分数に整数をかける「分数×整数」の計算は、分母はそのままで、分子にその整数をかけることを理解します。授業の終末に、「分数÷整数」の文章題を提示して、「わり算はどうすればいいんだろうね」というところで終わります。子どもたちは、「わり算もかけ算と同じように、分子にその整数をわればいいんじゃないかな」などと考えます。これ以上話は進めずに授業を終えます。

第2時「分数÷整数①」

第2時では、分数を整数でわる「分数÷整数」の計算は、「分数×整数」と同じように、分母はそのままで、分子をその整数でわれば求められることを理解します。子どもたちが「やっぱり予想通りだ」と感じているなか、授業の終末の練習問題に、4/5÷3のような分子が割り切れない問題を一問だけ混ぜておきます。「あれ、なんか解けない問題が混ざっているよ」なんて話しているなか、チャイムとともに授業を終えます。

第3時「分数÷整数②」

第3時では、分数を整数でわる「分数÷整数」の計算は、分子はそのままで、分母にその整数をかければ求められることを理解します。また、前時の方法は間違った解き方ではないけれど、いつでも使える方法ではないことも実感を伴いながら理解できるようにします。そして、終末に「分数×分数ならどう解けるか」を投げかけて授業を終えます。

まとめ

考えることをやめないことこそ、学ぶ楽しみなのではないでしょうか。分かる喜びを次の学びにつなげるためには、興味と疑問をもたせることが欠かせません。連続した学びが深い学びを実現していくと信じています。

平野 正隆(ひらの まさたか)

東京都品川区立学校


研究会での実践報告や校内での若手教員育成などの経験を通して、自分の経験や実践が広く皆様のお役に立てるのではないかと考えております。大人・子どもに関わらず、「明日から頑張れそうです」「明日が来るのが楽しみです」と言ってもらえるのが私の喜びです。

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