算数科の学習を通して「深い学び」を深く考える〜「思考再構築の学び」〜(第3回)
ペア活動やグループ活動をしている際、一方的に教える側、教えられる側になってしまうと、そこに深い学びは生まれません。教える側が思考を再構築させ、教えられる側が思考を広げられたとき、深い学びを実現できると考えます。今回は、「算数科6学年 円の面積」を例に挙げて、「深い学び」について深く考えていけたらと思います。
東京都品川区立学校 平野 正隆
思考再構築の学びは「深い学び」
誰しも得意・不得意があり、ペア活動やグループ活動をしていれば、得意な子が不得意な子に教えることがあります。教えられる側は、知らなかったことが分かるので、学びが深まったと言えそうですが、教える側にも何かしらの学びがそこに生まれなければ、深い学びにつながりません。だからこそ、教える側は分かっていることを一方的に言うのではなく、どう伝えればいいか、相手は何が分からなくてつまずいているのかを考え、教えられる側も「なんでそう思うの?」「これの場合はどう説明する?」などと質問しながら話し合います。そうすることで、教える側が思考を再構築させ、互いに深い学びを実現できるのです。
「分からない」と素直に言える学級づくりが大切
できる子が「教えてあげようか」ではいけません。それは、相手がまだ自力で考える過程なのか、助けを求めているのかが分からないからです。自力で考えている途中で、他者から一方的に解法などをされれば、意欲は削がれ、深い学びは実現しません。本人以外、人から聞いて学びたい段階かは分からないので、「分からない」「困った」を素直に言える学級づくりが大切なのです。
私は、担任している学級や、算数で担当している子たちに、「人に教える力だけでなく人に頼る力も大切」「自分ができるだけでは、まだ二流。できるなら、その技術を周りに広めてこそ一流」と話します。ヘルプを出しやすくし、教えることを価値付けておきます。
既習の求積公式を使って円の面積を求める
私の担当するクラスでは、円を扇形に等分し、それを三角形とみなして、等積移動するやり方が数多く出ました。平行四辺形や台形、三角形、ひし形などに並べ替えて、既習の求積公式で求めていました。
解法のバリエーションとして、他の方法にも気付いてほしかった私は、1人の子だけが考えていた、三角形の頂点移動による等積変形を取上げ、説明させました。
大半の子は理解した様子でしたが、一部の子たちが、理解しきれていない感じがしました。「分からない人はいますか」と問うと、分かったフリをしている子やひっそり手を挙げる子もいるようでしたが、中に勢いよく手を挙げた子がいました。私は、「分からないことをしっかり伝える姿が素晴らしい」「分からないことを表現することは、分かるための第一歩だね」と伝えました。
すると、自分なら理解させられると何人もの子がその説明にチャレンジしはじめました。「〜までは分かるかな」と問いかけながら、相手はどこまでは分かるのか、何が分からないのかを意識して説明していました。結果、最初は理解出来なかった他の子たちも理解することができたのです。
その後、他の単元でも、その子は分からないことを自ら発信するようになりました。「〜までは分かるけど、なんで〜の部分はそうなるの」と、どこがどう分からないのかを聞く場面も見られました。また、説明する側も、分からない人を意識した説明をするようになりました。
まとめ
「分からない」と素直に言える学級づくりを行うことで、教える側が分からない人の立場で説明をするようになったり、教わる側が分からない部分を具体的に表現するようになったりして、学びが深まっていきます。他者を意識した説明は、思考の再構築につながるのです。
平野 正隆(ひらの まさたか)
東京都品川区立学校
研究会での実践報告や校内での若手教員育成などの経験を通して、自分の経験や実践が広く皆様のお役に立てるのではないかと考えております。大人・子どもに関わらず、「明日から頑張れそうです」「明日が来るのが楽しみです」と言ってもらえるのが私の喜びです。
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