2023.02.06
  • twitter
  • facebook
  • はてなブックマーク
  • 印刷

算数科の学習を通して「深い学び」を深く考える~「発想のある学び」(第1回)

みんなが自分の考えを何らかの方法で発信しているとき、子どもたちは深く学んでいると言えるでしょう。互いに発想を出し合いながらすすめていくような授業を展開するにはどうしたらいいか、私もよく頭を悩ませます。今回は、私の実践「算数科6学年 図形の拡大・縮小」を例に挙げて、「深い学び」について深く考えていけたらと思います。

東京都品川区立学校 平野 正隆

⑴発想のある学びは「深い学び」

ひとりで考えるだけでは思い付かないような発想を出すことができるのが学び合いです。だからこそ、グループ学習で課題に取組むようにさせます。

見通しをすぐにもてない子も、グループで相談できるので、この学び合いが有効です。友達の解法がヒントになり、新たな発想が生まれます。そして、みんなが考えをもてるようになります。

グループの中で気付いたことを共有したりして発信することで、対話的な関わりが深い学びにつながります。

⑵発想のある学びを生み出す課題が重要

算数科の教科の特性として、答えを導き出す様々な解法が存在することが挙げられます。本実践「算数科6学年 図形の拡大・縮小」では、単元の終末に「校舎の高さを調べよう」という課題を出しました。当然、子どもたちは、拡大図・縮図を活用するのではという発想に至る子がほとんどですが、その活用の仕方も様々ですし、階段の段数から割り出す方法や実物と影の長さの比から調べる方法なども考えられます。

ひとつの方法では大きな誤差が生じる可能性を考えると、様々な方法を試し、信頼性のある値を出そうとさせるのが、この課題のねらいです。

⑶課題「校舎の高さを調べよう」準備

・竣工図面から正確な高さを調べる

どの学校でも、主事室などに図面があるかと思います。

・考えうる解法を想定する

屋上からメジャーをおろすなどの実測は禁止とします。以下のような解法が想定されます。

①校庭に寝そべって、校舎の最上部を見上げたとき、45°になる地点を見付けます。そこから校舎までの距離と校舎の高さは、等しくなるので、そこを測定すれば高さが分かります。

②校舎の最上部を見上げたときの角度とその地点から校舎までの距離を調べます。その三角形の1/100の縮図をノートに書き、高さを測定します。最後に目線までの高さを合わせて、校舎の高さにします。

③自分と自分の影の長さの比を調べます。次に、校舎の影の長さを調べて、比を使って校舎の高さを調べます。

④階段1段あたりの高さと校舎の階段の段数を調べ、計算して校舎の高さを調べます。

・必要な道具を準備する

想定される解法から、必要だと予想できる道具は予め準備させたり、教師側で準備しておいたりします。今回は、メジャー、分度器、糸を用意しました。

⑷授業「校舎の高さを調べよう」

・本時の課題を確認する

4人1組のグループに分かれて、校舎の高さを実測以外の様々な方法で調べて、より正確な数値を出すことを確認します。「ピッタリ賞は出るかな」なんて言いながら、意欲的に取組めるように工夫しました。

・教科書に載っていた木の高さの調べ方を確認する

全く見通しがもてないグループに対応するため、教科書のコラムを軽く確認しておきました。時間が確保できるなら、この全体での確認はなくてもいいかもしれません。自分達で教科書を見てヒントを得るのもいいことです。しかし、今回は1単位時間で終わらせる計画だったので、この時間を設けました。

・グループで解法を話し合い、測定する

解法の見通しがたったグループから、必要な道具をもって測定に向かわせました。あえて教師側が「話し合い」「測定」と時間を分けずに、グループの判断に任せました。ろくに話し合いもせずにすぐ動き出すグループもあれば、じっくり話し合って道具を選んでから動き出すグループもありましたが、バランスが大事なので、経験から学んでもらうのが一番です。

・教師はどうやって声かけに徹する

たとえ困っているグループがあろうと、手は差し伸べず、「どうやって解いているの」「あのグループは〜を使っているね」など声をかけるだけにしました。必要な道具があれば貸し出しますが、過剰な支援は子ども同士の発想の広がりを奪ってしまうことになりかねません。他グループの動きからヒントを得るのも、発想につながります。

・校舎の高さを各グループが発表する

各グループの測定結果の発表です。今回は、ピッタリ賞は出ませんでしたが、一番近かったグループが誤差80cmにまで近づいていました。

​​​​​​​⑸まとめ

発想ある学びによって「深い学び」を実現するためには、協働的な学び合いと、話し合えるような課題を出すことが不可欠だと考えます。学校で学ぶ意義にもつながる「発想のある学び」を様々な場面で実現していきたいものです。

平野 正隆(ひらの まさたか)

東京都品川区立学校


研究会での実践報告や校内での若手教員育成などの経験を通して、自分の経験や実践が広く皆様のお役に立てるのではないかと考えております。大人・子どもに関わらず、「明日から頑張れそうです」「明日が来るのが楽しみです」と言ってもらえるのが私の喜びです。

同じテーマの執筆者
  • 樋口 万太郎

    京都教育大学付属桃山小学校

  • 関田 聖和

    兵庫県神戸市立桜の宮小学校 特別支援教育士スーパーバイザー(S.E.N.S-SV)

  • 鈴木 邦明

    帝京平成大学現代ライフ学部児童学科 講師

  • 村上 稔

    陸中海岸青少年の家 社会教育主事

  • 宗実 直樹

    兵庫県姫路市立坊勢小学校 教諭

  • 高岡 昌司

    岡山県教育委員会津山教育事務所教職員課 主任

  • 今林 義勝

    福岡市立千早西小学校 教頭 今林義勝

  • 高橋 英路

    前 山形県立米沢工業高等学校 定時制教諭
    山形県立米沢東高等学校 教諭

  • 川村幸久

    大阪市立堀江小学校 主幹教諭
    (大阪教育大学大学院 教育学研究科 保健体育 修士課程 2年)

  • 笠原 三義

    戸田市立戸田第二小学校 教諭・日本授業UD学会埼玉支部代表

  • 常名 剛司

    静岡大学教育学部附属浜松小学校 教諭

  • 篠田 裕文

    佛教大学大学院博士後期課程1年

  • 荒木 奈美

    札幌大学地域共創学群日本語・日本文化専攻 教授

  • 川上 健治

    明石市立錦が丘小学校 教諭

  • 松田 翔伍

    名古屋市立御器所小学校 教諭

  • 森 寛暁

    高知大学教育学部附属小学校

  • 笠井 縁

    ユタ日本語補習校 小学部担任

  • 山本 裕貴

    木更津市立鎌足小学校

  • 深見 智一

    北海道公立小学校 教諭

  • 神保 勇児

    東京学芸大学附属大泉小学校 教諭

  • 宮澤 大陸

    東京都東大和市立第八小学校

  • 川島 隆

    浜松学院大学 現代コミュニケーション学部 子どもコミュニケーション学科 教授
    前浜松学院大学短期大部 幼児教育科 特任講師

  • 今村 行

    東京学芸大学附属大泉小学校 教諭

  • 五條 晶

    沖縄県宮古島市立東小学校 教諭

  • 古市 剛大

    岡山県赤磐市立桜が丘小学校 指導教諭

  • 安井 望

    神奈川県公立小学校勤務

  • 山本 優佳里

    寝屋川市立小学校

  • 山口 小百合

    鹿児島市立小山田小学校 教頭

  • 齋藤 祐佳

    仙台市公立小学校 教諭

ご意見・ご要望、お待ちしています!

この記事に対する皆様のご意見、ご要望をお寄せください。今後の記事制作の参考にさせていただきます。(なお個別・個人的なご質問・ご相談等に関してはお受けいたしかねます。)

pagetop