2023.04.07
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算数科の学習を通して「深い学び」を深く考える〜「結合性の学び」(第4回)

互いの知恵・発想を出し合い、それを結び付けて解決法を導き出せたとき、深い学びが実現したといえます。以前に投稿した「発想のある学び」は、様々な解法を発想していましたが、今回の「結合性の学び」は一つの解法をみんなで導いているという違いがあります。どんなときに「結合性の学び」が生まれるか、今回は算数科の実践をいくつか挙げながらお伝えしていきます。

東京都品川区立学校 平野 正隆

全員がすぐには解けない難問

習熟度別で学習を進めている場合、こうした難問は有効です。

習熟度上位のクラスでは、算数オリンピック問題や中学受験問題から、適度な難易度のものを選択して解かせると、互いに知恵を出し合いながら解法を導きます。教科書の内容を終えた後の練習問題として扱います。

習熟度中低位のクラスでは、教科書の内容で充分な結合性の学びを生むことができます。教師が教えこまず、グループで考えさせるのです。

6学年「比例・反比例」反比例の学習(習熟度中低位)では、「この表はXが2倍、3倍…になっても、Yは2倍、3倍…になっていないよ」「ってことは、比例じゃなさそうだね」「でも、表を縦に見て、XとYをかけると全部同じ数になる」「比例の学習のとき、比例定数は縦に見てY÷Xしたね」「なんか比例定数に似てるけど、これも比例かな」「いや、Yが2倍、3倍…になっていないから違うんじゃないかな」「縦に同じ数が出るから、定数っていうんじゃない」と、既習を生かしながら互いの知恵・発想をつなげながら、反比例の本質を捉えていました。

正解のない問題

算数を使って社会問題や生活課題を考えるのです。例えば5学年「単位量あたりの大きさ」で混み具合を計算で求めることがあります。

「1000人の児童がいる学校Aの校庭は120m×80mあり、100人の児童がいる学校Bの校庭は40m×30mあります」という設定で、「一人当たりが使える広さを調べましょう」ではなく、「どっちの学校の校庭が広くて遊びやすい(運動しやすい)と思いますか」とします。すると、「直線で100m走が出来るAだ」「一人当たりAは9.6㎡、Bは12㎡だから、Bだ」「運動会をするとき…」など、議論が始まります。遊びやすい(運動しやすい)感じ方は人それぞれなので、正解はありません。自分の生活経験や考え方を出し合い、互いの考えを結び付けていくのです。

調査しなくてはいけない問題

算数科5学年「割合のグラフ」と、他教科を関連付けた、教科横断型の学習で、「『私たちの生活』統計調査発表会をしよう」という学習を行いました。これまで各教科で学んだことを生かして、本校と全国の同年代の実態を統計的に比較し、私たちの生活について新たな提案を考え、それが伝わるように発表する学習です。何を比較し、どう考察して提案するかは、グループごとに話し合って決めます。

誤概念が生まれやすい問題

算数科は、誤概念(ミスコンセプション)が生じやすい教科だと言えます。「周りの長さが長いほど面積は広くなる」「6畳に4人、8畳に6人は同じ混み具合」「正三角形をコンピュータで書く際、角度を内角で入力してしまう」などが例として挙げられます。クラスの多くの子が、同じ誤概念をもっていれば、もはや自分たちが合っているのではないかと思い始めます。この子どもたちが困惑したタイミングをねらって、時には全体に対して、時には班ごとに「困り感」を共有するようにします。

5学年「正多角形のプログラミング」の学習では、平面図形を外角という見方から捉え直します。「正三角形をプログラムするとき60°って入力したら、正六角形の半分ができた」「どうしてこのプログラムで正方形はかけたのに、正三角形はかけないんだろう」「ちゃんと60°って入力したのに、変な方向に辺がいく」「あれ、60°ってこの部分(外角)じゃない」「じゃあ、120°って入力すれば、この部分(内角)が60°になるかな」と、互いの困り感を共有していくうちに、気付きが結び付いていくのです。

まとめ

互いの知恵や発想、気付きが結び付き、それらが一つになって解法を導き出していきます。こうして、深い学びとなるのです。

平野 正隆(ひらの まさたか)

東京都品川区立学校


研究会での実践報告や校内での若手教員育成などの経験を通して、自分の経験や実践が広く皆様のお役に立てるのではないかと考えております。大人・子どもに関わらず、「明日から頑張れそうです」「明日が来るのが楽しみです」と言ってもらえるのが私の喜びです。

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